自宅墓とは?種類や費用など、設置前に知っておくべき注意点と選び方
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- 【 お墓の基礎知識 】
お墓の在り方のひとつに「自宅墓(じたくぼ)」があります。自宅墓とは、どのようなお墓なのでしょうか。
今回は自宅墓の特徴やメリット、自宅墓を選択する際の注意点をご紹介します。これから供養方法を考え始める方、既存のお墓について悩みを抱えている方、ご遺骨の安置場所を探している方におすすめの内容となっています。ぜひ最後までお読みください。
1.自宅墓とは?
自宅墓は、自宅の敷地や家の中に設置する小型のお墓です。
自宅墓は「全骨タイプ」と「分骨タイプ」に分けられ、それぞれ以下の特徴があります。
【全骨タイプ】
- ・ご遺骨を全て納めるタイプ。
- ・粉骨(ご遺骨をパウダー状に粉砕すること)して供養することもある。
【分骨タイプ】
- ・ご遺骨の一部を納めるタイプ。
- ・自宅墓に納めなかった残りのご遺骨は、別の方法で供養する必要がある。
自宅墓には「墓」という名前がついていますが、必ずしも墓石タイプに限定されず、現在はさまざまな種類やデザインがあります。自宅墓の種類については後述しますのでそちらをご覧ください。
なお、自宅墓と「手元供養」との違いについて疑問を持たれる方も多いようです。手元供養はご遺骨の一部や全部を自宅内で供養する「行為」を指します。つまり、手元供養で使用する供養品のひとつが自宅墓との位置づけだと言えます。
2.自宅墓の設置に許可は必要か
自宅の敷地内であれば、どこにお墓を建ててもよいのでしょうか?また、設置に許可は必要なのでしょうか?
こちらでは、自宅墓を購入する際の法的な問題について解説します。
室内に設置する場合
お墓に関する決まりは「墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓地埋葬法)」で定められています。この法律では、自宅の室内でご遺骨を供養することを禁止していません。したがって、室内に自宅墓を設置する場合は違法とはならず、許可も不要です。
庭など自宅の敷地内に設置する場合
一方、自宅の庭など、屋外の敷地に自宅墓を設置するときは注意が必要です。「墓地、埋葬等に関する法律」の第4条では以下のように定められています。
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
ご遺骨を自宅の庭や屋外の敷地に埋める、もしくはお墓などに納めることは法律によって禁止されています。違反した場合は罰金や拘留など、処罰の対象になるかもしれません。ただしご遺骨が納められていなければ問題ないため、墓石のみを庭に設置することは可能です。
もう1点注意したいポイントとしては「周囲への配慮」です。ご遺骨を埋葬しなければお墓を建てても問題ないとご説明しましたが、ご自宅が住宅地の中にある場合は、近隣の心理的な負担にならないよう設置場所を考えましょう。状況によっては、室内に自宅墓を設置したほうが無難なこともあります。
3.自宅墓が近年注目を浴びる背景
株式会社鎌倉新書が運営する「いいお墓」が行う「お墓の消費者全国実態調査」によると、2020年ごろからは樹木葬を選択した人が一般墓を大きく上回る傾向が続いています。この調査では、近年、お墓を購入した全体の6割以上が「跡継ぎ不要のお墓」を選択している結果が示されました。
お墓選びで重視したこととして「お墓の種類」が過半数を占め、次いで「金額」「自宅からのアクセス」が多く挙がりました。
単身世帯の割合が増え続けているという厚生労働省の調査結果からも、承継者の減少が関係していることがわかります。「少子化による承継者不足」「自分らしいお墓を選びやすい時代になった」といった理由が、自宅墓の人気を高めているのかもしれません。
調査名:【第15回】お墓の消費者全国実態調査(2024年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向
引用元:株式会社鎌倉新書「いい葬儀」
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_2024/
4.自宅墓を選ぶメリット
自宅墓にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
こちらで詳しくご紹介します。
自分のペースでお墓の管理・供養ができる
寺院や霊園が運営している墓地では、お供え物の種類や営業時間などが定められている場合がほとんどです。墓地管理者がいるという点では安心ですが、お墓の管理・供養が好きなように行えないという点が、人によっては不便に感じてしまうかもしれません。
一方、自宅墓は全て自分のペースで行うことができます。忙しい現代人にとって、制約が少ないのはメリットと言えるでしょう。
いつでも気軽にお墓参りができる
お墓参りにはスケジュール調整や移動が必要で、遠方であるほど負担は大きくなるでしょう。しかし自宅墓であれば自宅内にお墓があるため、時間を気にせずいつでもお墓参りができます。体の不自由な方や将来的な健康不安に備えたい方、引っ越しの予定がある方にとっては魅力です。
従来型の墓地と比較して経済的
自宅墓のもうひとつのメリットは、従来型のお墓と比べて安いことです。それぞれの費用に関する解説は後述しますが、墓地に墓石を建てる一般的なお墓と比べた場合、最大百万円近くの差が出るでしょう。浮いたお金を、故人様への別の供養という形で使うことができるかもしれません。
5.自宅墓の注意点
自宅墓を検討する際には、メリットだけでなく注意点を押さえることも重要です。
こちらでは、自宅墓を購入する前に注意しておくべきポイントをご紹介します。
ご家族やご親族の理解が得られない可能性がある
近年注目を浴びているとはいえ、自宅墓という形式はまだ一般的に浸透していません。ご家族やご親族の中には、自宅にお墓を設けることに抵抗感を覚える方もいらっしゃるでしょう。周囲に説明を行い、同意を得ることが大切です。
管理の責任・リスクがある
自宅墓の場合、災害や火事などで、ご遺骨を紛失してしまう可能性が少なからずあります。管理責任やリスクを自分で負う必要があることにも注意しましょう。取り扱いには慎重になるとともに、他の供養方法も併せて検討することで、よりよい決断ができます。
また、高温多湿な気候の日本では、自宅内に保管した骨壺内やご遺骨にカビが生えてしまうことがあります。以下の対策がおすすめです。
- ・湿度が低く、直射日光のあたらない風通しのよい場所に設置する。
- ・ご遺骨を入れる器は密閉性の高いものを選ぶ。
- ・必要に応じてエアコンで室温調整をする。
- ・容器の中に乾燥剤を入れる。
将来的なご遺骨の処遇も考えなければならない
自宅墓を持っていた人が認知症になったり、亡くなったりした際の自宅墓の処遇も事前の検討が必要です。ご遺骨を廃棄することは刑法でも禁じられており、自宅での供養が難しくなったご遺骨は、「ご家族が承継する」か「別の場所に納骨か散骨」が選択肢となります。
万が一のときに備えて、ご家族で話し合ったり、必要な契約を結んだりしておくと安心です。遺言書にご遺骨の処遇についての希望を記載するのもよい方法でしょう。
6.自宅墓の種類・選び方
「お墓」と聞くと御影石でできた伝統的なデザインを思い浮かべますが、自宅墓は室内に飾りやすいデザインも豊富です。
こちらでは、自宅墓の種類や選び方をご紹介します。
ご遺骨の保管方法で選ぶ
自宅墓選びのひとつめのポイントは「ご遺骨の保管方法で考える」ことです。
全骨タイプ、分骨タイプそれぞれに適した自宅墓は以下を参考になさってください。
お骨を全て自宅に保管するタイプ
ご遺骨を全て自宅に保管する「全骨タイプ」の場合、自宅墓は比較的大きくなります。大人のご遺骨を骨壺に納めるには、高さが30cm前後、直径20cm前後のサイズ(6寸から7寸)が一般的です。ご遺骨は重さだけで3㎏前後ありますから、全骨を収容する自宅墓は骨壺より一回り以上の大きさで、耐重性のあるものがよいでしょう。
なお、粉骨にした場合は3分の1~4分の1まで体積が小さくなるため、コンパクトな自宅墓に納めることも可能です。
一部を自宅に保管するタイプ
ご遺骨の一部を自宅に保管する「分骨タイプ」の場合、自宅墓は手のひらサイズから用意することができます。管理や設置のしやすさなどから、自宅墓では分骨を選ぶ方が多くいらっしゃるようです。
なお、自宅に保管しないご遺骨は以下の方法などによって供養します。
- ・もともとあったお墓に埋葬する
- ・新しく建てたお墓に埋葬する
- ・永代供養墓に入れる
- ・散骨する
設置場所で選ぶ
設置場所でお墓の種類を決めるのもよい方法です。
室内に設置する場合は、お部屋の雰囲気に合うものを中心に選ぶとよいでしょう。室内に向いている自宅墓の主なタイプは以下の通りです。
【仏壇タイプ】
- ・納骨スペースが備わった仏壇。ご遺骨は仏壇の背面や台座部分に収納する。
- ・家具の上に置く上置き型が基本だが、床に直接置ける大型タイプもある。
- ・小型の仏壇は、扉を閉めれば自宅墓とは気づかれにくい。
- ・伝統的なデザイン以外にも洋風やモダンタイプがある。
- ・床の間やリビング、寝室などにおすすめ。
【ミニ骨壺タイプ】
- ・ご遺骨の一部を納める小さな骨壺。
- ・陶器、ガラス、金属、木製など材質、デザインともに豊富。
- ・設置場所のスペースが限られている場合におすすめ。
【小型墓石タイプ】
- ・墓石に使っている御影石を使用した小型の墓石。
- ・インテリアになじむ、デザイン性の高い仕様も豊富。
- ・内装と調和させつつ、ある程度の存在感を大事にしたい場合におすすめ。
【簡易ステージタイプ】
- ・簡易的な台座の上に、骨壺や写真を飾ることができる。
- ・家族の集まるリビングなどにおすすめ。
- ・専用のアクセサリーにご遺骨を収納するタイプと、ご遺骨から作った宝石をアクセサリーに加工するタイプがある。
- ・ご遺骨を設置するスペースがない、常に故人様のそばに寄り添いたいという場合におすすめ。
- ・墓石本体費用
- ・墓石設置費用
- ・墓石への彫刻・加工費用
- ・墓地利用代
- ・管理費用
【アクセサリータイプ】
なお、ご遺骨が納められていない自宅墓を庭に設置する場合は、石でできた供養塔のような見た目であれば、雨風に強く、また墓石ほど景観に影響を与えません。
7.自宅墓の値段・価格帯
自宅墓のおおよその金額や、自宅墓にかかる費用をご紹介します。
【種類別】自宅墓の費用相場
種類別に見る、自宅墓の費用相場は以下の通りです。
種類 | 費用相場 | 補足 |
---|---|---|
仏壇タイプ | 1万円~数十万円 | デザインやサイズ、材質によって異なる |
ミニ骨壺タイプ | 5千円~10万円 | 材質やデザインによって異なる |
小型墓石タイプ | 5万円~30万円 | ・全骨用の方が、費用が高くなる傾向にある ・彫刻や、分骨したご遺骨の永代供養サービスなどがつくことも |
簡易ステージタイプ | 5千円~5万円 | ・シンプルで開放的な台座のような作り ・ミニ骨壺や花立などが付属していることもある |
アクセサリータイプ | 2万円~数百万円 | ご遺骨を入れる専用のアクセサリーは2万円程度から入手可能 |
自宅墓以外の供養方法との費用比較
自宅墓のメリットとして、「従来型の墓地と比較して経済的」とご紹介しました。具体的にどのくらい価格差があるのかを見てみましょう。主な供養方法の相場を一覧にすると、以下の通りです。
供養の種類 | 費用目安 |
---|---|
自宅墓 | 1万円~数百万円 |
一般墓 | 150万円 |
永代供養墓 | 5万円~150万円 |
自然葬 | 1万円~30万円 |
以下より、それぞれの供養方法について解説いたします。
一般的なお墓(墓地に新規でお墓を建てる場合)
一般的なお墓の場合、主に以下の費用が発生します。
「自宅墓が近年注目を浴びる背景」でご紹介した「お墓の消費者全国実態調査」では、一般墓の購入費用は平均149.5万円でした。お墓周りを充実させたり、広い区画を使用したりすると、金額はさらに上がるでしょう。
出典:「第15回 お墓の消費者全国実態調査(2024年)」(株式会社鎌倉新書「いいお墓」)
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_2024/
永代供養墓
ご遺族に代わり、運営者が長期にわたってお墓の管理・供養を行ってくれるのが「永代供養墓」です。永代供養墓には初期費用として「永代供養料」「納骨料」「彫刻料」などがかかります。
具体的な金額はご遺骨を納めるお墓の種類によって異なるため、5万円~150万円が相場です。永代供養墓の仕組みと種類について、詳しく知りたい方は「永代供養とは?」の記事を参考になさってください。
自然葬
ご遺骨を海や山といった自然の中に還す供養方法が自然葬です。樹木葬や散骨がこれにあたります。種類によっても異なりますが、1万円~30万円が目安です。
8.自宅墓に関するQ&A
A.自宅墓へのご遺骨の納め方に決まりはありません。
一般的なお墓と異なり、室内に設置することが多いのが特徴ですが、宗教者を呼び読経をしていただいたり、ご家族だけでご遺骨を納めたり自由に行うことができます。
ただし、以下の点に注意しましょう。
・将来納骨場所を変更する可能性に備えて、押印された火葬許可証を保管する。
・分骨する場合は、分骨証明書を発行してもらう。
・先祖代々のお墓がある場合は、お墓の承継者や菩提(ぼだい)寺に許可を取る。
ご遺骨を納めた後の供養は、一般的なお墓に対して行うものと同じです。手を合わせる、お供え物を供える、清潔さを保つなど、お墓と故人様を大切にしましょう。
A.ペット用の自宅墓を持つことは可能です。
ペットの遺骨は、人間の遺骨とは異なり、墓地埋葬法の対象外です。ペットのご遺骨を自宅に埋葬したり、供養したりすることは法律で禁止されていません。そのため、ペット用の自宅墓を持つことも、また、ペットのご遺骨を自宅の敷地内で供養することも問題ありません。
実際にペットをご自宅で供養する方は多くいらっしゃいますし、ペット用の自宅墓も販売されています。
A.自宅墓と仏壇は、担う役割が異なります。
自宅墓は、亡くなった方のご遺骨を納め、供養するためのものです。一方、仏壇とは、ご本尊を祀(まつ)るためのもので、家の中に置く小さなお寺の役目を持っています。
それぞれ役割が違うとはいえ、自宅墓と仏壇の両方を設置するのはスペース上難しいというご家庭が多いでしょう。既にご自宅に仏壇がある場合は、ミニ骨壺やミニ墓石など、違うデザインの自宅墓を選んでみてはいかがでしょうか。
9.自宅墓とはご遺骨を自宅で保管・供養するためのお墓
お墓に関する考え方が変わりつつある昨今、「自宅墓」が人気を集めています。お墓参りの負担軽減や金額の低さなどが注目されていますが、紛失のリスクやご遺族の理解が必要という点にも注意しなければなりません。自宅墓にする際は、故人様が安らかに眠れるような環境を整えることを第一に、ご自宅の雰囲気に合わせたお墓を選ぶとよいでしょう。
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