リビングウィルとは?意味・必要性・書き方と注意点を解説
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- 【 終活の基礎知識 】

「リビングウィル(Living Will)」とは、終末期に受けたい医療やケアについて、ご自身の意思をあらかじめ示しておくための文書です。医療が進歩した現代では、延命治療の選択がご自身の意思と異なる形で行われるケースも少なくありません。
本記事では、リビングウィルの基本的な意味や必要性、書く内容、作成時の注意点までをわかりやすく解説します。ご自身やご家族が後悔のない選択をするための参考として、ぜひご覧ください。なお、すぐに作成したい方は「書く内容」「書き方」「例文」から先に読むのもおすすめです。
【もくじ】
1.リビングウィルとは?意味と法的効力

まずは、リビングウィルの基本的な意味と法的効力について解説します。
リビングウィルとは?
死期が迫ったとき「あらゆる手段を使って生き続けたい」と考えるのか、「回復の見込みがないのであれば延命措置は望まず、最期を迎えたい」と考えるのかは人それぞれです。
このように、人それぞれ異なる「人生の最期の迎え方」についての考えを判断能力が十分にあるうちに書き記しておく文書のことを、リビングウィルといいます。
日本では法的な強制力はありませんが、医療やケアの判断の際に本人の意思を示す重要な資料として扱われます。なお、実際の医療方針は病状や医療機関の判断、ご家族の意向によって異なります。作成にあたっては主治医や医療従事者、ご家族と十分に話し合ったうえで判断してください。
リビングウィルは、誇りをもって人生の最期を迎えるために、医療やケアに関して自分がしてほしいこと、してほしくないことなどを明記するもので、尊厳死にもつながります。
尊厳死と安楽死の違いは?
「尊厳死」と「安楽死」は同じように扱われがちですが、それらの意味は大きく異なります。
尊厳死は、ご自身が事前に残した意思(リビングウィル)に基づき、回復の見込みがない人生の最終段階を迎えた際に、人工呼吸器や胃ろうなど生命維持治療を差し控え、延命措置を施さず、自然な経過を受け入れることです。
積極的な治療は行いませんが、苦痛を和らげるための緩和ケアを施しながら死を迎えます。日本で尊厳死が認められるには、法律や医学界のガイドラインの一定の条件を満たす必要があります。
一方の安楽死は、回復の見込みがなく苦痛に襲われている状態の人に対して、ご自身の意思に基づき、薬物の投与など苦痛の少ない方法で人為的に死に至らしめることをいいます。欧米の一部の国、州では、ご自身の意思を基に行われていますが、現在の日本では一般的に認められていません。
2.リビングウィルの必要性~意思表示が重要~

なぜ、今、リビングウィルが必要とされているのでしょうか。それは、終末期の医療に対するご自身の考えや要望をご家族、そして医療やケアに携わる方に知ってもらうことで、自分らしく人生の最期を迎えることができるからです。
人工呼吸器や胃ろうの措置は、一度始めれば簡単に中止することができない延命治療であるため、慎重な判断が必要だといわれています。しかし、ご自身の意思表示がされていなければ、仮に本人が望んでいなかったとしても、ご家族の望みで延命措置が行われるかもしれません。その結果、延命措置で本人の意向と異なる治療が続くと考える人がいるのも事実です。
このように、将来、意思疎通ができない状態になった場合に備え、ご自身の意思を確実に伝える手段として、事前に示しておくリビングウィルが重要となります。
日本では、終末期医療に関する事前の意思表示は、まだ十分に広まっているとはいえません。厚生労働省が2023 令和5年に公表した調査でも、人生の最終段階における医療やケアについて、あらかじめ話し合いや意思表示を行っている人は、ごく一部にとどまっていることが示されています。
ご自身が将来、意思疎通ができない身体になり、かつ回復の見込みがない状態になったとき、自分の意思表示の手段としては、事前に示しておいたリビングウィルが大切になります。
3.ACP(人生会議)とリビングウィルの関係
終末期の医療やケアについて意思表示をするうえで、近年重視されている考え方が「ACP(人生会議)」です。リビングウィルは、こうした話し合いの結果を文書として残す手段のひとつであり、両者は切り離して考えるものではありません。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、日本では「人生会議」とも呼ばれ、将来の医療やケアについて、ご自身・ご家族・医療関係者が事前に話し合い、意思を共有しておく取り組みです。
リビングウィルが、ご自身の意思を文書として残すものであるのに対し、ACPは話し合いを重ねるプロセスそのものを重視する点に特徴があります。あらかじめご家族と考えを共有し、その内容をリビングウィルとして形にしておくことで、万一意思表示が難しくなった場合でも、ご自身の希望が医療やケアの判断に反映されやすくなります。
リビングウィルは、ACPの一環として活用することで、より意味のある意思表示になるといえるでしょう。
3.リビングウィルとエンディングノート・遺言書の違い

リビングウィルと似たものに「エンディングノート」や「遺言書」があります。ここではそれぞれの意味についてご紹介します。
書き方を知りたい方は、次章「リビングウィルに書く内容」へお進みください。
エンディングノートとは
リビングウィルと混同されやすいもののひとつが、エンディングノートです。エンディングノートとは、ご自身の情報や考えを書き留めておくものです。
何を書くかは決められてはいませんが、エンディングノートの大切な目的は、自分の逝去後、ご家族がしなければならない各種手続きをスムーズに行ってもらうことです。そのために必要な自分の情報を書き留めておきましょう。
エンディングノートの意味や書き方については、「エンディングノートの書き方」の記事で詳しく解説しています。
また、花葬儀では、「エンディングノートのサンプル」をご紹介しています。
遺言書とは
リビングウィルと目的が異なるものとして、遺言書があります。遺言書は、ご自身の死後のために、主に財産の贈与や処分について自分の意思を示した文書のことです。遺言書は、要件を満たせば法的に有効な文書だと認められるため、相続時のトラブル防止にはもっとも効果的です。
遺言書の種類や詳しい作成方法や書き方については、「遺言書の作成方法」の記事が参考になります。
リビングウィルとの違いは?法的効力についてはある?
リビングウィルは、人生の終末期を迎えるための意思を示す文書です。一方、エンディングノートはより広義なもので、記入内容に自由度が高いことが特徴です。現行制度上は、エンディングノートにも、リビングウィルにも、法的効力はありません。
また、リビングウィルは、終末期の介護やケアについての意思を書き示したものであるのに対し、遺言書は相続に関する意思を書き示すものです。法的効力を発生させて明示することを目的としている遺言書は、基準を満たしていれば公文書として扱われるため、遺言者の意思の証拠価値が高い文書といえます。
5.リビングウィルに書く内容(記載項目)

ここでは、リビングウィルに書くべき内容についてご紹介いたします。
延命治療と緩和ケアの意思表示
リビングウィルには主に、延命治療(人工呼吸器、蘇生術、中心静脈栄養、経管栄養など)の希望や、苦痛を和らげるための緩和ケアの希望の有無について自分の意思を書き示します。
すべての延命措置について希望する、希望しない、で内容を統一するのもひとつの方法ですが、ケースに応じた治療内容の希望を具体的に記してもかまいません。
ご自身の状態を予想し事前指示するのは難しいことですが、いざというときに、ご家族に心理的な負担をかけることを避けるためにも、ご自身の事前の意思表示が重要なのです。
延命治療と緩和ケア以外の終末期医療に関する表示
リビングウィルは終末期の延命治療や緩和に関することを書き示すのが一般的です。しかし、現代の終末期医療の現場では、科学的根拠に基づいた医療だけではなく、患者の生きてきた背景、社会的立場、病気についての考え方などを、物語のように語ってもらいベストな治療方法を考える医療「NBM(Narrative Based Medicine/ナラティブ・ベイスド・メディスン)」の大切さが説かれています。
これは、患者と医療従事者がよりよい関係性を作り、双方の満足度を高める治療を行うためのものです。ご自身の考えや想いを、一人の人間の物語としてリビングウィルに表明しておくことで、よりご自身の意思が尊重され、尊厳の保たれた治療やケアを受けられる可能性が高まるでしょう。
6.リビングウィルの書き方と作成手順

日本にはリビングウィルに関する法律の定めはないので、基本的に書き方は自由です。しかし、リビングウィルとしての目的を果たす文書になるように、作成手順と書き方についてご紹介します。
作成手順
リビングウィルを作成するにあたり、下記の手順を参考に進めましょう。
- 1.リビングウィルに記載する内容を決める。
- 2.テンプレートや例文を参考にリビングウィルを記載する。
- 3.日付と署名は自筆し、押印する。
- 4.複数枚の控えを用意し、ご家族や友人など身近な信頼できる人に渡しておく。
- 5.自分で保管する分は保険証と一緒に保管する。
- 6.時期を見て内容を見直す。
書き方
リビングウィルを書くときは、作成日と署名の箇所は必ず自筆で書きましょう。それ以外の本文については、自筆でもパソコンで作成しても、どちらでも問題ありません。
書き方のルールはありませんが、誰が見ても明確に理解できるような文章で、ご自身の気持ちを書き記しましょう。箇条書きでもかまいません。
7.リビングウィルの例文(テンプレート)
自分でリビングウィルを書く場合の例文の一例をご紹介します。適宜、ご自身の希望内容や想いを盛り込み、アレンジしてご利用ください。
「リビングウィル-終末期医療における事前指示書」
この指示書は、私の精神が健全であるときに、自分自身の終末期医療およびケアについて、私の考えを書き記したもので、私の終末期に関わってくださる医療関係者、家族および、縁者に対し表明するためのものです。私の精神能力が健全な状態であるときに、私自身が破棄するか、または撤回する文書を作成しない限り有効とします。
- ・私の傷病が現代の医学では回復の見込みなく、死期が迫っていると診断された場合には、ただ単に死期を引き延ばすためだけの延命措置は希望しません。しかし、私の苦痛を和らげるための緩和処置は行ってください。緩和措置のための麻薬や鎮静剤などの副作用により死期が早まったとしても構いません。
- ・私が回復不能な遷延性意識障害(永続的植物状態)に陥ったとき、生命維持措置は行わないでください。
- ・私自身で水も飲めず、食べ物も食べられない状態になったときには、点滴や経鼻胃管、胃ろうなどを施した延命措置はしないでください。
- ・私は、脳死後および心臓が停止した死後いずれでも、移植のために臓器を提供します。
以上
私は、これまでいくつもの病を乗り越えてきましたが、自分では満足する幸せな人生を過ごしました。終末期においては、できる限り穏やかに自然な死を迎えたいと願っています。
今後、医療が進化し、この指示書の内容が不適切とされる場合において私が自己決定できない状況にある場合には、〇〇〇〇を、私の治療に関する決断を行う代理人として指名します。
私のこの意思を尊重してくださった医療関係者および、家族、友人には深く感謝申し上げるとともに、私の要望に従ってくださった行為のすべての責任は私自身にあることを附記します。私、本人と家族代表の署名を添えて、この指示書が尊重されることを要望します。
【本人】
令和 〇年 〇月 〇日
氏名 〇〇 〇〇 印
住所
【家族代表】
氏名 〇〇 〇〇 印
住所
公開されている表明書を使用する
リビングウィルをどのように作成すればよいか、不安がある場合には、インターネット等で公開されている表明書を使用するとよいでしょう。
例えば、日本国内では、「公益財団法人 日本尊厳死協会」をはじめ、医療機関や医師会などが、リビングウィルの必要性をうたい、それぞれテンプレートや例文などを公開しています。ダウンロードしてそのまま使用する、もしくはそれをもとにご自身で希望に合うようにアレンジしてもよいでしょう。
8.リビングウィル作成時の注意点(トラブル防止)

リビングウィルを作成する際は、いくつかの気をつけるべきポイントがあります。
ここではリビングウィル作成時の注意点についてご紹介します。
リビングウィル作成には意思能力が必要
リビングウィルを作成するには、意思能力(有効に自分の意思表示をするための精神的能力)が必要です。高齢の方に限らず、若い方であっても、突然の事故や体調の急変が起こる可能性は否定できません。また、ご自身が気づかないうちに、少しずつ認知機能が低下していくことも考えられます。
いつご自身に終末期が訪れるのか予測がつくものではないので、自分の意思で自分らしい終末期を迎えたい方は、物事を判断する意思能力が十分な今のうちに、リビングウィルを作成しておくことをおすすめします。
リビングウィルは明確に記載する
ご自身の終末期に受ける医療やケアについてのご自身の意思を明確にしておくことが、リビングウィルの一番の目的です。
そのため、ご自身で補足説明ができない状態にあるときに、記載されている文章だけで意思が伝わるように書く必要があります。あいまいな表現で書いてしまうと誤解を与える可能性があるため、できる限り具体的にわかりやすい表現で記述します。
また、本人が判断できない状態になった場合には、本人の代わりにご家族が医療やケアについての判断を求められることになります。
本人の意思が明確に記されたリビングウィルがあれば、このようなときにご家族が治療方針について判断する際のひとつの根拠となり、精神的な負担を軽減するための手段となるでしょう。
リビングウィルの内容をご家族に伝え理解を得る
リビングウィルを作成する際には、事前にご家族に対し、ご自身の医療やケアについての意思を伝え、全員から理解を得ておきましょう。
リビングウィルは、法的効力があるものではないので、ご自身だけの考えを示しておいても、必ずしもその通りに事が進むとは限りません。ご家族の理解を得られていないと、せっかく書き記した内容が意味をなさず、希望通りに進まない可能性もあるでしょう。また、家族間で意見が合わずに揉めてしまうこともあるかもしれません。
そのようなトラブルを防ぐためにも、ご家族には事前にご自身の希望を丁寧に伝え、話し合い、理解を得てリビングウィルに同意の署名捺印をもらっておくことが大切です。
かかりつけ医、担当医にリビングウィルがあることを伝えておく
リビングウィルに、すべての医療行為やケアに関する指示を書き示しておくことは不可能です。だからこそ、かかりつけ医や担当医と十分にコミュニケーションをとり、ご自身の状態をしっかりと把握しておくと、ご自身の状態に則した内容で書くことができます。
また、かかりつけ医や担当医には、リビングウィルを用意していることを伝えておきましょう。いざ、そのときがきたときにスムーズに事が進みます。
1~2年おきにリビングウィルの内容を見直す
リビングウィルは、一度書いた後でも何度でも書き直せます。ご自身の身体が健康なときと、病状が進行したときとでは、死に対しての考え方が変わることもあります。また、ご家族の状況や環境により、気持ちに変化が起こる可能性もあります。そのようなときには、内容を書き直してもよいのです。
ただし、新たなリビングウィルを作成した際には、混乱を避けるためにも、古い文書は処分し、ご家族や友人に渡した分やコピーも忘れずに破棄することが大切です。
また、過去にリビングウィルを公正証書として作成した場合には、それを無効とする手続きも必要です。
リビングウィルの保管場所に注意する
リビングウィルは、なるべくわかりやすい場所に保管します。保険証など医療関係書類と一緒に保管しておくと、万が一のときに、ご家族や近しい方もすぐにわかるのでおすすめです。また、さらに大事をとって、複数枚コピーを作り、ご家族や親しい友人に渡しておくと、あらかじめ自分の意思も伝わるので安心です。
「公益財団法人 日本尊厳死協会」では、会員登録をした方のリビングウィルを協会で保管してくれます。ただし、この場合でも、コピーをご家族や親しい友人にあずかってもらうように推奨しています。
9.リビングウィルの問題点・デメリットと備え方

リビングウィルは、よいことばかりではありません。次のような問題点も挙げられます。リビングウィルの事前指示は、将来のご自身の病状と経過が、ご自身の予想と一致したときには有意義なものとなります。しかし、予想が外れた場合には、状況に対して不適切な指示となってしまうため、問題点として認識しておいたほうがよいでしょう。
例えば、ご自身がリビングウィルを作成したときには回復の見込みがないとされていた病でも、医療技術の進化により治る病になる、という可能性もゼロではありません。その時点でご自身の意思確認ができれば書き直すことで解決しますが、意思確認ができない状態であるときには、古い情報で書かれたリビングウィルしか意思を示すものがなく、その決定は適切とはいえません。
このように、あらゆる事態を想定して抜けのない指示をするということは非常に困難です。そのため、あらゆる事態に備え、ご自身の意思を汲んで判断を委ねる方を想定し、考えを共有しておくことをおすすめします。
10.リビングウィルに関するQ&A
A.リビングウィルは高齢になってから作成するものと思われがちですが、実際には年齢に明確な決まりはありません。
病気や事故は年齢に関係なく起こる可能性があり、突然意思表示ができなくなるケースもあります。心身ともに健康で、冷静に判断できるうちにリビングウィルを作成しておくことで、将来の医療やケアについてご自身の考えを整理できます。
A.日本では、リビングウィルに法的な強制力はありません。そのため、必ずしも記載内容どおりの医療行為が行われるとは限りません。
ただし、ご自身の意思を示す重要な資料として、医療やケアの方針を検討する際の判断材料になります。ご家族や医療関係者と事前に内容を共有しておくことで、リビングウィルの意図が理解されやすくなり、ご自身の希望が尊重される可能性は高まります。
A.一人で作成すること自体は可能ですが、内容を誰にも伝えずに保管していると、いざというときに活用されない恐れがあります。
特に、判断を求められる立場になるご家族には、事前に内容を説明し、考えを共有しておくことが重要です。話し合いを通じて理解を得ておくことで、リビングウィルがご自身の意思として尊重されやすくなり、ご家族間の混乱や迷いを防ぐことにもつながります。
11.元気なうちにリビングウィルで意思表示を

現代の日本は、世界的に見てもトップクラスの長寿国であり、厚生労働省の簡易生命表によると、平均寿命は男女ともに80歳を超える水準にあります。一方で、健康寿命との間には差があり、必ずしも心身ともに健やかな状態のまま最期を迎えられるとは限りません。
自分は終末期をどのような状態で迎えるのか、だれも予想がつきません。だからこそ、そのときに備え、健康で意思能力が十分な今、リビングウィルで意思表示をしておくことが重要です。ご家族や友人と、終末期について話し合うところから始めてみてはいかがでしょうか。
花葬儀では、事前相談を承っております。
もしもの時に慌てずに済むように、適切なアドバイスをいたします。お気軽にご相談ください。











