墓誌とは?設置・彫刻に掛かる費用や書き方、書き切れない時の対処法を解説

墓誌とは?設置・彫刻に掛かる費用や書き方、書き切れない時の対処法を解説

墓地や霊園へお墓参りに行くと、墓石の近くに文字が彫刻された墓誌(ぼし)を見かけることがあります。墓誌は、お墓に必ずしもあるとは限らないため、墓誌の意味や、どのようなときに建てるのか、設置する方法について知らない方も多いことでしょう。

そこで今回は、墓誌が必要となるケースや検討する際の注意点、設置方法、新たに設けるときの費用相場などについて詳しく解説します。墓誌の設置を検討している方、すでにある墓誌に戒名を追加して彫りたい方などは、ぜひ、この記事を参考にしてください。

1.墓誌とは?読み方や設置する意味を解説

墓誌とは?読み方や設置する意味を解説

墓誌とはどのようなものなのか、設置する意味もあわせて解説します。

そもそも墓誌とは

墓誌とは、墓地や霊園などで、墓石(墓碑)とは別にその区画内に設置される、埋葬された故人様の情報を彫刻した石板です。一般的に、故人様の名前や没年月日などが刻まれます。

墓誌の呼び方は、宗教・宗派により異なりますが、その役割は同じです。浄土真宗では戒名ではなく法名が授けられるため、「法名碑(ほうみょうひ)」と呼ばれます。他宗派では、「霊標(れいひょう)」「戒名碑(かいみょうひ)」「戒名版(かいみょうばん)」などと呼ばれています。

墓誌を設置する意味

墓誌の設置には、故人様の情報を後世に伝える意味があります。墓誌によってお墓を訪れる人々が、故人様やご先祖様の情報を一目で確認でき、ご家族の歴史やつながりを感じることができます。

2.墓誌は絶対に必要なものではない

墓誌を設けるかどうかは、ご家族の自由な選択に委ねられています。お墓の設備のひとつですので、必要性やお墓のスペースに応じて、設置を決めることができます。

現在の形の墓誌が普及したのは、戦後からです。墓埋法の制定により、それまでは、一人につき一基のお墓を建てていたのが、一家で一基のお墓を建てることが一般的になりました。この変化に伴い、墓石のスペースが不足するケースが増え、墓誌の設置が広まったのです。

3.墓誌の設置がおすすめのケース

墓誌の設置がおすすめのケース

前述のとおり墓誌は、必須ではありません。では、どのようなケースで、墓誌の設置を検討するとよいのでしょうか。

多くの方の名前を記したい

墓誌を設置するケースとして、多くの故人様の名前を記したい場合が挙げられます。特に墓石に刻むスペースが不足した場合、墓誌には片面に8名~10名程度の故人様の情報を刻めるので、埋葬の人数が増えても対応が容易です。1名当たりの情報を彫る金額が墓石に彫るよりも安価ですむ点も、多くの方の名前を刻みたい方には魅力的でしょう。

墓石に彫刻をしたくない

墓石のデザインを保ちたい場合にも墓誌が有効です。墓石に彫刻をするとデザインが損なわれる恐れがあるときは、墓誌に情報を刻むことで墓石の美観を保てます。

また、墓誌は墓石とは違って取り外しができるため、石材店などで彫ることを選択すれば、専用の機械などを使えるので彫りが深くなり仕上がりがきれいです。墓石に彫る場合はお墓での作業となるため、スペースや設備に制約があり、石材店での彫刻にくらべて仕上がりが劣ることがあります。

開眼供養・閉眼供養の回数を抑えたい

墓誌の設置は、開眼供養(かいげんくよう)や閉眼供養(へいげんくよう)の回数を減らすことに貢献します。開眼供養は、お墓を新しくした際などに故人様の魂を入れる儀式で、閉眼供養は、お墓の改葬やリフォームの際などに故人様の魂を抜く儀式です。

供養の対象である墓石に彫刻するときは、故人様の情報を彫る前に閉眼供養を行い、彫り終えたら開眼供養を行う場合もあります。それらの供養は、僧侶を招いて行うため、手間や費用がかかります。しかし供養の対象ではない墓誌に刻むのであれば、供養の儀式を省略でき、費用を抑えられます。

ご先祖様の情報を残したい

墓誌は今を生きるご家族だけでなく、後世の人々にとっても大切な遺産となります。特に、ご家族の歴史を知らない若い世代にとって、墓誌はご家族のルーツや歴史を知るための貴重な情報源となるでしょう。

4.墓誌を設置する位置・向き

墓誌を設置する位置・向き

墓誌を設置する位置に厳密な決まりはありません。お墓全体のバランスを考えて決めることができます。墓石の右側に建てられていることが多いようですが、これは日本の伝統的な「左上位」という考え方にもとづいており、墓石に向かって右側が上座とされるためです。

墓誌の向きにも特別なルールはありませんが、通常は故人様の名前や戒名をしっかりと見ながらお墓参りができるように、墓石に向かって正面を向けて設置されることがほとんどです。

5.墓誌の設置を検討するときに押さえておきたい注意点

墓誌の設置を検討するときに押さえておきたい注意点

墓誌を設置するおすすめのケースをご紹介しましたが、墓誌の設置を検討する際には次の点に注意してください。

設置するスペースがないことがある

特に都市部の墓地では、墓地の区画が狭いため、墓誌を設置するスペースがないことがあります。

メンテナンスの手間が増える

墓誌は、屋外に設置されるため、風雨や紫外線による劣化が避けられず、文字が読みづらくなったり、石材が汚れたりすることがあります。そこで、墓誌を設置するとお墓に関するメンテナンスの手間が増えます。

雨風にさらされると苔やカビが生えやすくなるので、定期的な清掃が必要です。墓誌の文字が消えかけた場合は、再度、彫刻しなければなりません。この作業は通常、専門の石材店に依頼するため費用がかかります。

将来、墓誌を使わなくなる可能性がある

近年では、将来、墓誌を使わなくなる可能性が指摘されています。多くの寺院では、故人様の名前や戒名、没年月日を過去帳に記録しており、墓誌がなくても情報を確認することが可能です。また、納骨堂を選択する方や、墓じまいを行うご家族が増加しており、墓誌の必要性が薄れつつあります。

費用がかかる

墓誌を設置するには、石材費、設置工事費、彫刻費用などの費用がかかります。高価な石材を使用したり、複雑なデザインを選んだりするとさらに費用は増加します。具体的な費用相場は、この後詳しくご紹介します。

6.墓誌を新たに設置するときの相場

墓誌を新たに設置する際の一般的な総費用の相場は15万円~45万円程度で、石材費(墓誌本体)、設置工事費、彫刻費用で構成されます。

石材費、設置工事費、彫刻費用の概要とそれぞれの費用相場を表にまとめましたので参考なさってください。

【石材費、設置工事費、彫刻費用の概要と費用相場】
費用種類 概要 費用相場
石材費
(墓誌本体)
一般的に黒や灰色の御影石が多く使用される 5万円~20万円
設置工事費 墓誌を設置するための基礎工事や運搬の費用 5万円~20万円
彫刻費用 1名当たりの名前や戒名、没年月日などを彫る費用 3万円~5万円

石材の種類やデザイン、設置場所の条件によっては、さらに高額になることもあります。墓誌を設置する際は、複数の石材店から見積もりを取り、比較検討しましょう。

7.墓誌に追加彫りする場合の相場

墓誌に追加彫りする場合の相場

墓誌に故人様の情報を追加で刻む費用は、1名当たり3万円~5万円が相場です。この金額は、設置時の彫刻費用とほぼ同じです。

ただし、お墓での作業か、石材店まで墓誌を運搬するかによって費用は変動します。石材店での作業の場合、墓誌の撤去や運搬、再設置の費用が別途発生することがあります。現地での彫刻作業でも、墓地の場所によっては石材店からの距離に応じて出張費用がかかることがあります。

石材店に見積もりを依頼する際には、現地作業と持ち込みのどちらが適しているかを石材店とよく相談し、他に必要な費用がないかを確認することが重要です。

8.墓誌に名入れを行うのはいつ?期限はある?

墓誌に名入れを行うのはいつ?期限はある?

墓誌に「名入れ」(故人様の情報を刻むこと)を行う時期について厳密な決まりはありませんが、一般的には四十九日法要までに行われるのが目安とされています。四十九日法要は故人様の魂が成仏する節目とされており、この時期に合わせて納骨を行うご遺族が多いからです。

四十九日法要だけでなく、一周忌や新盆など、他の法要に合わせて行うこともよくあります。ご家族の都合や石材店のスケジュールに合わせて柔軟に調整してよいでしょう。

9.墓誌に刻む内容は?書き方・順番を解説

墓誌には、標題(タイトル)と故人様に関する事項が刻まれます。それぞれの詳しい内容と名入れをする順番についても解説します。

墓誌の標題

墓誌の上部には、宗教や宗派によって異なる標題が刻まれます。たとえば、浄土真宗では「法名碑」、他の仏教宗派では「霊標」や「戒名碑」、キリスト教や神道などでは「墓誌」が一般的です。標題は、地域や寺院によっても異なる場合があるため、事前に確認することが推奨されます。

故人様に関する事項の書き方

標題の次に、故人様に関する事項を刻みます。主な内容は下記の4つですが、宗教や地域の慣習、ご家族の意向などにより一部を省略することもあります。

故人様の宗教的な名前

宗教によって、以下の様に記載する名前が異なります。

  • ・仏教(浄土真宗以外):戒名
  • ・仏教(浄土真宗):法名
  • ・神道:諡(おくりな)
  • ・キリスト教:洗礼名

無宗教の場合は、戒名を省略して故人様の名前を大きく刻むこともあります。

俗名

故人様が生前に使用していた名前です。フルネームで刻むことが一般的ですが、ニックネームや愛称を追加することもできます。

没年月日

故人様が亡くなった日を正確に刻みます。和暦や西暦のどちらかを選べますが、伝統的な縦型の墓石を設置している場合は、和暦を使用することが通例です。

没年齢

享年または行年を刻みます。享年は数え年で、行年は満年齢です。どちらを使用するかは、地域や宗教の慣習にしたがいます。

墓誌に名入れをする順番

墓誌に名入れをする順番は、一般的に誰が先に亡くなったかを一目で確認できるようにします。縦書きであれば、故人様の没年月日の順に右から左へ縦書きで刻みます。その際、たとえば子どもが先に亡くなった場合は親よりも先に名前が刻まれて家族関係がわかりにくくなるため、「○○の子」といった続柄の説明を加えることがあります。

家族関係をわかりやすくするために、夫婦ごとに連名で刻むといった家系図のような名入れの方法もあります。この場合、妻が先に亡くなったときは、その隣に夫の名前を刻むスペースを空けておきます。夫婦の名前のあとに子どもや孫の名前を続けて刻み、家族関係を明確にします。

生前に戒名を与えられた方の名前を赤字で刻んでおき、亡くなった後に赤色を抜くこともあります。

10.墓誌がいっぱいになったらどうする?書ききれないときの対処法

墓誌がいっぱいになったらどうする?書ききれないときの対処法

墓誌がいっぱいになってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。いくつかの対処方法をご紹介します。

裏面を使用する

墓誌の表面が埋まったら、裏面に彫刻を続けることが一般的です。これにより、表と同じ数の戒名を刻めます。

新しい墓誌を作成

裏面もいっぱいになった場合、スペースに余裕があれば、新しい墓誌を作成して追加する方法があります。お墓のスペースに余裕がある場合に可能な方法です。

ご先祖様の情報をまとめる

33回忌を過ぎたご先祖様については「先祖代々之霊」などとしてまとめることができます。墓誌の表面を削ることで、新たに戒名などを彫るスペースを確保できます。また、墓石の竿石(さおいし)に多くの戒名が刻まれている場合は、竿石を作り直す方法もあります。

11.墓誌に関するQ&A

墓誌に関するQ&A

A.墓誌の名前は縦書きが主流ですが、横書きでも問題ありません。

ご家族の希望、あるいは墓地のデザインに合わせて横書きを選ぶケースもあります。なお、キリスト教では横書きで彫刻することも多いようです。

A.墓誌の管理や名入れの継続は、各ご家族の判断に委ねられるものであるため、ご家族の意向に応じて名入れをやめる選択もあります。墓誌の名入れは、故人様の供養やご家族の記憶を永続させるひとつの方法ですが、必須ではありません。

重要なのは、ご家族が故人様やご先祖様をしのぶ気持ちです。墓誌の名入れをしなくても、定期的にお墓参りをする、写真や遺品を大切に保管するなどの方法で故人様やご先祖様をしのぶことができます。

A.墓誌の基本的な大きさは、横幅約70cm、高さ約55cm、厚み約10cmです。重さは使用する石材によって異なりますが、一般的には数十キログラム程度です。

厚みが半分程度の約5cmのものや、幅が狭い小型のものもあります。お墓のデザインや墓地の広さに合わせて選ぶとよいでしょう。

A.ペットの名前を墓誌に彫ることは、特に法律などで禁止されているわけではありません。

そもそも墓誌はお墓に埋葬された方の名前を記録するものですから、ペットを埋葬できなければ彫れません。ペットを埋葬してよいかどうかは、墓地や霊園の管理規則によって異なります。また、宗教や宗派によっては、ペットの名前を墓誌に彫ることを適切でないとすることがあります。

墓誌にペットの名前を彫りたいときは、ペットの埋葬の可否について霊園や菩提寺などに相談しましょう。

A.納骨堂にもさまざまなタイプがありますが、納骨堂の多くは屋内にあり、スペースが限られているため、石板の墓誌を建てられないケースがほとんどです。

基本的に墓誌は、屋外の墓地や霊園でスペースに余裕がある場合に建てることができるものと考えたほうがよいでしょう。

12.墓誌の設置はご家族と相談して慎重に決めましょう

墓誌の設置はご家族と相談して慎重に決めましょう

墓誌は、故人様をしのぶための大切な記録となりますが、設置は必須ではなく、設置するかどうかはご家族の意向に委ねられています。墓誌の設置には、費用に加え、定期的な清掃が必要となります。そのため設置についてはご家族全員で十分に話し合い、納得できる形で進めることが大切です。

墓誌についてお悩みの方は、花葬儀までご相談ください。花葬儀では、葬儀後のアフターサポートも行っており、メンバーシップ制度「リベントファミリー」にご加入いただきますと、経験豊富なスタッフが丁寧にサポートいたします。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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