老後のおひとりさま不安を解消するには?今からできる対策を解説
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- 【 終活の基礎知識 】
今回のコラムは「おひとりさまが老後に直面する問題と対策について」です。
「おひとりさま」とは一人で暮らしている状態を指す言葉で、未婚の方だけでなく、パートナーと離別・死別してしまった方や、ご家族と疎遠である方も含みます。自分の時間を自由に過ごせるのがおひとりさまの魅力のひとつでもありますが、一方で、多くの方が老後ひとりで過ごすことへの不安を抱えているようです。
このコラムでは、おひとりさまが老後に直面する不安と、その対策をご紹介します。老後への不安解消にぜひお役立てください。
1.おひとりさまが直面する老後不安
おひとりさまでいると老後にどのような不安が起こるのかを、まずは細かく見ていきましょう。
お金の不安
「年金だけで暮らせますか?」「老後の生活に必要な貯金は十分ですか?」という質問に、自信を持って頷ける人は少ないでしょう。令和4年に総務省が調査した「家計調査報告書」によると、65歳以上の単身世帯の家計収支は月平均2万580円が不足しているとの結果でした。
引用:総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2022np/index.html
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2022.pdf
家計収支のうち、実収入の大部分を占めるのが「社会保障給付」です。社会保障給付とは、老齢や介護、医療などを対象に行われる給付で、年金も含まれます。
令和6年4月から、年金支給額は前年度に比べて2.7%引き上げとなりました。しかし国民年金の満額支給額は月額6万8,000円(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)であり、不足分を大きくカバーするほどではありません。
仮に65歳から95歳の30年間をおひとりさまとして過ごす場合、単純計算で約741万円を貯蓄していないと、不足分を補うことはできません。老後に実現したいことがある方、あるいは老後の生活に不安を感じている方は、それ以上の蓄えが必要となるでしょう。
健康の不安
おひとりさまに関係なく、老後を送る上での大きな不安は「健康面」です。年齢と共に体の機能が衰えると、普段通りの生活が難しくなるだけでなく、病気にもかかりやすくなります。
おひとりさまの健康面に関する不安を具体的に考えてみましょう。
- ・認知症やがんなどの病気や怪我をしたらどうする?
- ・病院にひとりで通えなくなったらときの対応は?
- ・家の中で倒れても、すぐに気づいてもらえる?
- ・介護や入院が必要になったとき、身元保証人(※1)になってくれる人はいる?
おひとりさまで老後を送る方は、このような不安への対策を元気なうちから立てておかなければなりません。
(※1)介護施設への入所や病院への入院には、利用者の身元を保証してくれる身元保証人を求められるのが一般的です。
孤独に対する不安
複数の研究によると、高齢者はうつ症状があらわれやすいとされています。うつ症状になってしまう原因には病気、経済的な社会不安などのほか、孤独も挙げられています。
社会との接点が減り、生活が自分一人だけで完結してしまうと、他者との関わりが減り、孤独感やむなしさを感じやすくなります。一人の生活を楽しみつつ、適度なコミュニケーションを維持する工夫が大切です。
生活面での不安
高齢になり身体機能が衰えると、今当たり前にできていることが難しくなります。
例えば掃除や洗濯、日常的な買い物など、生活に直結することができなくなっていくと、思わぬ事故やけがにもつながりかねません。「今はできているから大丈夫」ではなく、「今当たり前にできていることは将来できなくなる」ことを前提に対策をしていきましょう。
住まいの不安
おひとりさまは、「老後に現在の家に住み続けることができるか」を考えることも必要です。
【住まいを考える上での代表的なポイント】
- ・建物は老朽化していないか?
- ・(持ち家の場合)固定資産税を継続して支払えるか?
- ・(賃貸の場合)家賃を払い続けられるか?
- ・段差や手すりなど、バリアフリーを意識した作りになっているか?
- ・年齢とともに不便を感じる立地(駅から遠い、坂道が多いなど)ではないか?
加齢とともに、現在快適に感じている住まいでも、将来は生活に支障をきたすこともあります。少しでも不安を感じる点があるようでしたら、引っ越しやリフォームも検討しましょう。
次項からは、これまでに挙げた老後のおひとりさまの不安に備える対策を詳しくご紹介します。
2.今からできる!「おひとりさまの老後」に向けた対策
おひとりさまが充実した老後を過ごすために、今からできることを始めましょう。
こちらから詳しくご紹介します。
老後資金を賢く準備・管理
お金に対する不安の解消には、「見直し」「資金計画」「運用」の3つがおすすめです。
今の資金状況を見直す
まずは現在の収入と貯蓄を把握しましょう。次に定年退職した後の収入源と、前述した単身高齢者の家計収支を参考に、老後に貯蓄がいくらあれば生活ができるのかを考えます。
ご紹介した金額はあくまでも平均値ですから、実際にはもう少し余裕をもった資金が必要となるかもしれません。「自分が老後に叶えたい生活レベルはどの程度か」「大病になったときにかかる費用はどのくらいか」といったことも考慮しましょう。
より正確な資金計画を立てるために、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談するのもおすすめです。
資金計画を立てる
おひとりさまの老後を快適に過ごすための目標金額が決まったら、資金計画を立てます。普段の生活を振り返り、無駄遣いが多いようであれば改めましょう。「30年後に〇〇万円を貯める」と大きな目標を立てるより、「1ヶ月で〇〇円貯める」と短期的な目標を立てるほうが、無理なく進められます。
資産運用も検討してみる
老後のおひとりさま生活を豊かにするために、資産運用を検討するのもひとつの手段です。資産運用の種類は大まかに以下の通りです。
・債券や株式を購入する
・満期や解約時にお金が戻ってくる生命保険に入る
・外貨預金をする
・不動産に投資し、家賃収入を得る
・投資信託をする
・個人型確定拠出年金(※2)を始める
投資信託はNISA(少額投資非課税制度)を利用することでお得になります。NISAは投資で得られた利益が非課税になる制度です。2024年から非課税期間が無期限化され、より長期的な運用が可能となりました。少額から積立投資ができ、利益がそのまま得られることから、これから投資を考えている初心者にもおすすめです。
同じように、個人型確定拠出年金(iDeCo)も運用による利益は非課税、積立金が所得控除の対象になるなど、老後の資金形成の選択肢としてよいでしょう。ただし、どの資産運用も必ずリスクはあります。個人の状況や目的に応じて、適切な選択をすることが大切です。
(※2)老後のためにお金を積み立て、60歳以降に引き出す仕組み。引き出すまでのお金は自由に運用できる。
健康的な生活習慣を身につける
長く健康で過ごすためには、普段から自分の体調に気を配ることが必要不可欠です。生活習慣を見直し、健康的な食生活、運動、睡眠が維持できるようにしましょう。また、一人暮らしの場合、体調の変化に気づきにくいため、定期的に健康診断を受けることも重要です。
判断能力の低下に備える
老化によって判断能力が衰えたり、認知症になったりした際の対策を考えましょう。「財産」「医療・介護」の点からそれぞれご紹介します。
財産を守るためにできること
認知症などにより、自分の財産を自分で管理できなくなった場合、以下の制度や契約を利用することで、大切な財産を守ることができます。
【成年後見制度】
・知的障害や認知症など、判断能力に不安のある人をサポートする制度
・後見人が財産管理やさまざまな契約(介護・福祉サービスの契約、介護施設入所、入院手続きのサポートなど)を代行する
・後見人には、本人の判断能力が落ちた後に家庭裁判所によって選任された法定後見人がサポートする「法定後見」と、利用者本人が元気なうちに契約し、判断能力が低下した後に契約内容が履行される「任意後見」がある
【家族信託】
・自分の財産の管理や処分を家族に一任する契約
老化によって判断能力が低下すると、高齢者を狙った詐欺や悪質な契約にも気づきにくくなります。上記のような制度を利用することで、リスク対策の強化ができるでしょう。
健康を維持するためにできること
元気なうちから健康的な生活を送るのは大切なことですが、老後に判断能力が低下することで、特におひとりさまの場合、体調の変化に気づきにくくなったり、生活習慣が乱れたりする恐れがあります。たとえば急な体調不良には、以下のような備えが必要です。
【急な体調不良には】
- ・かかりつけ医にすぐ連絡できる
- ・常備薬、保険証、お薬手帳、診察券がすぐ取り出せる場所にある
- ・隣人とお互いの安否を定期的に確認できる関係を築いている
- ・入院セットを自宅に保管している
- ・身元保証人を用意している
- ・介護や医療に関する希望をまとめている
これらに加え、次でご説明する生活サポートサービスも把握し、長く健康を維持するサポート体制を作ることが大切です。
活用できそうな生活サポートサービスを把握しておく
おひとりさまの老後問題に直面したときでも、サポートしてもらえる環境が整っていれば安心です。財産管理以外の、おひとりさまの老後に活用できそうな生活サポートサービスをご紹介します。
【日常の買い物】
- ・ネットスーパー
- ・ネット通販
【家の中でのサポート全般】
- ・家事代行サービス
- ・配食サービス
【安全に関するサポート】
- ・安否確認サービス(見守りサービス)
【介護や医療のサービス】
- ・デイサービス
- ・訪問看護
- ・訪問リハビリ
- ・訪問理美容サービス
- ・送迎サービス
趣味や地域活動で交流を深める
一人暮らしの孤独感には、夢中になって取り組めることや他者とのコミュニケーションが有益です。趣味を見つけることによって生活の質が向上し、また、活動を通して交友関係が広がれば老後の生活はさらに楽しくなるかもしれません。
自治体で開催している地域活動や老人クラブ、習い事、インターネットやSNSを通じた交流など、興味のあるものに積極的に取り組んでみましょう。
老後を見据えて住まいを検討する
今の住まいを見直し、必要であればリフォームや転居を検討します。また、元気なうちから介護施設へ入所するのもひとつの方法です。
介護施設と聞くと「介護や支援を必要とする高齢者のための施設」と思いがちですが、必ずしもそうではありません。中には自立した生活を送れる「シニア向け分譲マンション」や「健康型有料老人ホーム」などもあります。
健康状態が悪化した場合でも住み続けられる、手厚い介護が受けられる、医療面で安心して生活できるなど、施設ごとにさまざまな特徴があるので、自分に合った施設を探してみましょう。介護施設の種類についてもっと知りたい方は「介護施設の種類とは?」をご覧ください。
万が一の事態に備える
おひとりさまの老後には、万が一の事態に対するきちんとした備えも必要です。
医療・介護に対する希望を叶えるためにできること
医療や介護が必要となったとき、自分の意思が自分で伝えられない状態になっているかもしれません。医療・介護に関する希望はエンディングノートやリビングウィル(※3)にまとめ、いざというときに第三者が見られる場所に保管しておきましょう。
【医療・介護で明記しておきたい希望】
- ・どの程度の治療、投薬を望むか
- ・延命治療を望むか
- ・どの程度の介護を望むか
- ・死後は臓器提供もしくは献体をしたいかどうか など
(※3)どのような最期を迎えたいか希望を書いたもの。死期が迫ったときに作成する。
死亡後の希望を叶えるためにできること
自分が死亡した後のことについて考えておくことも大切です。以下のようなポイントについて、事前に備えておきましょう。
【死後に備えておくこと】
- ・財産の処遇
- ・葬儀や供養、埋葬の内容
- ・死後事務委任契約の検討
死後事務委任契約とは、死亡後に必要となる手続きを、代理人に依頼して実行してもらう契約です。おひとりさまの場合、死後の手続きを行うご家族がいないこともあるため、契約を結ぶことで自分の希望を円滑に実現できます。
本などで情報を収集
老後のおひとりさまが直面する問題について、知識や心構えを本やインターネットなどから収集しましょう。知識を得ることは、自信や行動力、ひいてはより強い安心感へと繋がります。
おひとりさまの老後を自分らしく過ごすためには、さまざまな情報が必要です。花葬儀コラムでは初心者向けから専門的な内容まで、終活に役立つ本を26冊ご紹介しております。老後や終活について理解を深めたい方は、ぜひ参考になさってください。
3.おひとりさまの老後について相談できる窓口
おひとりさまの老後にまつわる不安について、気軽に相談できる場所を知っておくとさらに安心です。
こちらでは、相談窓口の種類と選び方をご紹介します。
相談窓口の一般的な選び方
抱えている悩みによって相談先は異なります。内容ごとの相談先は以下を参考になさってください。
・お金の不安
銀行、ファイナンシャルプランナー、弁護士 など
・健康の不安
かかりつけ医、介護施設、弁護士、身元保証サービス会社 など
・孤独に対する不安
自治外の相談窓口、地域のコミュニティ、こころの健康相談ダイヤル、心理カウンセラー など
・生活面での不安
家事代行サービス業者、介護施設 など
・住まいの不安
介護施設、リフォーム会社 など
高齢の方は、まずは「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会」で包括的な相談をしましょう。その他、近くに頼れる人がいない、身寄りがない場合の老後の備えについては、別の記事で解説しておりますのでご参照ください。
老後のおひとりさまをサポートしてくれる窓口はたくさんありますが、信頼できる相手を選べるかがポイントです。専門知識の豊富さ、相談実績、明瞭な料金体系、相談したときの対応などを、口コミやレビューも参考にしながら決めましょう。
おひとりさまの老後サポートは花葬儀まで
おひとりさまの老後に関するお悩みは、弊社花葬儀でもお受けしております。花葬儀は弁護士や司法書士などの専門家と連携しており、以下のお悩みに対応してきた実績が豊富にございます。
- ・ご自身の葬儀、供養方法、現在あるお墓の処遇について
- ・住宅や土地の査定
- ・介護施設のご紹介
- ・生前整理
- ・遺言書作成サポート
- ・相続に関するサポート など
花葬儀を利用することで、窓口を変えずにさまざまな相談がワンストップで行えます。住宅の査定や介護施設のご紹介は中立の立場で行い、不要な営業活動もありません。「専門家にいきなり相談するのは難しいから、まずは老後の生活について不安に思っていることを全部聞いてもらおうかな」といったお気軽さでどうぞご利用ください。
4.おひとりさまの老後に関するQ&A
A.男性と女性では平均寿命と平均年収が異なるため、女性のほうが老後資金を多く必要とする傾向にあります
女性は男性よりも平均寿命が長いため、より長期間の生活資金が必要です。また、男性よりも平均年収が低い傾向にあることから、年金受給額が少なくなりがちであるため、早い段階から老後のための資金計画を立てることが大切です。
厚生労働省が発表した令和5年版の簡易生命表の概況によると、男性の平均寿命は81.09年、女性は87.14年でした。また、総務省統計局による全国家計構造調査(2019年)では、女性の高齢無職単身世帯の平均実収入は約13~15万円、男性の場合は約15~17万円と、男性のほうがやや多い結果となっています。
A.メリットは「自分らしい生活が選べること」、デメリットは「環境の変化によるストレス」です
老後に、長年憧れていた地域への移住を検討することもあるでしょう。移住することのメリットは、以下の通りです。
・自分の都合を優先に、自由に移住先を決められる
・移住にかかる費用負担は、同居世帯に比べて低い
一方で、環境の変化にストレスを感じたり、知人友人と離れてしまうことで孤独感を強めたりする可能性が考えられます。これらを避けるための対策は以下の通りです。
・移住先の情報をきちんと把握する
・実際に移住した人の話を聞く
・環境が大きく異なる場所への移住を避ける
・移住先で孤立しないよう、コミュニティを探す
A.リビングウィルの作成や成年後見制度の利用により、自分の意思を尊重した看取りを実現できる可能性が高まります。
看取りとは、病気や老衰によって自然に亡くなるまでの過程を見守ることです。ご家族がいればご家族に看取りをしてもらうのが一般的ですが、おひとりさまの場合は難しいでしょう。看取りの場所は介護施設だけでなく在宅という選択肢もありますので、それぞれの費用や利用条件を事前に調べておきましょう。
成年後見人制度を利用することで、判断能力を失った場合でも、事前指示書や事前のやり取りに基づいた看取りが行われやすくなります。
5.老後のおひとりさま生活に向けて今から準備を始めましょう
老後におひとりさまとして生活する人の割合は年々増えており、2040年には65歳以上の約4割に及ぶと予測されています。人生の残りを豊かに過ごすためにも、今からおひとりさまの老後に向けて準備を始めましょう。
おひとりさまで老後を過ごすイメージが湧かないという方は、ぜひ一緒にご自身の葬儀について考えてみませんか?「いきなり葬儀?」と驚かれるかもしれませんが、人生の幕の閉め方を考えることで、「それまでどう生きたいか」「希望を叶えるためには何が必要か」が見えてくることがあります。