社葬を行う意味と目的 準備から執り行うまでの重要なポイント
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- 【 葬儀の種類 】
社葬は、生前に会社の発展や業績に特別に貢献した方を、全社を挙げて哀悼し、惜別する儀式です。会社が故人様へ感謝を伝えるとともにその業績を称え、遺志や功績を引き継いで社内の結束を高めます。また、社外に向けての広報という重要な役割もあります。
今回は、なぜ社葬を執り行うのか、その意味と目的、さらに準備から執り行うまでのポイントをご紹介します。
社葬が果たす役割と意義
大雑把な分け方をすると、葬儀の形態には「個人葬(一般葬)」と「社葬(団体葬)」の2種類があります。「個人葬」は一般の葬儀で、家族(親族)が中心となって葬儀を執り行うものです。これに対し、「社葬」(主体企業以外の組織であれば「団体葬」と呼ばれます)は、会社が中心となって執り行い、かつ費用も負担する葬儀のことをあらわします。個人葬では一般的に喪主様が葬儀を主催しますが、社葬では会社の総務部長や役員の方が主催者となります。
社葬にはおもに、次の3つの役割(目的)があります。
社葬を行う目的その1 会社に貢献した故人の功績を称え、逝去を悼む
社葬の一番の目的は、会社に特に大きな功績のあった人の逝去を、会社全社を挙げて追悼することにあります。会社が自ら故人様の生前の功績を称え、その死を悼むことは、故人様本人やそのご家族にとっても大きな栄誉となります。
また社葬は、故人の意志を継承することを、企業が対外的に示すという役割もあります。ここが、家族が悲しみに寄り添う場である個人葬と社葬の大きな違いです。
個人葬が家族の悲しみに寄り添うプライベートな弔いの場であるのに対し、故人様の功績を称え、逝去を悼むだけでなく、会社が自ら故人様の生前の功績を称える意志を対外的に表明するのが、社葬の目的なのです。
社葬を行う目的その2 社外に向けて、会社の新体制が磐石であることを示す
社葬の2つめの目的は、顧客や株主、取引先などに向けて、新しい経営陣による会社の新体制がしっかりしていると示すことです。企業のトップや責任者など、その会社にとって重要な人物が亡くなった場合、経営にも大きな影響が考えられます。
本来、新体制について関係各所すべてに説明と挨拶をしに回るべきではありますが、現実的には不可能です。そこで、関係者を招いて社葬を執り行うことで、顧客や株主、取引先などに向けて、故人様の意志を継承し、安定した事業を進めていく姿勢を示すことができます。
従来の社葬は、厳粛で格式の高さを重視した雰囲気のものが多く見られましたが、最近では会社のカラーや故人様のお人柄を前面に出した形式が増えるなど、オリジナリティが感じられる内容の社葬も多くなっています。
社葬を行う目的その3 会社のBCP(事業継続計画)の一環と、社内の結束を固める儀式
社葬は、企業にとって重要な事業承継の場でもあります。
故人様が企業トップなど経営の中心人物の場合、その追悼儀式を通じ、経営者の意志を受け継ぐという意識が社員一人ひとりに出てくることでしょう。
事業部長クラスの方が亡くなった場合は、社員が一致団結して社葬を行うことで、社内の結束強化にもつながります。
また、殉職者の場合は、単なる災禍不幸とするのではなく、逝去を悼み、故人様の企業への貢献を称えると同時に、ご遺族への社会保障という役割も果たします。
社葬は、緊急時に迅速な決定、行動ができる組織力や、安定した経営体制の継承など、会社の危機管理対策ができていると示すこともできます。近年、多発する災害などでBCP策定は必要不可欠とされています。社葬は、会社にとって重要な方の不幸にも対応できることで企業のBCPがしっかりしていることを示し、社内外ともに安心感と高い信頼性をイメージづけることができるのです。BCPの一環として重要なところは、のちほどご紹介します。
社葬の3形態とそれぞれの特徴
会社が主体となって故人様を追悼する儀式には、大きく3つの種類があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
■社葬
会社が葬儀の費用を負担し運営するもので、葬儀を「企業として行う」ことを重視しています。多くはご家族(ご親族)により密葬を執り行い、その後本葬として、この社葬が執り行われます。
先にお話ししたとおり、故人様を追悼するだけでなく、社外広報・PRや、社内の結束を高める儀式としての役割があります。
■お別れ会、偲ぶ会
故人様との別れをより重視し、自由な形式で故人様を偲ぶ儀式です。宗教色や儀式性はあまり強くありません。社葬と同様、密葬後に日をあらためて執り行うことが多いようです。式典やおもてなしの会食をメインとする場合もあり、社外に向けて新体制や今後の会社の方針をアピールする広報的な役割を果たします。
■合同葬
ご家族が執り行う葬儀と会社が執り行う葬儀を分けず、両者がともにお通夜、告別式を行う形式です。ご家族の意思を反映して執り行われることが多いようです。
準備がすべて スムーズな社葬の重要ポイント
葬儀の場所(式場)や担当者など、細かいことも規則化して決めておくことが、社葬を滞りなく執り行ううえで重要になります。社葬には様々な形式がありますが、ここでは社葬の主な流れと、どのタイミングで何をすべきかというポイントや、検討する項目についてご説明します。
社葬をするかどうか、ご家族(ご親族)の意向を確認する
社葬を執り行うにあたって不可欠なのが、ご家族の意向確認です(ご家族が謙遜や遠慮から社葬を辞退することもあるため)。社葬は、「社葬取扱規程」があればそれに従って執り行いますが、規程がない場合はとくに、ご家族の意向を尊重した準備が必要です。故人様の社内外の功績や、それに対する会社の謝意、追悼の場所を設ける企業の姿勢を、誠意を持って説明し、了承を得るようにしましょう。
最近は、ご家族だけで密葬を終え、その後に、社葬(お別れ会)を行うという流れが多くなっています。そのほうが、ご家族が故人様を偲ぶ時間を作れ、社葬もゆっくり準備できるためです。
誰が指揮をとるか?社内で社葬の責任者を決定する
社葬では、社内とご遺族の意見を取りまとめる役割の責任者が必要です。ここは、総務部の責任者が「葬儀実行委員長」を担当し、実質的な社葬運営の指揮をとることが多いようです。
ほかに、挨拶や式の準備・進行を指示する、社葬の最高責任者という立場の「葬儀委員長」というものがあります。会社や団体の今後の運営をスムーズにするため、対外的に挨拶を述べるという重要な役割をもっています。このため、一般的に、ご家族のなかで選ばれる喪主様よりも大きな責任を持ちます。故人様が社長以外の場合は社長が、故人様が社長の場合は新社長や会長など、企業や組織の代表者が選ばれることが多いようです。
なお、葬儀の受付や進行、会計、式場までの道案内などの作業は、社員らによる「葬儀委員」が行います。
葬儀社を探して決める
どんな葬儀でも当てはまりますが、社葬はとくに、失敗が許されない重要な儀式です。さらに、周年記念行事のような儀礼行事に比べて経験する機会も少ないことから、社内でノウハウがあまり蓄積されません。このため、スムーズな社葬を執り行うために、知識や経験が豊富な葬儀社をパートナーに選ぶことは、とても重要です。
社葬責任者は、葬儀会場の確保から、準備、ご家族とのやりとりなど、やるべきことがたくさんあります。大規模な葬儀を取り扱った経験の多い葬儀社を選ぶようにしましょう。社葬取扱規程の作成など、準備もゼロからしっかりとサポートしてもらえるので、安心して準備を進めることができます。
重要なBCP(事業継続計画)の一環としての社葬
近年、急増する自然災害を受けて「BCP(事業継続計画)策定」という言葉がよく聞かれるようになりました。国や地方自治体も、BCP策定のためのさまざまなガイドラインを出しています。
テロや災害、システム障害や不祥事などの危機的状況下に置かれる危険性は、企業規模の大小に関係なくあります。そのなかで重要な業務が継続できる方策を用意し、生き延びるための戦略を立てることは、とても重要なことです。危機管理の一環としての社葬の体制構築にあたり、とくに重要な項目についてご説明します。
社葬の実施や費用概算などの規準となる「社葬取扱規程」をまとめておく
繰り返しますが、社葬の成否は事前準備にかかっています。あらかじめ、社葬を執り行う場合の規程を決め、作成するとよいでしょう。そして、これをもとに企業としての社葬の基本方針を検討し、固めていきます。ご家族からの連絡を通達する社内緊急連絡網も作っていると、安心度はさらに上がるでしょう。また、「社葬を執り行うときはここにお願いする」と、安心して頼れる葬儀社を決めておけば、いざというときに慌てずにすみます。
社長や取締役など、会社にとって大事な方が亡くなられるのは、社内にとっても、顧客や取引先にとっても大きな不安となることでしょう。会社の姿勢や組織力が問われる曲面に、どう対応するかをあらかじめ考えておくことは、企業の危機管理の一環として重要であるといえます。
社葬にまつわる費用には、税務上、損金処理が認められないものある
多額のお金がかかる社葬を行う場合には、葬儀費用や税務上の処理も知っておきたいものです。
社葬は企業にとって社葬が社外に向けた「広報」的な活動の側面があります。事業承継という観点からも重要な儀式であるため、原則的に、税務上「福利厚生費」としての損金処理ができます。
ですが、社葬にかかるすべての費用を会社が負担するわけではなく、役職や葬儀の行い方など状況に応じて、会社としての費用負担割合を定めるのが一般的です。
社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、「通常要すると認められる部分の金額」について損金への計上ができます。しかし、ご逝去後のご遺体の移送、事前の密葬や火葬の費用や、お墓や仏壇、戒名などは、損金として認められません。また、祭壇など社葬に必要な用品、サービスに対する費用は認められますが、お別れ会でのホテルの会食代などは「接待交際費」と判断され、損金処理ができない場合もあります。会社に顧問税理士がいなくて不安な場合は、専門家と提携している、信頼できる葬儀社に相談するのもおすすめです。
社葬が終わった後の仕事
社葬は、終わった後にも重要な仕事が2つ残っています。それぞれの内容を見ていきましょう。
■社葬でお世話になった方々へのお礼と挨拶
とくに来賓や弔辞・弔電をいただいた方、供花をいただいた方へは、早めにお礼を伝えます。
弔辞をいただいた方には、会社の代表者が直接挨拶に伺うとよいでしょう。
■社葬の経験を「記録」として残す
名簿や報告書の記録・整理は、将来の参考資料となるだけでなく、会社の「資産」になります。
さらに、代表者が変わる場合は、各種名義変更の手続きなども必要になります。
会社の顧問弁護士や税理士、あるいは信頼できる葬儀社と相談しながら、速やかに手続きを行います。
まとめ
社葬は、会社にとってひとつの大きな節目であり、組織力や次期社長の経営手腕、信用力が問われる重要な場です。だからこそ、大がかりな準備が必要なのです。
しかし、ノウハウ不足で準備や対応に苦労することも多く、決して失敗が許されないプレッシャーもあります。だからこそ、取り組むべきことを指示してくれるとともに、準備の段階からきめ細やかなフォローをしてもらえる葬儀社に依頼することが重要になってきます。葬儀社を選ぶときは、社葬のような大型の葬儀を担当した経験があるか、忘れずに確認しましょう。