供養塔とは?建立する目的や種類、墓石との違い、費用相場を解説!
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- 【 お墓の基礎知識 】
近年は少子化や核家族化が進むことにより、お墓参りやご先祖様の供養が困難となる家庭が増えています。それに伴い、お墓に対する価値観が変化し、合祀墓(ごうしはか)や納骨堂などの永代供養墓への埋葬や墓じまいなどを選択するケースも増加しています。
このように、お墓のスタイルが多様化する現在において注目されているのが、供養塔です。
供養塔がどのようなときに建てられるのか、供養塔の目的や役割、供養塔の種類、また建立するときの相場などについて、詳しく解説していきます。
【もくじ】
1.供養塔とは?
供養塔とは、文字通り、ご先祖様や亡くなった方を供養するために建てられる石造りの塔のことです。霊園や墓地などで、墓石の横に建てられた小さな五重の塔は、馴染みがあるかもしれません。
平安時代の末期が始まりとされている供養塔の起源は、サンスクリット語のストゥーパと言われる仏塔(仏様の骨を収めた仏舎利)で、「卒塔婆」の語源にもなっています。
また、供養塔はおもに、天災や戦争などで多くの命が失われた際に、引き取り手がない、もしくは身元不明の不特定多数の無縁仏を合祀する際に、冥福を祈るために建立されますが、分散したお墓を合祀で供養する際や、「供養のための会」を行ったという証として建立されることもあります。
このように、供養塔は犠牲になった方々の霊を慰め、悲しい事実を記録として後世に残すためなど、さまざまな目的で全国各地に建立されています。
2.供養塔を建立する目的とは?
お墓は、ご親族やご家族が亡くなられた方を弔うために建てますが、供養塔はお墓とは異なり、一般的には不特定多数の方の遺骨を合祀して弔う目的で建立されます。以下に、先祖供養のために供養塔を建立する場合と、天災や戦争での犠牲者を供養する場合に分けて説明します。
先祖供養のために建立するケース
現代の家族事情では、先祖のお墓を供養し続けることが困難となる場合が多く、寺院や個人が供養塔を立てる方が増えてきています。そのケースについて解説します。
先祖供養のために建立するケース
永代供養とは、30年程前に誕生した、現代では広く知られる供養方法で、永代供養の制度が設けられたお墓が永代供養墓です。この永代供養墓は、将来お墓の継承者がいない、身寄りがないなど、お墓を維持していくことが困難となるケースにおいて、多くの方が検討されています。
そのため、寺院や霊園が、永代供養墓である合祀墓や納骨堂の他に、新たに供養塔を建立するケースが増えてきています。お寺で管理される永代供養塔はお骨を安置するだけではなく、一定区間法事やお彼岸などの永代の供養を行った後、多くは、ご遺骨を土に返し供養されるため、ご家族への負担が少なくなるでしょう。
お墓をまとめるとき
お墓が経年劣化してきた、遠方で管理ができない、少子化や跡継ぎの不在などにより、各地に点在した先祖のお墓をまとめてお祀りする際に、新たなお墓ではなく供養塔を立てる場合があります。
より丁寧な供養をしたいとき
ご先祖様の霊をより手厚く供養するために、墓石と並べて供養塔を建立することができます。
また、先祖代々続くお墓の敷地内には、古くなった墓石、誰が埋葬されているのかわからなくなった墓石などが混在しているケースがあります。その場合、古い墓石をまとめて新たに供養塔を建立し、供養することもあります。
分家をするとき
分家をすると、本家のお墓にご先祖様が祀られているため、分家は供養することができません。そのため、分家側がご先祖様への感謝の気持ちをこめて祀り供養するために、先祖供養塔を建立される方もいます。
天災や戦争での犠牲者を供養するケース
天災や戦争などで多くの方が亡くなった場合、引き取り手が見つからない遺骨などを供養するため、多くの人がお金を出し合って建立したり、慰霊のためや、過去の悲劇を忘れることのないよう、行政がモニュメントとして建立したりする場合があります。
3.供養塔の種類
供養塔には以下のような5種類があります。
五輪塔(ごりんとう)
供養塔の中で代表的なものが五輪塔です。5つの石材パーツで構成されている塔で、上から順に宝珠型(上部がとがった団子のような形をしている)の「空輪」、半円形の「風輪」、三角形の「火輪」、円形の「水輪」、四角形の「地輪」と呼ばれる石材が積み重なる形で造られています。
この5つの階層は、仏教において宇宙の構成要素である五大(上から空・風・火・水・地)を表しています。五大の思想は、もともとインドから日本に伝わったもので、五大を五輪として表した塔が五輪塔です。人間を表しているとも言われており、上から「空輪=風輪~地輪を融合し調和した状態」「風輪=呼吸」「火輪=体温」「水輪=血液」「地輪=肉体」で構成されていると考えられています。
宝篋印塔(ほうきょういんとう)
元々は経典「宝篋院陀羅尼経(ほうきょういんだらにきょう)」を収めるためのものでしたが、時とともに供養塔の役割をするようになりました。100年以上前に亡くなった先祖を供養するためのお墓で、上から「相輪・笠・塔身・基礎」という構成で造られており、塔の真ん中でくびれた形をしています。
石塔婆(いしとうば)
表面にサンスクリットの梵字(ぼんじ)が刻まれているのが特徴です。お墓の後ろに建てられる卒塔婆(そとうば)と形が似た石の板で作られているので、板碑(いたび)とも呼ばれています。鎌倉時代以降に多く造られた供養塔で、埼玉県においては青石塔婆(緑泥片岩で作られた塔婆)が多いのも特徴といえます。
無縫塔(むほうとう)
原則僧侶のお墓とされ、一番上に笏(しゃく)のような石を加工したものが乗っているのが特徴です。ひとつの石から継ぎ目なく作られているため、無縫塔と呼ばれます。卵のような形をしていることから、卵塔と呼ばれることもあります。
多宝塔(たほうとう)
多宝塔とは、仏塔の建築様式で造られた石塔です。供養塔以外にも、同じ形状の木造大型建築物を見つけることができます。上から、四角形、円筒形、四角形の構成で、上の四角形の角が上向きに反り、屋根の部分から相輪という細い棒が伸びた形状をしています。
4.供養塔の費用相場は?お墓と比較
供養塔の費用相場をお墓と比べて解説します。
お墓の費用相場
墓石の場合は、素材や加工のオプションを付けるかどうかによりかかる費用はさまざまですが、60万円以上の費用がかかります。和型墓石だけで見ると平均相場が約200万円といわれていますので、かなり高価なものも存在することがわかります。
また、お墓は、持ち家などと異なり、墓石を立てる区画の敷地を購入することができません。従って、区画の土地を使用するための権利費用として、永代使用料を支払う必要があります。永代使用料は初回の契約時に寺院に払う必要があり、60~100万円ほどかかります。
お墓を建てる際には、永代使用料と墓石購入額を合わせた金額(平均約170万円)を用意しておくとよいでしょう。
供養塔の費用相場
供養塔はその用途がさまざまであるため、価格の相場を特定することが難しいといわれています。あくまでも目安としてお伝えすると、需要の多い五輪塔などは取り扱いが多いため、20万円ほどで建てることができますが、装飾の多い多宝塔や宝篋印塔などは技術的に難しいとされ、100万円を超えるものもあります。
5.供養塔とお墓(墓石)との違い
供養塔とお墓は、どちらも亡くなった方の冥福を祈り、供養するために建立するものですが、供養する規模や目的が異なります。
祖父母や親、兄弟、遠い祖先など、親類縁者などの家族単位で建立するのがお墓です。「○○家の墓」と刻まれるのはそのためです。
一方、供養塔は、一般的に一つのお墓に入れないほどの大人数の亡くなった人を供養するために建立します。災害などによって多くの死者を祀るために建てることが多く、お墓のように個人が必ず用意しなければならないものではありません。お墓をまとめなければならない場合などに、個人が建てることもあります。
6.日本各地にある供養塔
日本各地にある供養塔をご紹介します。
原爆供養塔
1945年8月6日に広島に投下された原爆の多くの犠牲者のうち、身元不明の方が運ばれたのが現在の広島平和記念公園です。原爆投下のあった翌年には、市民の寄付によって、公園敷地内に供養塔などが建立されました。
戦後の1955年に現在の供養塔は改築され、その際に、広島市内各地に散在していた身元不明の遺骨も新たに供養塔に集められ供養されました。
高野山奥の院の供養塔
和歌山県の高野山奥の院には、徳川吉宗・武田信玄・伊達政宗・明智光秀などのお墓や供養塔が、約20万基建てられています。
源頼朝供養塔
鎌倉幕府を開いた源頼朝の供養塔は、島津重家によって鎌倉市の頼朝の持仏堂である法華堂の跡地に、石造りの五重塔として建てられています。
承久の乱合戦供養塔
承久3年(1221年)6月6日、岐阜県各務原市の「まめど(漢字表記は諸説あり)」は、朝廷側と鎌倉幕府側による戦いの激戦地となりました。このとき、多くの戦死者を弔った供養塔(五輪塔)は埋もれた状態でしたが、昭和7年の県道工事の際に出土され、有志の手により佛眼院のある矢熊山に移されました。
また、昭和47年には、「承久の乱合戦供養塔」として市史跡に指定されました。
自然災害伝承碑「大震災殃死者供養塔(だいしんさいおうししゃくようとう)」
「自然災害伝承碑」とは、過去に起きた地震・洪水・土砂災害などを記した石碑やモニュメントのことで、地域住民の防災意識の啓発を目的に、国土地理院が47都道府県367市区町村1224基の自然災害伝承碑を公開(2022年1月14日時点)しています。
大震災殃死者供養塔はその中のひとつで、大正12年9月1日に発生した関東大震災の伝承碑として、神奈川県平塚市札場町の長楽寺に建立されています。
東日本大震災物故者供養塔
東日本大震災物故者供養塔は、東日本大震災で犠牲になった人たちを弔うための供養塔で、東北各地には、この他に東日本大震災津波物故者慰霊塔、海難慰霊聖観音像、慰霊碑、地蔵尊など多くの祈りのシンボルが建立されています。
各地域の供養塔
日本各地には、上記で紹介した供養塔以外にも、偉人の供養塔、動物の供養塔、災害時の被災者の供養塔など様々な供養塔があります。その一部をご紹介します。
東京都にある供養塔
「近藤勇と新撰組隊士供養塔」・・・東京都帰宅指定有形文化財で、北区滝野川の寿徳寺に建立されました。
千葉県にある供養塔
「木曽義正公供養塔」・・・千葉県旭市イにある東漸寺に建立されました。
埼玉県にある養塔
源氏三大供養塔」・・・源義賢、義仲、義高ら3代の供養塔で、大蔵館跡(埼玉県嵐山町大蔵)近くにある大行院敷地内に建立されました。
神奈川県にある供養塔
「源範頼公供養塔」・・・横浜市金沢区薬王寺境内に建立されました。
「横浜港港湾労働者供養塔」・・・作業中に不慮の事故で亡くなった横浜港港湾労働者の供養塔で、象の鼻のパーク(横浜市中区海岸通)の一画、波止場会館の前に建立されました。
北海道にある供養塔
「南極観測樺太犬記念碑・樺太犬供養塔」・・・南極観測で活躍したタロ・ジロの2頭を含む15頭の功績をたたえて、北海道稚内市稚内村ヤムワッカナイに建立されました。
「茅部の鰊供養塔」・・・道指定有形文化財で、豊富にとれすぎたため土中に埋められたニシンを供養するために、1757年、北海道茅部郡森町本茅部に建立されました。
山口県にある供養塔
「飢民の供養塔」・・・享保17年(1732年)ウンカの異常発生による大凶作による餓死者を弔うための供養塔で、山口県熊毛郡田布施町波野の大恩寺に建立されました。
「大内義隆供養塔」・・・大内義隆が自害した山口県長門市にある大寧寺に、建立されました。
7.宗教ごとに異なる「五輪塔に刻まれる文字」
五輪塔の表面には、5つの文字が刻まれます。仏教には複数の宗派がありますが、それぞれの宗派において刻まれる文字は以下のように異なります。
真言宗
弘法大師を開祖とし、平安時代初期に体系化した「真言密教」を教義とする宗派が真言宗です。五輪塔の表面に掘られる文字はサンスクリット語で、上から「キャ・カ・ラ・バ・ア」の梵字を刻みます。
禅宗系
禅宗は臨済宗・曹洞宗・黄檗宗の三宗に分類されています。この日本の三大禅宗においては、五輪塔に梵字で上から「空・風・火・水・地」と刻みます。
日蓮宗
日蓮上人が鎌倉時代に開いた宗派が日蓮宗です。五輪塔には、上から「妙・法・蓮・華・経」と刻みます。
天台宗
最澄が日本に伝えた大乗仏教の宗派が、天台宗です。五輪塔には、禅宗と同様に上から梵字で「空・風・火・水・地」と刻む、もしくは日蓮宗にみられる「妙・法・蓮・華・経」と刻みます。
浄土宗
法然を開祖とする鎌倉時代に成立した宗派が、浄土宗です。五輪塔には、上から「南無・阿・弥・陀・仏」と刻みます。
浄土真宗
親鸞を開祖とする鎌倉時代に開かれた宗派が、浄土真宗です。「他力本願」すなわち「南無阿弥陀仏と唱えるだけで極楽浄土に渡れる」とされる親鸞聖人の教えは、供養のための五輪塔は不要とされていますが、「開祖の親鸞聖人のお墓は五輪塔である」ということから開祖にならい五輪塔を立てることも可能です。その場合、上から「南無・阿・弥・陀・仏」と刻みます。
8.個人で供養塔を建立する場合は寺院や葬儀社に相談を!
供養塔とは墓石と同じように亡くなった方を供養するための石造りの建造物ですが、墓石とは異なり、おもに災害など多くの方が亡くなった場合や、合祀など複数の方を一度に弔うために建てられます。
しかし、少子化や核家族化が進み暮らしが変化したことで、供養の形も変わりつつあります。遠方のお墓や複数のお墓を管理することが困難となるケースなどにおいては、個人でも供養塔を建てる方や供養塔での永代供養を希望される方が増えています。
供養塔は宗教・宗派の制限もなく比較的安価に建てることができるため、建立を検討される場合は、お寺などに相談されるとよいでしょう。花葬儀でもアドバイスさせていただきますので、お気軽にご相談ください。