グリーフケアとは?深い悲しみを和らげる方法、周囲ができるサポートも解説
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- 【 生き方のヒント 】
大切な人を失った深い悲しみは、どのように乗り越えればよいのでしょうか。また、悲しみに暮れるご家族やご友人に、どう寄り添い、支えればよいのか、悩まれている方もいらっしゃるでしょう。死別の深い悲しみに寄り添い、心の整理をサポートするのが「グリーフケア」です。
このコラムではグリーフケアの意味、グリーフケアを必要とする方とその症状、ケアの具体的な方法をご紹介します。グリーフケアは専門家だけでなく、周囲の人や自分自身でも行えます。現在心に深い悲しみを抱えている方、サポートしたいご家族や友人がいる方は、ぜひ最後までご一読ください。
1.グリーフケアとは?
グリーフケアという言葉を初めて聞いた方もいらっしゃるでしょう。
まずは、グリーフケアとは何か、日本におけるグリーフケアについてご紹介します。
グリーフケアの意味・使われ方
グリーフ(Grief)とは「深い悲しみ」や「悲嘆」を意味し、悲しみ(Sad)よりも重い感情を表す言葉です。身近な人の死などの「喪失体験」に伴う痛みや、その痛みからくる精神的・肉体的な影響も、グリーフと呼ばれます。こうした状態にある人に寄り添い、施すケアが「グリーフケア」です。
本来、グリーフは死別以外にも、大切な物の消失や失恋など、さまざまな喪失による悲嘆を指し、グリーフケアを行うのは医療や心理の専門職とされています。しかし日本では「大切な人の死を経験した人への支援」という意味で浸透しており、ご家族や友人、地域コミュニティが行うケアも含むものとして一般的に理解されています。
このコラムでは、特に「遺族ケア」としてのグリーフケアについて、その意味や方法を詳しく解説していきます。
グリーフケアが注目される背景
大切な人を亡くした方のための取り組みは1960年代に欧米で広まり、1970年代に「グリーフケア」として学術的に確立されました。
日本でグリーフケアが注目されるようになったのは、2005年に起きたJR西日本福知山線脱線事故がきっかけといわれています。悲嘆に苦しむご遺族のために、グリーフケアの研究機関が設立され、2011年に起こった東日本大震災を機に、グリーフケアは広く知られるようになりました。
グリーフケアが注目されるようになった理由は、こうした悲しい出来事の存在だけではありません。「人間関係の希薄化」「看取り機会の減少」「高齢化による死別経験の増加」など、現代を取り巻く環境も、グリーフケアが必要とされる要因になっていると考えられています。
日本におけるグリーフケアの課題
大切な人を亡くした際に起こるさまざまな感情や不調は、程度の違いはあれ、誰にでも起こりうることです。グリーフを正常な反応だと受け止め、悲しい気持ちを誰かに聞いてもらうことが、グリーフケアにおいて重要とされています。
しかし日本人の場合、「自分の話をすること」「個人の問題を集団に持ちこむこと」に抵抗感を覚えやすく、経験や感情を他人に共有しづらい人が多いようです。日本でより効果的なグリーフケアを行うためには、そうした日本人の性質に寄り添いながら、悲しみを語ってもらえるような環境をつくることが重要となるでしょう。
2.グリーフケアが必要な人とは?
グリーフケアの対象となる人に、明確な基準はありません。喪失体験により、深い悲しみを負った人に対して、グリーフケアは行われます。具体的には、以下のような方々が挙げられます。
- ・予測不可能な事件または事故により、急激な死別を体験した人
- ・災害によって自らも被災した人
- ・幼い子どもを亡くした人
- ・自死された方のご遺族
- ・故人様への愛着が人一倍強かった人、または故人様との葛藤を解決できなかった人
- ・故人様の死に対して重い罪の意識や後悔を抱えている人
喪失による悲嘆は、死に直面した瞬間だけでなく、時間が経った後に起こることもあります。次にご紹介する「グリーフの症状」がみられた人には、特にサポートが必要となるでしょう。
3.グリーフの症状・現れ方
こちらでは、死別を経験した人に見られるグリーフの症状や現れ方について解説します。
心の症状
ドイツの哲学者アルフォンス・デーケンは、悲嘆から回復までの段階として以下の12のプロセスを提唱しました。
- 1. 精神的打撃と麻痺状態:「何も考えられない」
- 2. 否認:「きっと間違いだ」
- 3. パニック:「生きていく意味がない」
- 4. 怒りと不当感:「自分を置いて先に逝くなんて許せない」
- 5. 敵意とうらみ:「〇〇のせいでこうなったのではないか」
- 6. 罪の意識:「あの時、〇〇していればよかったのかもしれない」
- 7. 空想形成ないし幻想:「まだ生きている気がする」
- 8. 孤独感と抑うつ:「寂しい」「悲しい」
- 9. 精神的混乱と無関心:「この先どうしたらいいのかわからない」
- 10. あきらめからの受容:「考えても現実は変わらない」
- 11. 新しい希望:「今ある幸せを大切にしよう」
- 12. 立ち直りの段階:「前を向けるようになったと実感」
もちろん、死別を経験した全ての人がこのプロセスを順番に踏むわけではありません。グリーフケアのプロセスは、必ずしも順番に進むものではなく、各段階を行ったり来たりしながら、徐々に進んでいきます。
身体の症状
死別経験によって現れる主な身体症状は以下の通りです。
【睡眠障害】
- ・眠れない
- ・寝つきが悪い
- ・悪夢を見る
【食欲の変化】
- ・食欲がわかない
- ・過食が止まらない
【慢性的な体調不良】
- ・頭痛、腹痛、下痢など
【自律神経の乱れ】
- ・めまい、動悸、手足のしびれなど
【判断力・記憶力の低下】
- ・考えがまとまらない
- ・忘れっぽくなる
【無気力化】
- ・何もしたくない
- ・日常生活が普段通りに送れない
【感情の不安定化】
- ・突然涙が出る
- ・悲しいのに涙が出てこない
【フラッシュバック】
- ・死別の瞬間を突然思い出す
日常生活・行動の変化
死別経験によって日常生活や行動に現れる主な変化は以下の通りです。
【現実逃避・回避】
- ・辛い現実から目を背ける
- ・故人様と深い関わりのある場所や物を避ける
【過活動】
- ・過剰に予定を詰め込む
【過剰適応】
- ・自分の感情や意思を押さえ、周囲の期待や環境に応じようとする
【探索行動】
- ・亡くなった人の姿を探すような行動をする
- ・亡くなった理由を探す
【社会的ひきこもり】
- ・家から出ない
- ・周囲との関係を断つ
【自己破壊行動】
- ・アルコール乱用や薬物接種
- ・過食
- ・非行
4.グリーフケアにより期待される効果
グリーフケアを行うことで、ご遺族には以下の効果が期待できるとされています。
【心理的効果】
- ・大きな悲しみが和らぐ
- ・安心感が得られやすくなる
- ・悲嘆のプロセスを段階的に踏むことができるようになる
【身体的効果】
- ・グリーフによる体の不調を改善することができる
【生活・行動の効果】
- ・自分らしい生活が送れるようになる
- ・社会との繋がりが取り戻せる
グリーフケアの効果が出るまでにかかる時間は、人それぞれです。数カ月で立ち直る方もいれば、5年以上かかる人もいるでしょう。死別による悲嘆にはデリケートなケアを必要とするため、焦らず、長期的な取り組みが大切です。
5.グリーフケアの具体的な方法
グリーフケアは専門家だけでなく、ご家族や友人、そして自分自身でも行うことができます。
ここからは、グリーフケアの具体的な方法についてご紹介します。
自分自身で行うセルフケア
まずは、グリーフケアを必要とする人が自分で行うセルフケアについて解説します。
自分の感情を認める
セルフケアの最初のステップは、「つらい」「悲しい」といった自分の感情を受け止めることです。前述したように、喪失体験は程度や順番に違いはあるものの、さまざまな感情の変化をもたらします。そしてその変化は決して悪いことではなく、正常な反応です。
今感じている自分の感情を素直に認めることで心が楽になり、悲嘆からの回復へとつながるでしょう。
自分のペースで進む
小さい子どもや、自分を心配してくれる人が周りにいる場合、「いつまでも悲しんでいてはいけない」と回復を焦ってしまう方が多くいます。しかし周囲に気遣って感情を押し隠した結果、かえって症状を重くしたケースも見られるため注意が必要です。
無理に立ち直ろうとはせず、自分のペースで少しずつ進むことを心がけましょう。回復の段階を戻ってしまうことがあっても、「それだけ相手の死を悲しんでいる」と受け入れることも大切です。
日常生活を整える
「バランスのよい食事を摂る」「起床・就寝時間を決めて行動する」など、可能な範囲で日常生活を整えましょう。日常生活を整えることで、グリーフによる体調の悪化を防ぎます。
もしどうしても難しい場合は、日光浴だけでも取り入れるのがおすすめです。日光を体に浴びることによってビタミンDとセロトニンが生成され、「免疫力向上」「うつ症状の改善」「睡眠の質の向上」などの効果が期待できるとされています。
故人様との思い出を振り返る
故人様との思い出を振り返ることで、死を受け入れるための器が整いやすくなります。思い出を振り返る最初の機会としては、葬儀や法要といった弔いの儀式が挙げられます。
しかしご遺族は忙しく過ごされることが多いため、ゆっくりと思い返す余裕がないかもしれません。そのような場合は、「故人様の写真や動画を見返す」「後日お別れ会を開催する」「仏壇やお墓に語りかける」など、落ち着いたタイミングでできることから始めてみましょう。
他者とつながる
「信頼できる人に感情を打ち明ける」「同じ経験をした人々と交流する」ことで、その人に合った支援が見つかるだけでなく、心を癒すきっかけにもなります。無理のない範囲でご家族や友人、グリーフケア専門のコミュニティ、医療機関などと交流の機会を持ってみましょう。
周囲ができるサポート
死別を経験した人のために、周囲の方ができるグリーフケアについてご紹介します。
静かに寄り添う
死別を経験した人にとって、気持ちに折り合いをつけるには時間が必要です。また、精神的に疲弊し、進んで話ができる状態ではないかもしれません。
周囲の人が最初に行えるグリーフケアは「ただそばに居ること」です。無理に声をかけたり、立ち直りに向けた行動を促したりせず、静かに寄り添うことから始めてみましょう。
相手の話を聞く
相手の話に耳を傾けることも、立ち直りに必要なケアです。ただし、話を聞く側は受け答えに気を付けなければなりません。相手を否定する、自分の価値観を押し付ける、現状のままではいけないと諭すといった態度は、かえって相手を苦しめてしまいます。反応は相づちに留め、「睡眠はとれていますか?」など、時折相手を気遣う声掛けができるとよいでしょう。
【避けた方がよい受け答え一例】
- ・「そんなことを思ったら、亡くなった人が悲しむよ」
- ・「私もあなたと同じ立場だったら、後悔すると思う」
- ・「早く元気になってね」
亡くなった方を尊重する
ご遺族にとって、亡くなった方は今も大切な存在です。「故人様をしのぶ機会をもつ」「故人様の人柄や思い出を語る」「仏壇やお墓をきれいにする」といった行動が、ご遺族の大きな心の支えになることがあります。
体調を気遣う
悲しみからの回復には、時間だけでなく膨大な力も消費します。揺れ動く感情に折り合いをつけるために、日常生活がままならなくなることも珍しくありません。
周囲の人は体調を気遣い、必要に応じたサポートを検討してあげましょう。ただし相手が望まない場合は無理に行動せず、専門家などに相談することをおすすめします。
コミュニティ・グループ活動によるグリーフケア
死別の悲しみは、同じような体験をした人と分かち合うことで癒されることもあります。以下は、グリーフケアを目的としたコミュニティやグループ活動の一例です。
【遺族の集い・遺族の自助グループによるケア】
- ・ご家族を自死、事故、病気などで亡くしたご遺族が、同じ体験をした人たちと定期的に語り合い、思いを分かち合うための集まり。
- ・専門家や外部のサポーターは在籍せず、基本的に当事者だけで構成されるため、お互いの気持ちを対等な立場で語り合うことができる。
- ・対面に限らず、オンラインで集えるグループもある。
【宗教者によるケア】
- ・宗教者が主催するグリーフケアの場。死別の経験をした人たちで集まり思いを分かち合ったり、追悼法要を行ったりする。
- ・宗教者が生や死への向き合い方を語ることもある。
【地方自治体によるケア】
- ・精神保健福祉センターによる相談窓口や、定期的に開催する交流会。
専門家による支援
専門家による支援では、カウンセリングや心理療法があります。
【グリーフケア外来】
- ・病院やメンタルクリニックで受けられるケア。
- ・カウンセリング以外にも、症状によっては薬の処方が可能。
【グリーフカウンセリング・ワークショップ】
- ・民間の資格を取得したグリーフケアの専門家による、カウンセリングやワークショップ。
このように、遺族を支えるグリーフケアには、さまざまな形があります。近年では、葬儀社や遺品整理業者など、人の死に係わる企業でも研修やご遺族への配慮を学ぶ取り組みが進んでおり、グリーフケアの心構えを取り入れる動きが広がっています。
6.花葬儀が大切にしている「ご遺族への寄り添い」
「故人様をどのようにお見送りするか」を考えることも、グリーフケアのひとつです。花葬儀では、葬儀が悲しみだけではなく、あたたかさが心に残るものとなるよう、ご遺族に寄り添いながらサポートしております。
こちらでは、花葬儀が大切にしている「寄り添う形」を、お客様からいただいたお声と共にご紹介します。
心に寄り添う丁寧な対応
葬儀社にとっての「心に寄り添う」とは、ご遺族のお話しを傾聴し、その方が最も叶えたい葬儀を手掛けることと考えています。そのため、花葬儀では平均よりも倍以上の時間をかけてヒアリングを行い(※)、心の内を語っていただくことから始めています。
「身内の葬儀は初めてで、何をどうしたらよいのかわからなかった」というお客様には、葬儀に対する不安や疑問をじっくりとうかがい、丁寧にご説明しました。次第にお客様の中で実現させたい葬儀のイメージが浮かび、色とりどりのお花で送る華やかな式を執り行いました。
葬儀後は「見守っていただけたことが私たちへのグリーフケアにもなったと思います。式後1か月間は私が癒されたなと実感しました」というあたたかいお言葉を頂戴いたしました。
(※)お客様のご都合に応じて異なります。
故人様との思い出を大切にする時間を提供
葬儀は故人様との思い出を振り返り、思いを伝える大切な機会です。花葬儀では、ヒアリングで得た故人様のお人柄や思い出、故人様の好きだったものなどをテーマに、空間デザイナーが花祭壇をオリジナルでデザインいたします。
デザインは祭壇だけでなく、葬儀会場全体にも行います。徹底した空間作りによって、ご遺族の方には故人様の存在を身近に感じていただきながら、ゆっくりと思い出にひたる時間をお過ごしいただいております。
花葬儀が手掛けるオリジナルの花祭壇や葬儀空間は、花祭壇ギャラリーでご紹介しております。ぜひ併せてご覧ください。
7.グリーフケアとはご遺族の悲しみに対して行われる精神的・身体的ケア
大切な人を亡くす経験は、心と体に大きな影響を及ぼします。深い悲しみによって苦しむ人を支えるためのサポートをグリーフケアと呼び、「感情を認める」「思いを語る」などのプロセスを経ることで次第に回復すると考えられています。
花葬儀では葬儀だけでなく、法事・法要、遺品整理といったご逝去後のサポートにも力を入れております。大切な人を亡くされたばかりでお困りの方は、ぜひご相談ください。いつか心に晴れ間が訪れるよう、ご要望には精一杯お応えいたします。ご相談は24時間受付の電話、もしくは無料の事前相談がおすすめです。この機会にどうぞご利用ください。