枕飾りとは?準備の方法や宗教ごとの飾り方、マナーを解説!
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
大切な方が亡くなってから通夜までの間に用意するものに、「枕飾り」というものがあります。最近では病院で死亡を確認後、直接葬祭場までご遺体を搬送するケースが増え、自宅で枕飾りを行う機会が減ってきたこともあり、枕飾りの由来や意味を知らない方が多くなっています。
そこで今回は、枕飾りの役割、準備に必要なアイテムや飾り方、マナーについてご紹介します。いざという時に慌てないためにも、ぜひご一読ください。
【もくじ】
1.枕飾りとは?
一部の場合を除き、基本的に葬儀では「祭壇」が設けられます。
仏教における祭壇は、設置するタイミングにより大きく3つの種類に分けられます。
1.枕飾り(仮祭壇)/逝去後~通夜前に飾る祭壇
2.本祭壇/通夜・葬儀時に飾る祭壇
3.後祭壇(後飾り)/火葬後に飾る祭壇
このうち、逝去後から通夜前までの間に置く祭壇を「枕飾り(仮祭壇)」といいます。北枕に寝かせた故人様の枕元に、仏具(ろうそく立てや香炉、花瓶など)とお供え物を用意し、魂がこの世にすがることなく成仏できるよう供養するためのものです。
また、通夜・葬儀の時に設置される大きな祭壇を「本祭壇」、火葬後の遺骨を一時的に安置するための祭壇を「後祭壇(後飾り)」といいます。それぞれ意味合いも置くものも違うため、混同しないように気をつけましょう。
2.枕飾りはいつ飾るもの?
枕飾りが故人様の枕元に置かれる期間は、逝去後から通夜が始まるまでの短い間(安置所を利用する場合は通夜会場に搬送されるまで)です。亡くなった方が、自宅や葬儀会社が保有する安置所などに安置されたタイミングで、基本的には葬儀社が飾ります。
また、片づけるタイミングは、通夜の準備を始める時や、すべての儀式が終わり、後祭壇(後飾り)を設置する時など葬儀社によって異なります。
枕飾りは本祭壇とは違い、半畳~1畳ほどのコンパクトな祭壇であるため、仮にご自身で設置・回収をすることになってもそれほど時間はかからないでしょう。
枕飾りに必要なものについては、後ほど解説します。
3.枕飾りの役割は?
枕飾りの役割は2つあります。
一つ目は、訃報を聞き弔問に訪れた人が、お焼香や礼拝を行うための簡易祭壇としての役割です。お通夜や葬儀に参列できない方でも、枕飾りを本祭壇に見立てて、礼拝を行うことができます。
二つ目は、故人様の魂が、迷わずあの世へと成仏できるようにする役割です。故人様が生前持っていた欲を浄化し、魂がこの世に未練を残してしがみつかないよう、供養のために飾られます。
4.枕飾りの準備はどうしたらよい?
こちらでは、枕飾りを準備する際の方法についてご紹介します。
枕飾りをする際の自宅での安置方法 (仏教の場合)
自宅でご遺体を安置する際の方法を、仏教のケースを例にご紹介します。
1.仏間や居間に布団を用意します。布団は敷布団、シーツ、掛布団の順に敷きます。
2.故人様の頭が北を向くように寝かせ(北枕)、顔に白い布をかけます。事情により北枕に安置できない時は、西を向くように寝かせます。ちなみに、神道では北枕、もしくは東枕にしますが、キリスト教では特に決まりはありません。
3.目立たないところにドライアイスを敷いた後、数珠を持たせた両手を、胸の上で合掌するように組みます。
4.枕元、あるいは掛布団の上に、邪気をはらうための守り刀を置きます。守り刀は、小刀やカミソリ、はさみなどを用いることがありますが、現在では摸造刀を使用するのが一般的です。
神道でも仏教と同様に置きますが、仏教の宗派の一つである浄土真宗では、この守り刀は必要としていません。
枕飾りの準備は葬儀社に依頼
最近では、枕飾りの準備は葬儀社に依頼するのが一般的です。
安置から枕飾りの準備、設置までを葬儀社側が行うため、基本的に喪主様やご遺族が何かを準備する必要はありません。
ただし、葬儀社のプラン内容やご遺族のご意向などによっては、ご遺族がお供え物の飲食物(仏飯など)やお花を用意することもあります。
用意された枕飾りの多くはレンタル品ですので、取り扱いには十分注意しましょう。
5.【宗教別】枕飾りに必要なものは?配置は?
枕飾りは宗教や宗派、地域によって必要なものが異なります。ここでは、枕飾りに必要なもの・配置について宗教(一部宗派も含む)別に解説します。
仏教
仏教の枕飾りに必要なもの、配置は以下の通りです。
必要なもの
1 花瓶
白色無地の花瓶に、樒(しきみ)を1本挿します。この時、花瓶には水を入れません。樒とは日本に自生する広葉樹の一種で、果実に毒があります。この毒が悪霊をはらうとされています。樒が用意できない場合は菊、ユリ、水仙で代用が可能です。
2 枕飯
故人様が生前使っていたお茶碗にご飯を高く丸く盛り、頂上に箸を2本突き立てます。また、地域や安置した場所によっては、故人様がこの世に未練を残すことのないよう茶碗を割るしきたり「茶碗割り」が行われることもあります。
3 水
湯呑もしくは茶碗、コップのいずれかに注ぎます。水道水でも問題はありません。
4 ろうそく立て(燭台)
白いろうそく立てに、白いろうそくを立てたものを2つ用意します。
5 枕団子
亡くなった方の死出の旅路における食事としてお供えする団子を「枕団子」といいます。上新粉をお湯で練ったものを小さく丸め、茹でる、もしくは蒸して作ります。一般的に枕飾りでお供えする枕団子の数は6個といわれていますが、地域によって異なる場合もあります。
6 線香
隣に置いた香炉に挿すために、白色無地の線香立てと線香を用意します。
7 香炉
火のついた線香を真ん中に1本立てます。
8 鈴(りん)
故人様に手を合わせて礼拝する際に鳴らす鈴(りん)は、下に小さな座布団を敷き、鈴棒(りんぼう)と一緒に配置します。
香炉、ろうそく立て、花瓶は「三具足(みつぐそく)」と呼ばれ、祭壇を作る時に欠かせない道具です。
配置
台を奥と手前に分けた時、左奥から順に①~④を、左手前から順に⑤~⑧を置きます。
ただし、浄土真宗の場合は、飲食物(枕団子、枕飯、水)のお供えは不要(お供えしてはいけないということではなく、必要がないという意味)としているため、配置が異なります。中央に香炉を置き、右側にろうそく立て、左側に樒(しきみ)を立てた花瓶を置きます。
キリスト教
キリスト教には、枕飾りの習慣がありません。しかし、仏教になじみの深い日本で広まっていく中で、仏教と同じように枕飾りを設置するようになったといわれています。
必要なもの
白か黒の布をかけた台の上に以下の物を置きます。
1 ろうそく立て
2 花瓶(ユリなどの白い花)
3 聖油(カトリックのみ)
4 十字架
5 聖書
6 パン
7 水
配置
①~②を左奥から順に、③~⑦を左手前から順に置きます。
神道
神道においても、特有の飾り方があります。
必要なもの
「八足机(はっそくのつくえ)」と呼ばれる白木台を用意します。神前に物を供える時に使う机で、名前の通りS字型の足が8本ついています。
「八足机(はっそくのつくえ)」に置くものは以下の通りです。
1 榊(さかき)
神道において欠かせない植物です。榊は専用の榊立てに挿します。
2 御霊代(みたましろ)
仏教における位牌です。
3 ろうそく立て(燭台)
白いろうそくを立てます。
4 三方
神様にお供え物を置くための台を「三方」といいます。この三方の上に洗米、塩、水、お神酒を載せます。
神道では、この他にも故人様が生前お好きだった飲食物を置くことが可能です。
配置
中央奥に御霊代、その両脇に榊立てを置きます。
中央手前に三方、その両脇にろうそく立てを置きます。
6.枕飾りの費用は?
枕飾りをご自身で用意する場合は、それぞれの物品のグレードで金額が大きく変わりますが、1~3万円ほどが相場だといわれています。仮にトータルで安く入手できたとしても、枕飾りに使用する品は多く、また、聞き慣れないものもあるため、慌ただしい中での用意は大変です。
葬儀社に依頼すると、必要なものがプランの中に組み込まれているので、準備、設置、回収を全て行ってくれます。時間的余裕が増え、ご遺族側の負担が減るメリットがあります。
花葬儀では、枕飾り一式と、後飾り檀を含むベーシックプラン(一般葬/家族葬/1日葬/火葬式/大型葬)をご用意しております。
ご不明な点は、24時間365日、いつでもお気軽にお問い合せください。
https://www.hana-sougi.com/plan/kazokuso/
7.枕飾りのマナーとルール
枕飾りでは、気を付けなければならないマナーとルールがあります。故人様の魂が安らかに成仏できるよう、しっかりと心得ておきましょう。
線香を絶やさない
線香を絶やさないことは、枕飾りのマナーの一つです。線香の煙は、他の霊から故人様の魂を守る役割があるといわれています。また、ドライアイスがなかった時代では、死臭を抑える目的でも、絶えずつけられていました。
一般的な線香はすぐに燃焼してしまうため、夜通し番をしなければならない時には「巻線香」がおすすめです。蚊取り線香のような渦巻き状になっており、一度の火付けで10時間ほど燃焼し続けます。
ろうそくの火を絶やさない
線香と同じように、絶やしてはならないのがろうそくの火です。ろうそくの火は、故人様の魂が迷わないように導く役割があると考えられています。納棺の儀式が終わるまでは消えないように注意します。
火を絶やさないようにするためのろうそくに「ブロンマ」というものがあります。ブロンマは蓮の花の形をしており、一般的なろうそくに比べて太く丈が短い寸胴型(コップ型)です。一度火をつけると16時間ほど燃焼し続け、転倒しにくく、火災の心配も減ります。
また、万が一、線香とろうそくの火が消えてしまっても、付け直せばよいだけで、故人様やご遺族側に何か悪いことが起こるというわけではありません。
「巻線香」や「ブロンマ」を使いながら、静かに、故人様の思い出をご家族と語り合いつつ、通夜までの時間を過ごしましょう。
茶碗のご飯は高く盛る
枕飾りにおいて、茶碗にご飯を盛り、中央に箸を突き立てたものを「枕飯」といいます。枕飯は、故人様が現世を振り返った時、高く盛られたご飯に視界を遮られ、現世への未練を残さないようにするためのものといわれています。
そのため、ご飯は丸く、高くなるように盛りましょう。茶碗を2つ用意し、それぞれに詰めた後、合わせるようにすると美しく盛ることができます。
枕団子を6つ用意する
故人様が死出の旅へ向かう時に携帯する食べ物として、枕団子が用意されます。仏教の世界では、人は死後、六道と呼ばれる6つの世界(地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道)を巡り、いずれかの世界で生まれ変わるといわれています。
そのため、枕団子は六道に合わせて6個用意することが一般的なマナーとされていますが、地域によっては、11個、13個、49個など、お供えする数が異なります。枕団子をご自身で用意する際は、いくつ必要なのかを事前に確認しておきましょう。
8.枕勤め・枕経とは?
枕飾りを回収する前に僧侶が読経する儀式を「枕勤め(まくらづとめ)」といい、ご親族のみが参加します。
この時に読まれるお経を「枕経(まくらぎょう/まくらきょう)」といいますが、「故人様の枕元で読経すること」を枕経と呼ぶこともあります。
また、枕経は故人様が亡くなったあと最初にあげられるお経ですが、本来、臨終を迎えつつある方の枕元で上げるお経だったことから「臨終勤行(りんじゅうごんぎょう)」とも呼ばれます。
枕勤め(枕教)は基本的に自宅で行われますが、困難な場合は葬儀場で行うことも可能です。近年では場所・時間的制約などから、枕勤め(枕経)を省略するケースも増えています。
なお、浄土真宗においては、亡くなった人はすぐに極楽浄土に召されるという考え方のため、ご遺体に対してではなくご本尊に対して読経します。そのため、浄土真宗においては、枕教ではなく臨終勤行と呼びます。
9.枕飾りのQ&A
最後に、枕飾りについての疑問をQ&A形式で解説します。
A.基本的に交換は不要ですが、通夜まで日数がある場合は毎日変えてもよいでしょう。
A.一般的には、「山盛りのご飯に刺した箸が、あの世とこの世をつなぐ『橋渡し』という意味を持つため」といわれています。
他にも、「箸を立てることでより枕飯を高くし、故人様が現世を振り返った時に視界を遮りやすくするため」「まっすぐ天に昇ってほしいと願いの表れ」「故人様に召し上がっていただくものだと分かりやすくするため」など諸説あります。
A. 一本花は「このような不幸は一度きりでいい」という思いを込めて、邪をはらうとされる樒(しきみ)を枕飾りで用意するお供えのことです。一方、枕花は、葬儀よりも前に、弔意の表れとして故人様に贈る花のお供えのことをいいます。
枕花は訃報を受けて訪れた、ご親族または故人様と縁の深かった方から贈られることが多く、一本花とは違い、使われるお花の種類もさまざまです。
A.もちろん可能です。
花葬儀では、葬儀場に関わらず、ご自宅での安置の場合にも枕飾りをご用意することができます。こちらのサイトからご確認いただき、ご不明な点はいつでもお気軽にお問い合せください。
【葬儀費用とプラン】
https://www.hana-sougi.com/plan/
A.一般的には告別式終了後に半紙に包み、出棺前の棺に入れ、ご遺体と一緒に火葬します。途中で枕飯と枕団子を新しいものに交換した場合も同様です。出棺まで半紙に包んで保存しておきましょう。
枕飯と枕団子を入れていた容器は、一般的に割って処分します。故人様の魂がこの世に未練を残したまま、さまよわないようにするためといわれています。
10.魂が迷わず成仏できるよう願う「枕飾り」が持つ重要な意味とは?
死後、魂が迷わず天に向かうよう、通夜までの間に故人様の枕元に置く祭壇が枕飾りです。
この枕飾りが道しるべとなり、故人様はあの世へと導かれるといわれています。
通夜までの限られた時間に設置する枕飾りは、故人様を供養するためのものであるのと同時に、ご遺族の心を癒すものでもあり、故人様の枕元でこれまでの感謝の思いや偲ぶ気持ちを伝えるためにも必要なものといえます。
また、ご遺族やご親族の皆様がこの枕飾りのお供え物一つ一つに込められた意味を知ることにより、故人様が成仏できることを祈りつつ、安心して送り出すことができるのではないでしょうか。
枕飾り以外の祭壇や儀式などにもさまざまなしきたりやマナーがあり、大切な意味が込められています。
花葬儀では、葬儀に関する基礎知識について詳しくご紹介しております。
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