無縁仏とは?身寄りがない、お墓の管理者がいない時の供養方法や対策は?
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- 【 お墓の基礎知識 】
無縁仏(むえんぼとけ)になったらどうなってしまうのだろうか。
将来、自分が亡くなったときの遺骨を埋葬する人や、お墓を供養する人がいなくなる可能性がある方の中には、このように不安に思っている方もいらっしゃることでしょう。
死後とはいえ、自分の遺骨がどのようになってしまうのかは気になるものです。また、遺骨が収められた場所については、「永年に渡って居心地よくありたい」と願うものではないでしょうか。
そこで今回は無縁仏についてご紹介します。「無縁仏とは」「無縁仏になったらどうなるのか」「無縁仏にならないためには」などを詳しく解説いたしますので、ぜひこの機会にご一読ください。
【もくじ】
1.無縁仏とは?
無縁仏とは、なんらかの事情で供養をする人がいなくなってしまった故人様や、管理されなくなったお墓のことを指します。
お墓の中には、周りに草が伸びていたり、墓石がひどく汚れていたりと、長い間手入れをされた形跡のないお墓が存在します。そのまま放置され、お墓の管理費が支払われなくなると、一定期間を経た後に無縁仏と判断され撤去されてしまうのです。
近年では少子化や、人間関係がより希薄化したなどの理由から、無縁仏の数が増えているといえるでしょう。
2.無縁仏になる2つのケースとは?
無縁仏になるケースは主に2つあります。
遺体の引き取り手がいないケース
引き取る方がいないご遺体は無縁仏として扱われます。引き取り手のいないケースは、さらに4つに分けられます。
孤独死(無縁死)
親族や縁者がおらず、孤独に死亡したケースです。近年では少子高齢化や核家族化が進み、孤独死をする人が増えています。東京都だけでも単身世帯の孤独死は年間5,000件越えと非常に多く、数値は今後も増加する傾向にあるようです。
親族などがいなくても、生前に納骨先を自分で手配していれば無縁仏になることは避けられますが、その手続きをしていないと死後に入るお墓が無く、無縁仏となってしまいます。
※「無縁仏にならないための手続き」については、後述します。
自然災害による身元不明
大規模な自然災害の発生により、身元が識別できなくなってしまった遺体も無縁仏となることがあります。
その他の身元不明
痴呆による徘徊先や、家出先で死亡した際、家族が捜索願を出していない場合には、身元が分からずに無縁仏となるケースもあります。
引き取りを拒否された
家族や縁者がいても、遺体の引き取りを拒否されてしまった場合、無縁仏として扱われます。
お墓の管理者がいなくなったケース
家単位で所持し代々受け継いでいくお墓ですが、「後継ぎがいない」「お墓を継ぐことを拒否された」などの理由で管理者がいなくなってしまったお墓は放置され、荒れ果ててしまいます。
管理者のいなくなったお墓は無縁墓(むえんぼ)とも呼ばれ、かつての家制度が薄れてきた近年では、無縁墓が増えているそうです。
お墓の維持には、お墓を継いだ人が墓地所有者に対し管理費用を払わなければなりませんが、なんらかの事情で長期間管理費用の未払いが続いた場合も、行政手続きによって無縁仏となります。
3.無縁仏が増加している理由は?
日本経済新聞の記事によると(※1)、2018年度に全国の政令都市が調査した無縁仏の数は8,000柱(※2)を超え、2013年度の調査時よりも1.4倍に伸びていました。同期間における「全国の死亡者数増加割合」よりも無縁仏の数の方が上回る結果となったとの記載もあります。
また、同記事によると、遺体の引き取りを遺族が拒否したケースもあったとのことです。子供がいない高齢者の一人暮らしが増えたことだけでなく、「子供がいても供養をしてもらえない」という希薄な親子関係・親族関係が増加していることも、無縁仏が増加している原因といえるでしょう。
(※1)出典:「増える無縁仏、年8000柱超 政令市で5年前の1.4倍に」
URL:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50124460U9A920C1CR0000/
掲載元:2019年9月24日付 日本経済新聞掲載 (2023年9月26日閲覧)
(※2)ご遺骨は、1柱(いっちゅう)、2柱(にちゅう)と数えます。
4.無縁仏になるとどうなるの?
供養してくれる人がいない無縁仏はどうなるのでしょうか?
無縁仏としての手続きの流れと供養の内容について、解説します。
遺体の引き取り手がない場合は?
身元が不明で引き取り手のいない遺体は、法律上「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」と呼ばれ、法律により、死亡した場所の自治体が葬儀・埋葬をすることが定められています。その他の引き取り手のいない遺体も、同様です。
葬儀の内容はとても簡素なもので、火葬をし、遺骨を無縁墓地に埋葬するのみです。お墓の中には、無縁仏となった他の遺骨も一緒に収められており、行政から委託された霊園や寺院によって管理されます。
お墓の管理者がいなくなった場合は?
埋葬された後、お墓を管理してくれる人がいなくなってしまった場合は、墓地管理者の判断でお墓を撤去し、無縁墓などに遺骨を移すことが可能となりました。
平成11年に改訂された「墓地、埋葬などに関する法律施行規則」によると、墓地管理者が行う手続きの流れは以下の通りです。
1. 墓地管理者が、無縁墓の情報を官報に掲載し、無縁墓の見やすいところに立札を掲示して墓地所有者が名乗り出るのを待つ
2. 1年間待っても現れなかった場合、遺骨をお墓から取り出し、無縁仏を祀るところへ安置する
3. お墓が整理(撤去)される
お墓から取り出された遺骨は、合祀(ごうし)されることが一般的です。合祀とは、骨壺から取り出した遺骨を、血縁関係のない他人の遺骨と共に合祀墓に埋葬することです。
※合祀墓の詳細は、「合祀墓の埋葬方法・費用は?メリット・デメリットも解説します」の記事を参考になさってください。
合祀した無縁仏(遺骨)をあとで引き取ることは可能?
無縁仏となり合祀した方の遺骨は、のちに管理者や親族が名乗り出ても引き取ることはできません。一度納骨すると、他の方の遺骨と見分けがつかなくなってしまうからです。
また、近年では無縁仏の増加により、合祀をするスペースが少なくなってきているため、遺骨の一部のみを合祀したり、粉砕して埋葬したりすることもあるようです。
5.無縁仏の供養にかかる費用は誰が負担するの?
無縁仏の管理や供養は、行政(役所)が行います。具体的な内容は次の通りです。
身寄りのない人が亡くなった場合
身寄りのない人が亡くなった場合、行政が管理する霊園、もしくは提携している寺院などに埋葬され、供養や遺骨の管理にかかる費用は行政が負担します。
負担する内容は主に以下の2つです。
1. ご遺体の火葬代(搬送・読経など最低限の供養を含む)
2. 遺骨の管理費
火葬にかかる費用は5~10万円、霊園管理者に支払う遺骨の管理費は年間数千円~1万円程度といわれています。
お墓の管理者がいなくなった場合
お墓を持っていた方で祭祀承継者がいなくなった場合、お墓を撤去する必要があるため無縁仏になります。10~30万円ほどが必要となり、無縁仏の合同法要があるとその分の費用も負担します。
6.無縁仏を避けるために事前にできる手段は?
無縁仏になっても最終的に行政が供養してくれますが、だからといってむやみに無縁仏を増やしてもいいわけではありません。
孤独死や家族との離縁、管理されず荒れ果てたお墓など、無縁仏に至るまでの経緯を考えると、「無縁仏にならずに安心してお墓に入っていたい」と考えるかたが多いのではないでしょうか。
そこでこちらでは、無縁仏にならないために事前にできる手段についてご紹介します。自分ひとりで準備するだけでなく誰かのサポートを受けるなど、いくつかの手段を組み合わせると、より安心できるでしょう。
墓じまいをして納骨先(供養方法)を決めておく
「代々継いできたお墓があるけれど、次の管理者がいない」という方には、墓じまいをして納骨先を決めておくという方法があります。
墓じまいとは、今あるお墓を解体・撤去し、墓地の使用権を所有者に返還することで、墓地管理者と自治体に申請して行います。墓じまいにかかる費用の相場は、解体費、供養代、離檀料(※3)など合わせて10~20万円ほどです。
墓じまいをした後の遺骨は、永代供養墓や合祀墓に埋葬したり、散骨したりするなどの方法が選択できますが、その時にかかる費用は選ぶ内容によって大きく異なります。
決して安くはない金額ですが、墓じまいをすれば自分の死後にお墓が放置されることがないため、誰にも迷惑をかけずに済みます。また、管理された場所で穏やかに眠る安心感を確保することができるでしょう。
(※3)離檀料は、お墓が寺墓地で檀家になっている場合に発生する可能性があります。
詳細はお寺に相談することをおすすめします。
永代供養墓の単独墓、もしくは集合墓に入れるよう生前契約をしておく
永代供養墓とは、家族に代わって寺院や霊園などが永代にわたり管理してくれるお墓のことを指し、単独墓(個人墓)、集合墓(墓石などは1つだが、納骨スペースは個々に管理)、合祀墓(共同墓)の3種類があります。
現在お墓がないかたにおいて個人で供養をしてもらいたい場合は、単独墓、もしくは集合墓で生前契約のできる永代供養墓を探すとよいでしょう。ちなみに、「永代」とは永遠という意味ではなく、寺院・霊園が存続するまでの間という意味です。
また、永代供養料の相場は場所と内容によって大きく異なりますが、10~150万円といわれています。最初に永代供養料の支払いを済ませておけば、その後の管理費用はかからないため、縁故者がいない方でも安心して利用することができます。
永代供養墓の合祀墓への納骨を申し込んでおく
お墓へのこだわりが特になく費用も抑えたい方には、永代供養をしてくれる合祀墓への納骨を生前に申し込んでおくという選択肢もあります。ただし、合祀墓の場合は他の遺骨と同じ場所に埋葬されます。
生前契約ができる場所が限られており、競争率が高い傾向にあるため、検討の際は合祀墓以外の永代供養墓の候補も同時に探しておくとよいでしょう。
友人・知人や弁護士などの専門家と死後事務委任契約を交わしておく
生前に「死後事務委任契約」を交わしておくという手段があります。
「死後事務委任契約」とは、死後に必要となる事柄(葬儀・埋葬・行政手続き、各種支払いなど)を、委任することです。委任する相手は友人や知人、弁護士など血縁関係のあるなしに関わらず、どなたでもかまいません。
死後事務委任契約でできること
死後事務委任契約でできることを簡単にご紹介します。
・葬儀や埋葬の手配(墓石建立や永代供養などの選定も含む)
・死亡届提出
・相続人や関係者への訃報連絡
・退職手続き
・賃貸退去手続き
・各種保険の喪失手続き
・その他各種サービスの退会処理
・遺品整理
・各種納税手続き
・その他支払い業務(医療費、介護費、光熱費、家賃など)
死後誰かが必ずやらなければならないことを、ひととおり委任することができますが、生前のうちに委任相手と委任する内容を綿密に話し合っておく必要があります。
契約における注意点
死後事務委任契約は、後々のトラブルを防ぐためにも公正証書によって作成します。公正証書の書き方は、専門家である行政書士や弁護士に依頼しましょう。
死後事務委任契約は遺言とは違うため、財産分与に関することは決めることができません。無縁仏であれば財産を残す相手がいないことのほうが多いでしょうが、もし相続人がいるのであれば、死後事務委任契約書とは別に遺言書を作っておきましょう。
※遺言書作成方法の詳細は、「遺言書の作成方法~効力、書き方、文例もご紹介します~」の記事が参考になります。
自治体のサポート制度を活用する
無縁仏を増やさないために、サポート制度を設けている自治体があります。
・死後に必要となる情報(緊急連絡先、お墓の所在地、遺言書の保管場所や開示する対象者の指定)を登録しておくサービス
・エンディングノートの配布
・自治体が提携する葬儀社との生前契約における仲介や費用の管理
・自治体と葬儀会社とが連携して定期的に独居高齢者の安否確認を行うサービス
亡くなった直後から無縁仏となってしまう実情を改善するために、自治体では上記のようなさまざまなサービスを行っています。
1番のように、自分が入るお墓の所在地や、遺言書の保管場所などを無料で登録できる終活システムを作り、単身者が無縁にならないようにするための活動を行う自治体も増えてきました。
一部を除き無料で利用できるため、ぜひ活用してみましょう。
日頃から周囲とのコミュニケーションを取っておく
周りの人と頻繁にコミュニケーションをとっておくことも、大切なことです。上記に挙げた「永代供養の生前契約」や「専門家との死後事務委任契約」などを行っていない場合、自分のお墓を持っていたとしても、無縁仏になってしまう可能性があります。親戚縁者がいない場合はもちろんのこと、いる場合でも、ごくまれに遺骨の受け取りやその後の供養を拒否されるケースがあるからです。
そのようにならないためにも、親戚縁者とは普段からコミュニケーションを取っておくと、いざというときに、遺骨の受け取りやお墓への埋葬、供養などを依頼できる可能性が高まります。
また、死後のことをお願いできる親しい友人がいる場合は、相談してみてはいかがでしょうか?無縁仏になることを防ぐことに繋がる他、急病で倒れた際の早期発見や、交流による楽しみや生きがいの発見なども多く生まれるでしょう。
7.自分の遺骨を希望する方法で納骨してもらうには?
死後、どのような方法で埋葬されたいかは、人によってさまざまです。代々受け継がれているお墓に入りたい方もいれば、海に散骨してほしいと願う方もいます。
自分の遺骨を希望どおりの方法で納骨してもらうためには、どのようにすればよいのでしょうか?こちらでご紹介します。
遺骨の決定権は誰のもの?
そもそも、遺骨の決定権は誰にあるのでしょうか?
民法897条には、「祭祀財産(さいしざいさん)」に関する記述があります。祭祀財産とは、祖先を祀るために必要な財産の総称のことで、以下の3つを指します。
1. 系譜 :血縁関係を記載した家系図など
2. 祭具 :仏壇、仏像、十字架など、祭祀を行う際に使う道具
3. 墳墓 :遺体や遺骨を埋葬する際に必要な土地や物品
遺骨は祭祀財産に準ずる扱いを受けるため、決定権は祭祀承継者が持っています。祭祀承継者となる人は、血縁関係のあるなしに関わらず、逝去前の故人様が指定することができます。故人様が祭祀承継者を指定していた場合、基本的に祭祀承継者が葬儀や法要に関しても対応することになるため、その点も踏まえて決定することが重要です。
なお、納骨に関する希望は、遺言書に書くことが可能です。しかし法的効力はないため、最終決定は祭祀承継者の判断にゆだねられます。
家族、親族、信頼できる人などに伝えておく
遺言書が法的効力を持つのは財産に関すること、身分関係に関することなどに限られます。前述したように、遺骨についての決定権は祭祀承継者が持っていますが、死後、祭祀承継者を含む家族や親族などでもめることがないように、「自身の遺骨をどうしてほしいのか」を日頃から家族や親族、信頼できる友人などに伝えておきましょう。
お互いの意思と希望をすり合わせておくことで、後々のトラブルを回避することができます。
8.自分から無縁仏を希望することは可能?
さまざまな事情があり、無縁仏になりたいと考える場合、実現は可能なのでしょうか?
自分から無縁仏を選択することは難しい
前述したように、遺体の引き取りを拒否された方や、身元不明の方、供養・管理してくれる人がいなくなった方が無縁仏と呼ばれます。そのため、自分の死後、誰かが供養してくれた場合は無縁仏とは呼ばれません。
死後の供養がどのようになるのかはわからないため、現在無縁ではない方が無縁仏を自ら選択することは難しいでしょう。ただし、「現在あるお墓に入らない」という選択を生前に行うことは可能です。
本家や親族の墓に入りたくない場合は?
さまざまな事情により、本家や親族のお墓に入りたくない場合は、以下の方法があります。
・合祀を選択する
・自分だけの永代供養墓に入る
・海洋散骨や樹木葬などの自然葬を選択する
これらは生前に手続きを行うことができます。祭祀承継者に希望を伝えておくと、希望通りの供養方法を実現できる可能性が高くなるでしょう。
もしも、ご家族の中に反対する方がいらっしゃる場合は、意見を聞きつつご自身の希望を伝え、理解を得られるようコミュニケーションを図ることをおすすめします。
9.無縁仏とは供養してくれる人がいなくなってしまった故人やお墓
引き取り手のいないご遺体、もしくは継承者がおらず管理ができなくなったお墓を無縁仏といいます。近年では少子高齢化や人間関係の希薄化が進み、無縁仏となるケースが増えてきました。
無縁仏にならずに埋葬してもらう方法としては、日ごろから周囲とのコミュニケーションを図ったり、希望する埋葬場所への手続きを生前に行ったり、死後に必要な情報や希望を残したりしておくことがあげられます。しかし、いきなり始めようとしても、どのような場所でどのように手続きをすればよいのか、判断に迷うこともあるでしょう。
そのような疑問を解消するために、花葬儀では事前相談を承っております。
適切なアドバイスをいたしますので、お気軽にご相談ください。