いまどきの「祭壇」、ここまで自由に…
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- 【 花祭壇 】
家族葬、一日葬、そして火葬式と、最近、コンパクト化が進む葬儀の選択肢。ただ、形式に注目が集まる一方で、中身、演出にはどんな変化が現れているのでしょうか? 葬儀業界に従事して20年以上になる、花葬儀の1級葬祭ディレクター・土屋恵美が答えます。
「家族葬」の割合が増加、よりコンパクトに
以下の表は、増加傾向にある葬儀の種類、取扱件数の割合です。公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」にて、葬儀業者に対し、直近5事業年度の傾向を聞いた結果をまとめています(調査実施は2016年、回答数は1,084)。
出典:公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」より
グラフから見て取れるのは、近年話題にもなる「家族葬(家族、親族、友人など親しい人のみ少人数で行う形式)」や「火葬式(通夜、告別式を省き、火葬だけで終わらせる形式)」などの高さ。とくに、都市部では、家族葬の増加傾向が強まります。
規模よりも「その人らしさ」にこだわり
コンパクトな形式が多く選ばれる近年の葬儀。でも、内容までシンプルさを求められているのかといえば、必ずしもそうとは限らないようです。
豪華絢爛とは言わずとも、できれば、亡くなられた方の人生、思想を反映できたら――。一般葬よりも少人数で、遠慮がない、アットホームな葬儀だからこそ、こんなニーズも存在します。
最近、依頼が増えている葬儀の特徴は?
『一日葬をお願いされることが多くなりました。「花葬儀」に火葬式をご依頼いただく方は、「人数が少ない」「時間がとれない」という理由をお持ちのようです。業界的には、時間の短縮を前面に出したサービスが増えている印象です。
ただ、火葬式だからといって、気持ちがないわけではありません。「お別れの時間がない」など火葬式の特徴をお客様に説明すると、「本当はちゃんとやりたい」などの本音がこぼれることもあります。そんなケースでは、一般的な火葬式にはない折り合えるポイントを探ります。たとえば、火葬前のお別れの時間を長く設ける、馴れ親しんだ自宅でお別れをしてから火葬場へ向かうなどです。結果、「お別れの時間がない火葬式でもいいと思ったけど、結果的にはこれがちょうどよかった」と感謝の言葉をいただきます。また、生前に事前相談をなさる方も増えています。』(土屋)
祭壇の移り変わりは?
お葬式の顔ともなるのが、祭壇です。かつては、ひな壇のように組み立てる伝統的な「白木祭壇(しらきさいだん)」が主流でした。
しかし、最近は、華やかな印象を与える「花祭壇(はなさいだん)」が多く使われるようになりました。弊社「花葬儀」の実例では、95%前後の人が花祭壇を選んでいます。白木祭壇のように祭壇を使いまわすのではなく、それぞれの人柄や性格に合わせて祭壇をデザインするという特長が、選ばれる理由のひとつといえるでしょう。
『私が業界に入った20年前はまだ、菊の花を合わせた白木祭壇が主流でした。数年が経過し、菊でラインを描いたような花祭壇が、パラパラとみられるようになりました。芸能人のお葬式でクローズアップされましたね。
洋花は単価が高く、葬儀の祭壇に導入されるようになったのは、さらに後でした。私たち花葬儀が初めて洋花を祭壇に取り入れ、注目を集めました。』(土屋)
また、「花葬儀」の事前相談では、花のデザインまで踏み込むことがあります。打ち合わせとはいえ、ここまで決めることは葬儀会社として珍しいといわれています。
フラワーデザイナーが手がけた演出
「花葬儀」の特長は、葬儀屋と花屋がコラボしている点です。“葬儀のプロ”である葬儀プランナーと“花のプロ”であるフラワーデザイナーが、ご家族と一体となり、花祭壇を作り込みます。
従来のルールに縛られない自由な表現が、亡くなられた大切な方を思い起こすオリジナルの祭壇を演出。これまで8000件以上の想いを形にしてきました。
ここで紹介する写真は、すべて花葬儀で執り行われた葬儀の実例です。
「その人らしさ」を色濃く反映した花祭壇。規模は小さくとも、随所に散りばめられたデザインの工夫が、自由度の高さを感じさせます。
ステンドグラスを並べ、故人様が好きだった淡いピンクや白の花材の祭壇を照らす演出に。
『花がもたらす力を信じています。臨場感、大きさ、彩り…式場全体トータルの演出にも適しています。』(土屋)
華道を習得したフラワーデザイナーによる祭壇。
花だけが主役になるわけではありません。丹念なヒアリングから、亡くなられた方が親しんだ趣味、活動などを拾い集め、手書きのスケッチを作成します。打ち合わせの時間は5時間に及ぶこともあるのだそうです。
『葬儀社が主導となる式は好ましくない』と、土屋は強調します。
『目新しさを求めたり、過度に感動を誘うような演出は好きではありません。表現のベースはあくまでも故人様にあります。私が以前所属していたような大手グループでは、効率化とのバランスもあるため、「花葬儀」の演出は実現が難しいのではないでしょうか。』(土屋)
自宅で行なったお通夜の祭壇を、翌日の告別式で斎場に飾ります。ピアノ、フルート、バイオリンの生演奏でゆったりした時間を演出。
費用を安く抑えるには?
『「亡くなられた方のため」という殺し文句で、花を追加することに、不信感を抱く家族もいるのでは?』『「花葬儀」の演出は、繊細な施行なだけに、費用がかさむのでは?』
そんなご質問もいただくこともあります。
『まず、どれがオプションで、どれが省けるのか。葬儀に同じ見積もりはありません。見積もりの段階で、必ず明確にしています。
やりたくないことは、やめる。やりたいことについては、ご満足いただけるよう努力します。たとえば、家族葬は弔問客が限定されるため、亡くなられた方の思いを実現するための余裕ができます。』(土屋)
『また、弊社では「エクステンション方式」と呼ぶ取り組みをご提案しています。これは、参列できない方による供花(生花)を祭壇に組込み、拡充することができる仕組みです。』(土屋)
『もともと、ご遺族様の負担を軽減するために導入した方式でしたが、贈り主の名前を明記した芳名版(ほうめいばん)を祭壇横に設置することで、一緒に祭壇を作り上げた印象を与えることができます。
また、花葬儀は流通面でも、花屋と力を合わせています。もし、同じ質の葬儀をした場合、価格比較をするならば、安価といえるご葬儀を実現できます。』(土屋)