葬儀でお赤飯を出すことがある?地域の風習や実例を解説
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
「葬儀でお赤飯」と聞くと、多くの人が驚くかもしれません。お赤飯といえば、お祝いの場で食べるものというイメージが一般的ですが、葬儀でもお赤飯が振る舞われる地域があることをご存知でしょうか。
今回は、葬儀でお赤飯を出す風習のある地域や、その意味について解説します。弊社で実際にお赤飯をご用意した実例や、振る舞う際の注意点もご紹介しますので、葬儀でお赤飯を出すことに迷いがある方、ご家族や周囲の反応が気になる方は、ぜひ参考になさってください。
1.なぜ、お赤飯をお祝い事で食べるのか
お赤飯の起源は、飛鳥時代にまでさかのぼります。この時代、毎年秋に行われる新嘗祭(にいなめさい)では、五穀豊穣を祈り、炊くと赤褐色に色づく赤米が奉納されていました。日本では古くから、赤い色に「邪気を払う力」や「魔除け」の意味があると信じられていたのです。
しかし、白米が主流になるにつれて、赤米は減少していきました。そこで、白米やもち米に小豆(あずき)などを加えて赤色を再現する方法が生まれ、現在のようなお赤飯が誕生したといわれています。
お赤飯は、お祝いや魔除けの象徴として、さまざまな場面で提供されますが、特に以下のような人生の節目によく食べられてきました。
・七五三
・入学式、卒業式、成人式
・結婚式
・還暦、古希などの長寿祝い
2.葬儀でお赤飯を出す地域とその由来
葬儀の形や風習は地域によってさまざまで、葬儀でお赤飯を用意する地域もあります。
福井県の一部地域
福井県の一部地域では、長寿を全うした故人様の葬儀でお赤飯を振る舞う「赤飯供養」と呼ばれる風習があります。赤色には魔除けの力があるとされていることから、不吉な出来事を避けるための「縁起直し」として、さらに長寿を祝う意味も込めて行われています。
神奈川県の一部地域
神奈川県の農村部でも、80歳以上の方の葬儀で、故人様の長寿を祝ってお赤飯が提供されることがあります。
島根県の一部地域
島根県東部では、「赤色には魔除けの力がある」との信仰に由来して、葬儀後の会食(精進落とし)でお赤飯を食べる慣習が残る地域があります。この慣習は、出雲大社を死の穢れ(けがれ)などから守るために行われてきました。提供されるお赤飯は、通常よりも色味を抑えたものとなっています。
熊本県の一部地域
熊本県の阿蘇市や玉名市、天草市の一部の地域では、葬儀の最後にお赤飯が提供されることがあります。
このように、葬儀でお赤飯を食べる風習は全国各地に見られます。お赤飯を出す主な理由としては、以下のような理由が挙げられるようです。
・長寿を全うした故人様の人生をたたえる
・赤色が持つ魔除けの力により、死の穢れをはらう
3.ご家族の希望で葬儀にお赤飯が出されることも
近年、葬儀は多様化し、故人様やご家族の希望を反映した形で行われることも増えてきました。そこで、地域の慣習とは別に、お赤飯が葬儀の場で登場するケースもあります。
故人様への想いを込めたお赤飯
たとえば、故人様が生前にお赤飯が好きだった場合や、お赤飯に特別な思い出がある場合、ご本人やご家族の希望でお赤飯をお供えしてもよいでしょう。お赤飯を用意することが、ご家族にとって、故人様への感謝や敬意を表す方法のひとつなっているのです。
花葬儀で実際にお赤飯を提供した事例
弊社「花葬儀」は関東にて葬儀のお手伝いをしておりますが、ご家族のご要望に応じてお赤飯をご用意したことが、何度かございます。その一例をご紹介させてください。
99歳(享年100歳)でお亡くなりになった方の葬儀で、ご家族から「家族としては大往生だと思っており、むしろ100歳をみんなにお祝いしてほしい。葬儀の席で母が好んでいた赤飯を用意したいのですが、大丈夫でしょうか?」と、ご質問をいただきました。
日本には、数え年で100歳を迎えた人を「百寿(ももじゅ)」としてお祝いする慣習があります。大切な方を亡くされたとき、深い悲しみがともなうことは確かですが、長寿を全うし、安らかに旅立たれた場合、ご家族は「大往生をたたえたい」とお考えになることも多いのです。そこで、ご家族の意向を受けて赤飯を手配いたしました。
参列された皆様も、ご家族のお顔に浮かぶ晴れやかな表情を見て、「故人様は家族に見守られて、よい最期を迎えられたのだな」と、安堵や喜びの気持ちを抱きながら、お赤飯を召し上がっているように感じました。
葬儀を迎えるご家族の心情や希望、思いは本当にさまざまです。このような葬儀の形も、ひとつの素晴らしい葬儀の在り方だと私たちは感じております。
4.葬儀でお赤飯を出す際の注意点
葬儀において赤飯を用意するにあたっては、いくつか気をつけたい点があります。葬儀の準備において、お赤飯を出すことを検討する際に、特に注意したいことを解説します。
ご家族やご親族との相談
お赤飯を葬儀で出す際は、ご家族やご親族との事前の相談が欠かせません。お赤飯を振る舞うことに対して抵抗感を抱く方がいる可能性もあるため、ご家族全員の意向を十分に確認することが重要です。ご家族の意見をすり合わせ、全員が納得した形で葬儀の内容を決定することが、心のこもった葬儀につながります。
宗教的な慣習の尊重
お通夜や葬儀における食事の形式は、宗教・宗派の慣習によって異なります。無宗教葬であれば問題ないかもしれませんが、宗教的背景により食事内容が決まっている場合もあります。
宗教的な慣習や教えに反してお赤飯を提供した場合、トラブルになるかもしれません。宗教や文化に対する理解と尊重をもって、葬儀の食事内容を決めることが大切です。
参列者の食物アレルギーへの配慮
お赤飯には、一般的に小豆が含まれているため、アレルギーを持つ参列者がいらっしゃる可能性があります。事前に、参列者のアレルギー情報を確認し、場合によっては代替メニューを用意します。
食文化や地域の慣習の確認
地域によっては、葬儀に提供される食事について慣習が存在する場合もあるため、慎重に検討することが大切です。地域の慣習や食文化をよく理解した上で、お赤飯を提供することが適切かどうかを判断しましょう。
5.葬儀でお赤飯を出すことがふさわしい場合もあります
葬儀でお赤飯を出すことに迷われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は状況によってはふさわしいこともあります。
葬儀には、宗教・宗派ごとのしきたりや、それぞれの地域の伝統がありますが、「こうしなければならない」という決まった形はありません。大切なのは、故人様やご家族の想いを尊重し、心から納得できる形でお見送りをすることです。
葬儀にお赤飯を出すことに不安や疑問のある方は、花葬儀の事前相談までご連絡ください。お赤飯に限らず、「故人様らしさ」を大切にしたいというご家族の想いを、私たちは大事にしています。一つひとつのご希望に耳を傾け、心あたたまるお別れの時間をお手伝いしますので、どのようなことでも、お気軽にお声がけください。