神式(神道)における法要とは?参列する際のマナーや注意点も解説

神式(神道)における法要とは?参列する際のマナーや注意点も解説

「神式の法要に出席するのだけど、仏式と違ってなじみがない」と不安に感じる方は多いものです。そもそも「法要」とは、仏教における儀式のことをいいますが、神式(神道)にも法要にあたる儀式があります。

そこで今回は、法要にあたる「神式(神道)の儀式」についてご紹介します。参列する時のマナーや、お香典・お供え物の表書きにおいて注意することも解説していますので、ぜひ参考になさってください。

1.神式において「法要」にあたる儀式は?仏式との違いも解説

そもそも「法要」は仏教用語で、葬儀後に行われる「故人様を弔う儀式」の総称です。命日から何日目、あるいは何年目というように決まった日に営まれるのが特徴で、「初七日」や「四十九日」「三回忌」などが含まれます。

神式の葬儀のことを神葬祭(しんそうさい)といいますが、後日行われる「仏式の法要にあたる追悼儀式」には、大きく分けて「霊前祭(れいぜんさい)」と「式年祭(しきねんさい)」があります。

神道には「死は穢(けが)れである」という考え方があり、神様に穢れを近づけてはならないという理由から、霊前祭や式年祭は神社では行わず、主に自宅や墓地、葬祭会場などで行うのが一般的です。

なお、仏教の法要と、神式の霊前祭・式年祭は、執り行う目的や考え方が異なります。表にまとめましたので、参考になさってください。

葬儀後の追悼儀式/仏教と神式との違い
葬儀後の追悼儀式の総称 目的
仏教の法要 故人様が極楽浄土に行けるよう、故人様の冥福をお祈りするために行います。
※浄土真宗の場合は、故人様をしのぶ儀式ための儀式(亡くなったと同時に故人様は極楽浄土に行けるとされるため)として行います。
神式の霊前祭・式年祭 故人様の御霊(みたま)を慰め、御祖先として今後もお家を見守り続けてくださるよう祈念します。

※神式の葬儀や、神式の考え方については、こちらをご覧ください。

2.神式における「葬儀後の追悼儀式(仏教でいう法要)」の種類と時期は?

神式における「葬儀後の追悼儀式(仏教でいう法要)」の種類と時期は?

仏教での「法要」にあたる神式の「霊前祭」や「式年祭」には、どのような儀式があるのでしょうか。種類や執り行う時期について、詳しく解説していきます。

神式における法要「霊前祭」「式年祭」とは?

霊前祭・式年祭の呼び方や定義は、同じ神式でも神社や地域の慣習によって異なります。基本的には、合祀祭(ごうしさい)より前に行われる儀式が霊前祭、命日から1年目・3年目などの節目に行われる儀式が式年祭(年祭・祖霊祭)とされています。

合祀祭とは、故人様の霊璽(れいじ:仏式における位牌)を祖霊舎(それいしゃ:仏式におけるお仏壇)に収める祭儀です。五十日祭(ごじゅうにちさい)もしくは百日祭(ひゃくにちさい)・一年祭のあとに行うものとされていますが、近年は五十日祭と同日に行う傾向にあります。

以下に、霊前祭・式年祭の概要と、それに含まれる儀式の例をまとめましたので、参考にご覧ください。

神式の追悼儀式「霊前祭」「式年祭」の違い
葬儀後の追悼儀式の総称 内容 儀式の種類
霊前祭
(霊祭・御霊祭)
亡くなったばかりの御霊は不安定で繊細なものとされるため、故人様の御霊を慰め、安らかに鎮まるよう祈ります。 例)
帰家祭(きかさい)・十日祭(とおかさい)・五十日祭など
式年祭
(年祭・祖霊祭)
安定した故人様の御霊を、ご家族を御守りくださる新たな「祖霊神」(それいしん)として奉ります。 例)
三年祭・十年祭・五十年祭など

霊前祭・式年祭の儀式と実施時期がわかる「儀式一覧表」をご紹介

霊前祭・式年祭ではさまざまな儀式が行われますが、仏式の法要に慣れ親しんだ方には、あまりなじみのない儀式もあるかもしれません。

そこで、以下に儀式の種類や実施時期、概要がひと目でわかる表を掲載します。それぞれの儀式に意味や実施時期があるため、儀式に参列される際の参考になさってください。

「霊前祭」と「式年祭」/儀式一覧表
儀式の種類 実施時期(命日を1日目とする) 概要
帰家祭 神式の葬儀「葬場祭」の翌日 葬儀が無事に終わったことを霊前に報告する儀式です。
十日祭 死後10日目 仏式における初七日に当たります。
二十日祭 死後20日目 二十日祭から四十日祭までは省略されることが多くあります。
十日祭とあわせて「毎十日祭」とも呼ばれます。
三十日祭 死後30日目
四十日祭 死後40日目
五十日祭 死後50日目 仏式における四十九日法要(忌明け)に当たります。
近年では五十日祭当日に「清祓いの儀」を執り行うことが多く、これをもって忌明けとなります。
合祀祭 五十日祭と同日(近年の傾向) 霊璽を祖霊舎に移します。
故人様は祖霊となり、家の守り神となります。
百日祭 死後100日目 仏式における百か日に当たります。
一年祭 1年後 仏式における一周忌法要に当たります。
親族・友人で集まり、神主に祝詞をあげてもらいます。
三年祭 3年後 三年祭は一年祭と同様に大きめの規模で行います。
五年祭以降は、ご家族のみの小規模で行うことが多くなります。
五年祭 5年後
十年祭 10年後
五十年祭 50年後 五十年祭をもって弔い上げとすることが一般的です。

次項より、各儀式について、その意義も含めて詳細に解説していきます。

霊前祭の各儀式の解説

神式における儀式の一覧表をご紹介しましたが、ここでは「霊前祭」の各儀式の詳細について、詳しく解説します。なお、細かい内容については、同じ神式でも地域や神社によって異なる場合がありますので、ご留意ください。

帰家祭(きかさい)

神式の葬儀である葬場祭(そうじょうさい)の翌日に行う儀式で、翌日祭(よくじつさい)ともいわれます。霊璽やお墓に対し、葬儀が無事に終わったことを奉告する儀式です。

十日祭・毎十日祭(まいとおかさい)

十日祭は、仏教における「初七日法要」にあたる神式の祭事です。ご親族や知人が集まり、神主に祝詞をあげてもらい、霊祭後、会食を行うこともあります。

その後、十日ごとに二十日祭(にじゅうにちさい)、三十日祭(さんじゅうにちさい)、四十日祭(よんじゅうにちさい)と続きます。これらは総称して毎十日祭と呼ばれますが、ご遺族だけで小さく営むことが多いようです。

ただし、昨今ではさまざまな事情により、毎十日祭を簡略化して葬儀当日に行うことも少なくありません。

五十日祭

神式において命日から50日目に行われる五十日祭は、仏式の「四十九日法要」にあたります。また、近年では、故人様の命日から封じていた神棚の封印を解く「清祓いの儀(きよはらいのぎ)」を五十日祭の当日に行うことが多く、ご遺族はこれをもって忌明けを迎えます。

合祀祭

合祀祭は、霊璽を祖霊舎に移し、故人様が家を守る神様になったことを示す神式の大切な儀式です。五十日祭もしくは百日祭・一年祭とあわせて行われますが、特に五十日祭と同時に行うことが多いようです。

百日祭

神式における百日祭は、亡くなってから100日目に行うもので、仏式における「百か日法要」にあたります。五十日祭と同様、神主を招いて祭儀を行うなど、手厚く行います。

式年祭の各儀式の解説

式年祭の各儀式を行う時期や意味は、以下の通りです。なお、細かい内容については、霊前祭と同様に、地域・神社によって異なる場合があります。

一年祭

命日から1年後に行う神式の儀式で、仏式の「一周忌法要」にあたります。親族や友人を招いて行われ、神主に祝詞をあげてもらった後、会食をすることが一般的です。なお、式年祭は三年祭からとするところもあります。

三年祭(さんねんさい)、五年祭(ごねんさい)、十年祭(じゅうねんさい)

それぞれ、命日から3年後、5年後、10年後に行われる儀式です。三年祭は一年祭と同様、ご親族や友人が集まり、神主に祝詞をあげてもらいます。多くは、祭礼後に会食を行いますが、五年祭以降はご家族のみの小規模で行うことが多いようです。

なお、仏式では神式と異なり、一周忌が過ぎたあと、亡くなった日を1回目の命日として数えるため、三回忌法要は命日から2年後に行います。混同して、開催時期を間違えないように注意しましょう。

五十年祭(ごじゅうねんさい)、百年祭(ひゃくねんさい)

命日から50年後、100年後に行います。十年祭以降は親族で集まること自体が難しくなるため、五十年祭を弔い上げとし、最後の儀式とすることが多いといえます。

3.神式の法要で注意することは?香典袋・お供え物やマナーを解説

神式においても、仏式の法要同様にしきたりやマナーがあります。知らずに振る舞うと、周りの方を不快にさせてしまうかもしれません。神道独自の決まりごとや、注意しなければならないポイントもありますので、それらについて詳しく解説します。

神式の法要における香典袋の選び方

神式での香典袋には、白無地に「白と黒の水引」が入った不祝儀袋を使います。蓮の花が印刷された不祝儀袋は仏式の法要を連想させてしまうため、使用しないようにしましょう。

水引の色やデザインは、基本的に包む金額によっても異なります。たとえば、実物の黒白の水引が掛かった香典袋は、10,000〜30,000円を包む場合に使用します。それよりも高額を包む場合は、双銀の水引を使うことが一般的です。

なお、黄白など、水引の色は地域によって異なることがあります。祝い事を表す紅白の水引はNGですが、そうでなければ地域差があるからといってマナー違反になることはありません。

香典袋の表書きの書き方

表書きは、水引の上部中央に書く言葉です。神式の香典袋の表書きとしては「御玉串料(おんたまぐしりょう)」「御榊料(おさかきりょう)」「御神前(ごしんぜん)」が一般的です。

ただし、「御神前」は式年祭の後から使用できる言葉ですので、式年祭前の表書きに使わないよう注意しましょう。

また、上記の他に「御霊前」を使っても問題ないとされています。神道においては、亡くなった人は御霊となり、家の守護神となって子孫を守るとされるためです。

※神式の一年祭における「香典袋の選び方や表書きの書き方」については、こちらの記事の中で詳しく解説しております。

神式での法要のお供え物のマナー

神式でのお供え物は「神饌物(しんせんぶつ)」といい、神様に捧げる食事という意味があります。そのため、お供え物には、果物やお菓子、清酒などを用意するのが一般的です。

なお、仏式の法要のお供え物であるお線香、ろうそくは、神前に供えるものではないため、間違えないようにしましょう。

神式の法要における服装

神式においても、仏式と同じように喪服を着用します。男性は黒いスーツに白いシャツと黒いネクタイ、女性はひざ丈まである黒のスーツやワンピースが基本です。

カバンや靴なども黒色とし、派手な装飾を身に着けることは避けます。アクセサリーも華美なものにならないよう、気を付けましょう。

※以下は仏式の法要についての記事ですが、服装や身だしなみのマナーについて参考にしていただけます。ぜひご一読ください。

数珠や仏教関連の言葉についての考え方

神式の儀式に参列する際には、神式独自の作法を理解しておくと、思いやりのある対応ができます。

たとえば数珠は、仏教の法要において使用するものですから、神式の儀式では使わないため持参する必要はありません。ただし、もしご自身が仏教徒であり、ご自分の宗教で故人様のことを思って悼むことを望む場合には、お相手に配慮した上で、数珠を持参するのは、問題ないといえます。

また、仏教に関連する言葉である「他界」「成仏」「冥福」「供養」「往生」などは、一般的に、神式のお葬式ではできるだけ使用しないように配慮することが推奨されています。しかし、お相手との関係性やご家族が基本とするマナーに配慮した上で使用する場合は、差し支えないでしょう。

以下に、仏教関連の言葉の言い換え例を参考までに示します。違いを理解しておくと、ご家族への思いやりをもって適切に対応できるでしょう。

仏教関連の言葉 言い換え例
ご他界 ご逝去
成仏なさって 永眠なさって
ご冥福をお祈りいたします ご平安をお祈りいたします
供養させていただきます 拝礼させていただきます
大往生だったとお聞きしました 安らかなご逝去だったとお聞きしました

4.神式での法要で知っておきたい作法

その他、神式の法要で知っておきたい作法についてご紹介します。

玉串奉奠の方法

神式における「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」は、仏式でのお焼香にあたるものです。榊(さかき)の枝に、紙垂(しで)を付けた「玉串」を捧げます。この紙垂は、白い紙や布を折って作られたもので、清浄を象徴しています。

玉串奉奠は、神主から玉串を受け取り、以下の方法で行います。

1.右手で玉串の根本を上から持ち、左手を葉先の下に添える。玉串の葉先がやや高くなるよう、胸の位置まで持つ。
玉串奉奠の方法

2.玉串案という台の前でお辞儀をし、玉串を時計回りに90度回転させ、根本を持ったまま祈りを捧げる。左手を根元まで下げる。
玉串奉奠の方法1

3.右手で葉先を支えるように持ち替え、玉串を時計回りに回転させて、根元が祭壇に向くようにする。
玉串奉奠2

4.玉串を玉串案に置き、二礼二拍手一礼をする
玉串奉奠3

礼拝の方法

神式の礼拝は、「二礼、二拍手、一礼」の形で行います。2回頭を下げ、2回柏手を打ち、最後に1回礼をするのが決まりです。

初詣などでは拍手の時に大きく手を叩きますが、葬儀や霊前祭・式年祭では音を立てないようにします。これを「しのび手」といいます。

5.神式の法要独自の考えを尊重し、故人様の魂を祀りましょう

神葬祭のあとに行われる神式の儀式は「故人様の魂を鎮め、その家の守り神とするため」に行われるため、「故人様の冥福を祈って供養をするため」に法要を行う仏教とは考え方が異なります。また、香典袋の表書きやお供え物、作法なども、仏式の法要とは異なる点があるため、戸惑われることがあるかもしれません。

しかし、故人様、そしてご家族に対し心からのお悔やみの気持ちを伝えるためには、これらのマナーに配慮することが大切です。ただし、ご自身が信仰している宗教があれば、周囲に配慮しつつ、信仰に基づいて礼拝を行っても差し支えないでしょう。

最も重要なことは、故人様とご家族に対する思いやりの心を持つことです。そのためにも、神式のマナーや作法を理解した上で、ご自身が故人様やご家族のために最善だと思う方法で法要に参列するようにしましょう。

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