終末期を在宅で迎えるためのケア~病院など他の選択肢との違い・ポイントを解説
- 作成日: 更新日:
- 【 生き方のヒント 】
「終末期」とは、治療による病気の回復が期待できず、近い将来確実に死を迎えると予想される時期を指します。終末期を宣告された人が人生の最後を過ごす場所として自宅を希望することは多く、在宅ケアついて知りたい患者本人やご家族もいらっしゃるでしょう。
今回は、終末期を在宅で迎えるためのケアについて深掘りします。「ケアの内容」「在宅で過ごすことのメリットと注意点」「在宅以外の選択肢」と役立つ情報を多く取り上げています。どうぞ最後までお読みください。
1.在宅で終末期に行うケア
終末期を在宅で過ごす場合、「終末期医療(ターミナルケア)」「緩和ケア」「看取りケア」などを受けることが一般的です。
それぞれの内容を詳しくご紹介します。
終末期医療(ターミナルケア)
残された時間を、患者が少しでも穏やかに過ごせるようにする身体的・精神的・社会的なケアを「終末期医療(ターミナルケア)」と言います。主な内容は以下の通りです。
・身体的ケア
医療従事者による、痛みを緩和するための医療処置、投薬、栄養補給など
・精神的ケア
患者の精神的苦痛を取り除くための行動全般
(話を聞く、体に触れる、自宅の環境を整える など)
・社会的ケア
ソーシャルワーカーなどの専門家が、治療費や死後の問題についての悩みをサポートする
緩和ケア
終末期に在宅で受けるケアには、終末期医療の他に「緩和ケア」と呼ばれるものがあります。終末期医療とは以下のように、「どのタイミングで、どのような治療を行うか」や対象疾患が異なります。
終末期医療 (ターミナルケア) |
緩和ケア | |
---|---|---|
ケアの目的 | 治療による回復が見込めない患者に対し、残された日々を穏やかに過ごしてもらうためのケア | 病気による苦痛を取り除くためのケア |
治療 | 基本的に行わないが、点滴や医療器具の装着などの医療ケアは行う | 病気の治療開始とともに、並行して行われることもある |
対象となる疾患 | さまざまな病気を含む | がんやエイズなどが多い |
在宅での緩和ケアについて詳しく知りたい方は「緩和ケアを自宅で受けるための基礎知識」をご覧ください。
看取りケア
死期が近づいている患者に対し、自然な死を迎えるためのケアを「看取りケア」と言います。看取りケアは終末ケア同様、患者が最後の時間を穏やかに過ごしてもらうためのものですが、日常的なお世話をメインとしています。終末期医療のような、点滴や投薬などの医療処置は行いません。ケアの具体的な内容は、以下の通りです。
- ・入浴補助
- ・食事ケア
- ・排せつケア
- ・口腔ケア
- ・精神的、社会的ケア など
「医療的な介入が不要と判断された」「本人やご家族が希望した」ような場合は、終末期医療を行わず、最初から看取りケアを選択することもあります。
2.在宅における終末期~看取りまでの流れ
終末期を在宅で過ごし始めてから、亡くなるまでの主な流れをご紹介します。
1.意思確認・決定
「人生の最後をどこで過ごすか」「医療ケアや延命治療はどこまでを望むか」といった意思確認を行います。患者本人はもちろん、ご家族や主治医、終末期ケアに詳しい専門家も交えて話し合いましょう。
患者本人の意識がない場合は、代わりの決定をご家族が行わなくてはなりません。日ごろから「もしもの場合」について話し合っておいたり、エンディングノートに希望を書き記しておいたりするとよいでしょう。
2.終末期医療や看取りケアの準備を整える
患者のご家族が中心となって、在宅で終末期を迎えるための準備を始めます。具体的には、以下のような準備を行います。
- ・終末期医療や看取りケアに必要なチーム(医師、訪問看護師、ケアマネージャーなど)と最適なケアについて相談する
- ・看取りに関する同意書の作成
- ・終末期医療や看取りケア、簡単な介護についての知識を習得する
- ・患者が過ごしやすいよう、自宅の環境を整える
- ・必要に応じて福祉介護用品を揃える
- ・かかる費用を把握し、利用できる制度を申請する
- ・心の準備をする
在宅で終末期医療や看取りケアを受ける場合、訪問診療や薬、福祉介護用品などにお金がかかります。以下にご紹介する制度や保険を使うことで、費用を軽減することができるでしょう。適用には条件があるため、詳細はソーシャルワーカーなどにご確認ください。
- ・医療保険
- ・介護保険
- ・確定申告の医療控除
- ・高額療養費制度
- ・生活保護
3.ケア開始~死亡宣告
自宅でのケアが開始します。やがて患者の容体が変化し、息を引き取ると医師によって死亡が宣告されます。
3.終末期を在宅で過ごすメリットと注意点
終末期をどこでどのように過ごすかによって、患者本人の満足度やご家族にかかる負担は大きく異なります。
終末期を在宅で過ごすメリットと、注意点を押さえておきましょう。
在宅で過ごすメリット
終末期を在宅で送ることのメリットは、以下の通りです。
住み慣れた場所で最期を迎えられる
終末期を在宅で過ごす最大のメリットは、なんといっても「住み慣れた自宅で最期を迎えられる」ことでしょう。自宅で自由に過ごしながら必要なケアを受けられる在宅は、患者に大きな安心感を与え、生活の質の向上が期待できます。
好きな音楽を気軽に聴くなど自分のペースで過ごせることは、残された時間をより穏やかに、より自分らしく過ごしたい方の大きな支えとなるはずです。
家族と過ごす時間が長くとれる
病院や施設での終末期と違い、自宅の場合、ご家族と過ごす時間が長くとれます。思い出話をする、死後の希望について話す、身体に触れるといったコミュニケーションは、患者・ご家族双方にとってかけがえのない時間となるでしょう。
費用がおさえやすい
終末期の期間や患者の状態、施設先によっても異なりますが、病院や施設で終末期を迎えるよりも、在宅はかかる費用が少ない傾向にあります。一般的に在宅での終末期ケアでは、医療保険と介護保険を利用することができ、また入院費用がかからないため、経済的な負担をおさえやすいのです。
入浴や排せつのケアをご家族自身が担うことで、さらなる費用の軽減が期待できるでしょう。
在宅で過ごすことの注意点
在宅で終末期を過ごすことには、注意すべき点もあります。
以下にご紹介する注意点も含めて、慎重に決断することが重要です。
ご家族が対応しなければならないことが多い
在宅では看護士や介護スタッフが自宅に訪問してくれますが、患者が自宅にいる分、ご家族がケアを行わなくてはならない場面も多く出てきます。定期的に様子を見る、寝返りや排せつの介助を行う、緊急時には医師に連絡するといった対応に、ご家族が疲弊してしまうこともあるのが実情です。
外部サービスを頼ったり、在宅ケアチームと上手に連携を取ったりなど、ご家族だけで抱え込まないようにする工夫が求められます。
緊急時の対応が難しい
在宅では患者の容体が急変しても、医療従事者が自宅に到着するまでに時間がかかります。何かあった際に迅速な対応を希望する場合、自宅で終末期を過ごす選択が不向きであることも押さえておきましょう。
悲しみがより大きくなる可能性も
家族の時間が長く取れることがメリットだとご説明しましたが、身近な人の状態が刻一刻と変化していく様子を間近で見守るのはつらいものです。密な時間を過ごした分、患者が息を引き取った後に大きな悲しみがご家族を襲うことも少なくありません。
どのような見送り方がお互いにとって最良なのかは、専門家、在宅で看取った人の体験談、本人やご家族の希望などを踏まえてしっかりと話し合って決めましょう。
4.在宅以外の終末期の選択肢
終末期を過ごす場所は、自宅以外にも「病院」や「介護施設」があります。最後まで納得してお見送りができるよう、在宅を希望している場合でも、他の選択肢をきちんと把握しましょう。
それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
病院で過ごすメリット・デメリット
病院での終末期は、病気による苦痛を緩和するための医療ケアが中心に行われます。一般病棟ではなく、「ホスピス・緩和ケア病棟」と呼ばれる、苦痛を取り除くことを目的とした病棟で過ごすケースが大半です。
病院で終末期を送ることのメリット・デメリットは以下を参考になさってください。
メリット |
|
---|---|
デメリット |
|
苦痛の緩和を最も優先させたい人にとって、病院は心強い存在となるでしょう。
介護施設で過ごすメリット・デメリット
介護施設には、看取り可能なところと、そうでないところがあります。以下は看取りの対応を可能としている施設です(施設によっては受け付けていないこともあります)。
【民間施設】
- ・介護付き有料老人ホーム
- ・住宅型有料老人ホーム
【公的施設】
- ・特別養護老人ホーム(特養)
- ・介護老人保健施設(老健)
- ・介護医療院
上記の施設のうち一部の施設は「ホスピス型住宅」と呼ばれ、病院と同じく医療ケアが必要な方の入居も受け付けていいます。
介護施設で終末期を過ごすことのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット |
|
---|---|
デメリット |
|
「在宅で見守る負担を軽減したい」というご家族や、「さまざまな人との交流を大切にしたい」という人にはおすすめです。
5.在宅で終末期を過ごすことの実際
昔は自宅で最期を迎えるのが一般的でしたが、近代は状況や環境に合わせて終末期を過ごす場所を選べるようになりました。それによって病院や介護施設への人気が集中したのかというと、そうではありません。
厚生労働省が令和5年に発表した「最期を迎えたい場所」に関する調査(※)では、「自宅」と回答した人が「医療機関」を上回り1位となりました。また、「最期を迎える場所を考える上で重要だと思うことについて」という調査では、「家族等の負担にならないこと」「体や心の苦痛なく過ごせること」の他、以下の回答が多く見られました。
- ・経済的な負担が少ないこと
- ・家族等との十分な時間を過ごせること
- ・自分らしくいられること
以上の点から、終末期は慣れ親しんだ場所・人と穏やかに過ごしたい傾向が強いことがうかがえます。
しかし終末期というのは、患者本人だけでなく見守るご家族にも身体的・精神的な負担が大きくのしかかります。ご家族の絆の強さに関係なく、死期を迎える人を支えるのは誰にとっても大変なことなのです。そのため、終末期をどこで過ごすかについては「何を優先するか」をよく考えて決めることが大切です。
「苦痛緩和」「家族との時間」など、優先させたいことが決まれば、最適な場所が見つけやすくなるだけでなく、後悔の少ない時間を過ごすことができます。不安や疑問は医療従事者や介護のプロ、ケアを支えてくれるチームにも相談し、考えや気持ちを共有しながらケアを行いましょう。
(※)
出典:令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/saisyuiryo_a.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_r04.pdf
6.在宅での終末期に関するお悩みは花葬儀にご相談ください
終末期をどこで・どのように過ごすかはご本人やご家族にとって難しい問題です。在宅は居心地のよさやご家族との時間を大切にしたい人におすすめですが、ご家族に負担がかかりやすいなどの注意点もあります。ケアの内容や注意点を把握し、お互いの意見をすり合わせた上で決めましょう。
ご自身やご家族に終末期の宣告がされた際は、ご心痛や不安をぜひ花葬儀までお寄せください。花葬儀では葬儀だけでなく、介護や終活といった「社会的不安」にあたる部分にも寄り添い、サポートしております。ご相談はインターネットやお電話、または何度でも無料の事前相談がおすすめです。ぜひお気軽にご検討ください。