無縁墓とは?増加している背景や問題、対策を徹底解説
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- 【 お墓の基礎知識 】
無縁墓の増加が社会問題化しているのをご存じでしょうか?お墓の無縁墓化は決して他人事ではなく、いつ誰のお墓がなってもおかしくない、身近な問題です。
今回は無縁墓をテーマに、増加の背景や無縁墓になることの問題点、無縁墓にしないための対策を徹底的に解説します。近い将来お墓を相続する方や、お墓の承継に悩んでいる方、無縁墓についてよく知りたい方におすすめの内容となっておりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
1.無縁墓とは何か
そもそも無縁墓とは具体的にどのようなお墓を指すのでしょうか。
まずは無縁墓の定義や条件について解説します。
無縁墓の意味・読み方は?無縁仏との違いとは
無縁墓(むえんぼ/むえんばか)とは、承継や管理をする人がいないお墓を指す言葉です。似た言葉に「無縁仏(むえんぼとけ)」がありますが、こちらは以下のような理由で供養をする人がいない故人様のことを言います。
- ・ご家族や縁故者がおらず、孤独死した方
- ・災害によって身元不明となった方
- ・それ以外の理由で身元不明となった方
- ・ご家族や縁故者から引き取りを拒否された方
なお、承継者がいなくなったお墓そのものを無縁仏と呼ぶこともあります。
無縁墓の法律上の定義
「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の第3条(※1)によると、無縁墓を「死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂」と定義づけています。
無縁墓に関する法律ができた理由には、増え続ける墓地管理者の負担が背景にあります。お墓の承継者は、墓地の管理・維持をしてくれる寺院や霊園に管理費を納めます。しかし承継者がいなくなったり、連絡が取れなくなったりすると、墓地管理者は管理費を回収できません。
荒れ果てたお墓を勝手に撤去することは法律違反にあたるため手が出せず、新たなお墓を建てることもできなくなるのです。そこで無縁墓を適切に処理できるようにするために、法律が整備されました。
(※1)
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100024/#Mp-At_3
参照元:墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十四号)
無縁墓となる年数の規定は埋葬施設により異なる
無縁墓に認定される年数に、法的な決まりはありません。多くの埋葬施設では、3年から5年近く放置されたお墓を無縁墓とするようです。無縁墓の解体・撤去には費用がかかるため、管理されなくなったお墓の縁故者を探し続ける墓地も少なくありません。
2.なぜ無縁墓が増加?現状と社会原因
なぜ無縁墓が増加し、社会問題となっているのでしょうか。
無縁墓の現状と理由について解説します。
無縁墓地の増加は社会問題化している
総務省が令和5年に公表した調査結果(※2)によると、公営墓地・納骨堂を持つ765の市町村のうち、60%近くが「無縁墓が1区画以上ある」と回答しました。無縁墓の発生は全国的に増加傾向にあり、全区画の10%が無縁墓を占めてしまった霊園もあるようです。
無縁墓が増えることによる問題は、墓地の運営の圧迫だけではありません。無縁墓の区画内に生えた雑草や樹木が繫茂して景観に悪影響を与えたり、劣化した墓石が倒壊したりといったリスクが高まります。一方で新たにお墓を建てたい人にとっても、無縁墓が増え続ければ「空いている墓地がない」といった問題が起こるかもしれません。
(※2)出典:墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_230913000167928.html
https://www.soumu.go.jp/main_content/000901041.pdf
無縁墓が増えている背景
無縁墓が増えている背景には、以下のような理由が考えられます。
【お墓の承継者がいない】
- ・子どもがいない
- ・頼れるご親族・縁故者がいない
【縁故者がお墓を継ぎたがらない】
- ・ご家族と疎遠である
- ・お墓の在り方について意見が異なる
- ・遠方に住んでいる、または健康上の理由などで管理ができない
【そもそもお墓があるのかがわからない】
- ・お墓の場所を忘れた
- ・お墓があることを聞かされていない
核家族化やお墓に関する価値観の多様化、少子高齢化といった社会構造の変化も、無縁墓が増えている背景にあると考えられます。
3.無縁墓になったらどうなる?遺骨と墓石のゆくえ
長年放置され、無縁墓と判断されてしまったお墓は、墓地管理者によって最終的に処分されます。
無縁墓の処分の流れと、中に収められていたご遺骨のゆくえついて解説します。
無縁墓が処分されるまでの流れ
無縁墓と判断されてから処分されるまでの流れは「墓地、埋葬などに関する法律施行規則」に沿って行われます。
詳しくは以下の通りです。
1.名簿や戸籍などで墓地所有者を探す
まずは寺院や霊園で管理している名簿から、墓地所有者へ連絡を試みます。連絡が取れない場合、戸籍などを使って所有者や縁故者を調べます。
2.官報と立札で墓地所有者に通知
名簿や戸籍でも調べがつかなかった場合、無縁墓がある墓地の管理者が、官報(※3)に無縁墓の情報を掲載し、無縁墓のある場所に立札を1年間提示します。
(※3)日本国の機関紙。法令や国会に関係することの他、国民の権利義務に関係する事柄などが載る。
3.墓石の撤去・ご遺骨の合祀
1年間待っても墓地所有者が名乗り出なかった場合、墓地管理者は無縁墓を処分することができるようになります。
無縁墓の中に入っていたご遺骨は、多くの場合、合祀(ごうし)されます。合祀とは、骨壺から取り出したご遺骨を血縁関係のない他人と一緒に埋葬することで、一度合祀してしまうとご遺骨を取り戻すことはできません。
ご遺骨を合祀した後、墓石は撤去され、新規の埋葬者を受け入れるために区画が整備されます。
無縁墓の処分費用は誰が払う?
お墓を解体し撤去することを「墓じまい」といいます。墓じまいの費用は、基本的にはお墓の承継者が負担します。しかし無縁墓として放置されたお墓の場合、解体・撤去費用は墓地管理者または自治体が支払うことがほとんどです。
お墓を解体・撤去し、区画を更地に戻すには数十万円がかかるため、無縁墓が多いほど、墓地や自治体の負担は大きくなります。こうした状況が続けば、財政が圧迫され墓地の運営が続けられなくなり、最終的に税金で穴埋めせざるを得なくなる未来も考えられるでしょう。
無縁墓にしたことで、お墓の所有者が罰せられることはありません。しかし「本来納めるべき管理費を滞納した」ということで、墓地管理者側から未納分を催促されたり、民事で訴えられたりする可能性はあります。
そうでなくても「先祖代々のお墓を放置してしまった」「放置したばかりにお墓が撤去されてしまった」という社会的・倫理的な面で所有者が精神的負担を負うことは避けられません。
4.自分や家族のお墓を無縁墓にしないための選択肢
自分やご家族のお墓が放置され、荒れ果ててしまうことを望む人はいないでしょう。
大切なお墓を無縁墓にしないために何ができるのかを、こちらでご紹介します。
改葬
「お墓は承継したいけど、遠方に住んでいるため定期的に管理できるか不安」といった場合には「改葬」という選択肢もあります。改葬はお墓の引っ越しのことで、自分の手の届く場所にお墓を移すことによって、無縁墓になるリスクを回避できます。
改葬について詳しくは、「墓地移転(改葬)に必要な手続きや流れ」の記事を参考になさってください。
先祖のお墓の墓じまい
お墓を管理する必要が無くなれば、無縁墓になる心配もありません。墓じまいをした後のご遺骨は、次からご紹介する「永代供養」や「合祀」「散骨」「手元供養」といった方法で供養することができます。
永代供養
ご家族に代わり、墓地の管理者がお墓やご遺骨の管理・供養を行うことを「永代供養」と言います。永代供養を選択することで、本来自分たちですべきお墓の管理が不要となりますが、「永代=永遠」ではなく「管理先が存続する限り」供養される点に留意しておきましょう。
永代供養を前提としたお墓は「永代供養墓」と呼ばれ、以下の種類があります。
【個別墓】
1~4名分のご遺骨が納骨できる。
【集合墓】
石塔や樹木といったシンボルの下に、他の契約者と共に埋葬する。
【納骨堂】
ご遺骨を収蔵するスペースが備わった施設や建物全般。
【合祀墓】
最初から合祀するためのお墓(詳しくは後ほど解説します)。
費用や形態が異なるため、故人様の生前の希望やご家族の都合に合わせて選ぶとよいでしょう。
自然葬
自然葬とは、ご遺骨を山や海といった自然に撒いたり、埋葬したりして還す供養法です。「自分のお墓はいらない」「子どもにお墓を継がせたくない」といった方におすすめです。
自然葬には主に「樹木葬」と「散骨」があります。
【樹木葬】
・樹木の根本にご遺骨を埋葬する
・石碑の代わりに樹木を植えることを指すこともある
・許認可を得た場所以外での樹木葬は禁止されている
【散骨】
・パウダー状にしたご遺骨を、山、海、川などに撒く
・散骨する場所を制限していたり、散骨そのものを禁止していたりする自治体もある
・ご遺骨の全てを散骨せず、一部を残して自宅で供養する「手元供養」との併用も可能
合祀墓・共同墓地
先ほどご紹介した永代供養では、ご遺骨は一定の期間を経た後に永代供養墓から取り出され、合祀されるのがほとんどです。最初から合祀してもらいたい場合は、合祀墓もしくは共同墓地を選択しましょう。
共同墓地とは、ひとつのお墓に共同で納骨する墓地を指し、現在は合祀墓とほぼ同じ意味で使われています。ただし、「墓地、埋葬等に関する法律」制定以前は、共同墓地は「地域で暮らす人たちが共同で管理・運営する墓地」を意味していました。そのため、地域によって「共同墓地」の解釈が異なる可能性があることに注意が必要です。
5.無縁墓に関するQ&A
A.お墓について調べたことや、お墓に関する意見をご家族と共有し、話し合うことが必要です。
お墓に対する考え方は、人によって異なりますので、まずは「今あるお墓をどうしていくか」「自分が亡くなった後、埋葬先はどこを希望するのか」をご家族と話し合うことが大切です。現在のお墓に承継者となる人がいない場合は墓じまいを検討し、取り出したご遺骨の新たな供養方法を考えましょう。
家族との対話が難しい場合は、自分の死後の供養方法や今あるお墓の処遇について、エンディングノートなどに残しておく方法もあります。
A.縁故者がお墓を撤去する場合は30万円~100万円相当がかかります。
縁故者が責任を持って無縁墓を撤去する場合、撤去費用は一般的な墓じまいの金額とほぼ変わりません。墓じまいにかかる費用の内訳は以下の通りです。
・お墓の撤去にかかる費用(墓石撤去、ご遺骨の手入れ、ご遺骨の運送)
・寺院に支払う費用(供養のお布施、離檀料、滞納していた管理費)
・手続きにかかる費用(墓じまいに必要な書類取得)
・新しい納骨先にかかる費用(契約料や管理費)
全体の費用目安は30万円~100万円ほどです。管理費を滞納していた期間が長い場合は、さらに高額になる可能性もあります。
A.墓石の倒壊リスク、精神的な負担やご先祖様とのつながりの喪失などが考えられます。
以下に、具体的なリスクを挙げます。
【劣化によるリスク】
・墓地の景観悪化
・地震などによる墓石倒壊の可能性
【供養に関するリスク】
・お墓が処分され、ご遺骨のゆくえがわからなくなる恐れ
・自分の将来の埋葬先の用意が難しくなる可能性
【その他のリスク】
・先祖とのつながりの喪失
・無縁墓にしたことへの後悔や罪悪感
・墓地管理者からの訴訟提起
無縁墓に罰則はないとご説明しましたが、さまざまな問題がご自身やお世話になっている墓地、またご先祖様にふりかかることを、今一度押さえておきましょう。
6. 無縁墓を防ぐために【花葬儀】ができること
お墓の承継者がいない、自分に合った供養方法が分からないといった方のために、花葬儀では積極的なサポートを行っております。無縁墓にしないために行う墓じまいの方法や、供養先などの各種相談は花葬儀におまかせください。
一般的にお墓のことなら石材店、墓地に関しては寺院や霊園、といったように相談内容ごとに相談先を変えなければなりません。しかし花葬儀であれば、お墓や供養に関する不安をひとつの窓口で解決することができます。
葬儀や相続といった他のお悩みと合わせてのご相談や、弁護士など専門家のご紹介も可能です。
無縁墓への不安を「不安なまま」で終わらせないためにも、どうぞお気軽にご相談ください。
7.無縁墓にしないための対策を今から考えましょう
無縁墓の増加は、社会全体に影響を及ぼす深刻な問題となっています。墓地や自治体だけでなく、本来墓地を管理すべき承継者にとっても、遠方にある墓地の管理や改葬にかかる負担は大きな問題です。これらを未然に防ぐためには、あらかじめお墓についてご家族と話し合い、具体的な対策を立てることが大切です。
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