仏教葬とは?~葬儀の流れや宗派による考え方の違い~
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
仏教葬は日本で最も多い仏教の葬儀で、僧侶がお経を読み、参列者は数珠を片手に合掌したりお焼香をしたりして故人をしのぶご葬儀の形です。通常、「一般葬」と呼ばれるのもこの仏教葬のことで、一般社団協会全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)が行った1万人アンケート調査によると、仏式の葬儀は全体の88.2%を占めていたそうです。
しかし、仏教葬といってもいろいろな宗派があり、葬儀はそれぞれ異なる教えや作法があります。
このコラムでは仏教葬の主な流れから、宗派別によるそれぞれの葬儀作法の違いをご紹介します。
1.仏教葬の特徴
僧侶が経典を読むことを「読経(どっきょう)」と言います。仏教式の葬儀では、故人様に仏の教えを説き、死後の世界である極楽浄土への修行に専念できるようにするために僧侶が経典を読みます。そして、ご遺族が仏の教えを学ぶことで、故人への成仏とともに、亡くしたことへの心の痛みを和らげ、世に生きるなどの意味を持つとされます。
読経は故人様に向けて行われる儀式だと思われるかもしれませんが、その内容を読み解くと、喪に附するための意味や、死を乗り越えるためのご遺族様に向けたメッセージなどが込められています。
お布施
お布施とは、僧侶に読経や戒名をいただくなど、葬儀を執り行ったことに対する謝礼のことです。仏事の業務としての対価ではなく、あくまでもお気持ちといった感謝をかたちにしたものであることから、お布施の相場にハッキリとした金額は定められていません。ですが、地域や葬儀の内容によっておおまかな相場はありますので、目安として事前に知っておくことをおすすめします。
戒名
仏門に入った証を表す名前のことを「戒名(かいみょう)」と言います。人の死後の世界では、この戒名で呼ばれるとされていて、その種類には呼び名で階級に分かれています。仏教には、「戒律」という信徒のための行動規範があり、それを守る約束のしるしとして仏
教葬では戒名が授けられます。
戒名の特徴として、より仏様に近い戒名であるほどランクが高く、戒名料も上がることが多いです。しかし、高ければ高いほど早く極楽浄土への修行が終わって成仏できるといったものでもありません。戒名を選ぶときは、故人様への気持ちでお付けになることがとても大切です。
数珠
数珠(じゅず)は、仏様と心を通わせるための仏具で、手にかけて合掌すれば、この世にある108の煩悩(ぼんのう)が消え、功徳を得られるとされます。そのため、正式な数珠には108個の珠がついており、宗派によって形やデザインもさまざまです。一般的には珠の数を減らした「略式数珠(りゃくしきじゅず)」が主流で、どの宗派でもお使いになれます。
仏教葬では、一人ひとつずつ数珠をお持ちになるのが葬儀のマナーで、他人の数珠の貸し借りはタブーとされています。たとえご家族であっても、NGですので、ご自身専用の数珠を用意しましょう。
焼香
仏教葬でお香を焚いて、故人様や仏様を拝むことを「ご焼香(ごしょうこう)」と呼びます。このご焼香には、2つの役割があって、まず一つは、参列する人の精神や体の穢れを祓い清め、弔いに参加する準備を整えるためとされます。そして、極楽浄土に満ちている香りを再現し、仏様のお迎えと故人様の旅立ちをスムーズにするためのものとしているのです。香りが広がり、やがて消えていく様を「仏教の教えが広がる」、「人はいつか消えてしまう」などといった、仏の悟りそのものを教えるための儀式とされています。
仏教葬におけるご焼香の作法は、宗派によっても違うので、もし、葬儀当日に作法がわからなければ、僧侶やご遺族のご焼香の作法を見て確認すると良いでしょう。ちなみに、葬儀の参列者がお香を焚くことだけを想像しがちですが、仏壇にお線香をあげることもご焼香に含まれます。
2.宗派による葬儀の違い
同じ仏教でも多くの宗派があり、その考え方によって仏教葬の式次第が異なることがあります。仏教葬では宗派によってどのような違いがあるのか、天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗、日蓮宗、曹洞宗の宗派を見ていきましょう。
天台宗
天台宗は、平安時代に最澄によって開かれた宗派です。
「人間はみんな仏の子ども」という視点のもと、「真実を追求する心が悟りにつながる」という考えを持ちます。
<天台宗の特徴>
・経典である法華経を唱えることで日々の懺悔をする顕教法要
・読経によって極楽に行けるよう、また、いま生きている世界もすばらしいものになることを願う例時作法
・仏様の言葉で故人様を弔う密教法要
真言宗
真言宗は、弘法大師こと空海が平安時代に開いた宗派です。真理を学び、追求した先に救いの道が開けるという考え方を持ちます。
真言宗の仏教葬では、故人様を大日如来がいる密厳浄土へと送るための儀式で、生前の悪い行いや習慣を落とすための「灌頂(かんじょう)」「土砂加持(どしゃかじ)」の儀式が執り行われます。
※灌頂:故人様の頭に水をかけ、仏様の位にのぼらせる儀式。
※土砂加持:洗い清めた土砂を火で焚くとともに、大日如来の言葉(光明真言)を唱え、それをご遺体に振りかけて納棺すること。これによって苦悩を取り除くとともに、ご遺体の体が柔軟になると言われています。
浄土宗
浄土宗は、鎌倉時代に法然上人によって開かれた阿弥陀如来を本尊とする宗派です。「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」の念仏を唱えれば、阿弥陀仏様の救いを受け、極楽浄土に往生できるという教えです。
浄土宗の仏教葬や法要では、ご参列者も一部の念仏を唱える「念仏一会(ねんぶついちえ)」という儀礼があり、故人様に代わって念仏を唱えることで、故人様が阿弥陀如来の救いを得る手助けになると言われています。
浄土真宗
浄土真宗は、浄土宗を開いた法然の弟子、親鸞(しんらん)が開いた宗派です。
本尊が阿弥陀如来であること、そして死後の極楽浄土に向かうところは浄土宗と同じです。一方で浄土真宗ならではの特徴はというと、人が逝去したとき阿弥陀如来によって極楽浄土に迎え入れられるという考えがあります。そのため浄土真宗の仏教葬では、無事に極楽浄土へ行けることを願う「引導渡し」や、戒名を受ける儀式を必要としません。
日蓮宗
日蓮宗は、日蓮が鎌倉時代中期に開いた宗派です。経典は「法華経(ほけきょう)」で、その功徳が込められている「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を繰り返し唱えることで信仰を深めるとされます。そして、その信仰により、ご逝去後に霊山浄土(ちょうぜんじょうど)と言われる世界で釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)に会えば、成仏できるとされます。
日蓮宗の仏教葬では「戒名(かいみょう)」はなく、代わりに信仰に入った証として「法号(ほごう)」が授けられます。その理由は法華経への信仰が戒律を守る以上に大切と考えているためといわれているからです。
曹洞宗
曹洞宗は、「正伝の仏法」と言われる座禅の教えを基本とします。
道元禅師と瑩山禅師を「両祖」と呼び、お釈迦様をご本尊とした「一仏両祖」が特徴です。
曹洞宗の仏教葬は、故人様が仏の弟子になるための儀式です。前半は仏の弟子入りをするための「授戒(じゅかい)の儀式」。後半は仏の世界へといざなう「引導(いんどう)の儀式」を行います。
曹洞宗の特徴的な儀式が「鼓鈸三通(くはつさんつう)」と呼ばれる儀式です。葬儀に三人の僧侶をお呼びし、それぞれが鳴り物を手に持ちます。ひとりはシンバルのような「鐃祓(にょうはち)」を持ち、もう一人は「引磐(いんきん)」、そして「太鼓」を使い、チン・ドン・シャンと鳴らしながら読経を行っていく特徴があります。
3.仏教葬の基本的な流れとは
ここでは仏教葬のおおまかな流れを「お通夜」「葬儀(告別式)」「火葬」の3つのポイントに分けて、それぞれの儀式をご紹介します。
通夜
仏教葬では、葬儀の前にお通夜が行われるのが一般的です。
お通夜とは、お釈迦様が亡くなられ、悲しんだ弟子たちがお釈迦様の死後7日間ご遺体を夜通し見守りながら師が生涯をかけて説いた説法をお互い聞き合ったことが由来とされています。これが、お通夜が灯かりを絶やさず仏様に祈りを捧げる儀式として存在している理由です。
また、お通夜には「検死」の役割もありました。死を正確に確認するために一晩様子を見てから火葬するという流れを取っていました。現代では、医療が進み、そのような意味合いはなくなっていて、弔問に来られる方への最後のお別れの場としてお通夜は設けられています。
お通夜の流れは、受付で芳名帳に名前を記入するとともに、お香典を受付に渡して、着席することから準備を整えます。僧侶が来られたタイミングで開式の辞のアナウンスが入ることもあります。僧侶の読経から、ご焼香、僧侶の法話、喪主挨拶の流れでお通夜は終わります。終了後、食事の席として通夜振る舞いを用意していれば、そちらに参列者をご案内します。また、地域によっては、「棺守り」という故人様のからだに魔がつかないよう、一晩見守るという風習もあります。
告別式
仏教葬では、火葬する前に葬儀(告別式)を執り行います。葬儀と告別式は同じものと考えられがちですが、それぞれの儀式の意味はちがいます。
葬儀:故人様の死を弔い、仏様の弟子として迎え入れるための、宗教的な儀式
告別式:故人様とご縁のあった方々との最後のお別れをするための、社会的な儀式
それぞれの意味を持ちながら、基本的にはこの2つの儀式を合わせて2日目に行います。
<葬儀・告別式の流れ>
・引導渡し(省略する宗派あり)
・弔辞
・弔電
・読経と焼香
・花入れ
・出棺
なお、火葬場へと同行するのは、ご遺族、ご親族、そして故人様との深い関係者の方で、その他の参列者は出棺を見送って解散となります。
火葬
仏教葬における火葬の流れは、納めの儀式となる最後の読経とご焼香があり、点火されます。この点火のスイッチをご遺族が押すという風習も地域によってはあるようですが、都市部ではなく、納骨の準備が終わるまでは控え室で待機することが多いです。現在では60分ほどあれば、火葬が終わり、ご遺骨を骨壺へとお納めする「骨上げ(ほねあげ)」の儀式に移ります。 そして、還骨法要をしたのち解散となり、仏教葬における一連の儀式が終わります。
4.花葬儀の仏教葬
従来の仏教葬では白や黄色、紫などの落ち着いた色の和花で(菊)などが主流で、トゲのあるバラや香りの強いユリなどは使われませんでした。しかし、花葬儀では仏教葬においても、バラやユリといった香り彩り豊かな花はもちろん、それ以外の洋花や植物をも取り入れながら祭壇をお作りします。
仏教葬の宗派の教えを重んじながら、故人様の息吹を感じられるような花祭壇でお見送りできるのが大きな特徴のひとつです。
5.まとめ
仏教には多くの宗派があり、死生観やその教えに基づいたそれぞれの仏教葬があります。共通していることは、故人様が極楽浄土という苦しみのない世界にたどり着けるよう、願うことです。そして、家族葬、一日葬など、時代を経て多様化する色々な葬儀形式を選べることも、また仏教葬の魅力でもあります。それぞれの葬儀マナーを尊重し、心よりご冥福を祈ることが大切ではないでしょうか。
花葬儀ではすべての宗派に対応した仏教葬をご提案いたします。それぞれの教えや作法に基づきながら、故人様のご印象や思い出を花祭壇で彩ります。