自然葬の種類は?それぞれの費用相場やメリット・デメリットをご紹介します
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- 【 葬儀の種類 】
価値観が多様化し、故人様の見送り方も変化してきています。映画やテレビの中でも「自然葬」という言葉を耳にする機会が増えたこともあり、さまざまな自然葬が注目されるようになりました。
このブログを読んでくださっている方の中には、「ご自身が自然葬を望んでいる」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで、今回は、自然葬という葬送方法が本当に候補となり得るかどうか、自然葬の種類や、費用相場、メリット・デメリットについてご紹介します。
【もくじ】
1.自然葬とは
自然葬という言葉を耳にしたことはあるものの、正しい内容についてよく理解していない方もいらっしゃるかもしれません。ここでは自然葬の概要についてご説明します。
自然葬とは
自然葬とは、故人様のご遺骨を海や山の自然に還す弔い方のことをいいます。これは、「人間も自然の中に存在する生き物であるからこそ、自然の循環の中に回帰していこう」という考えに由来する葬送方法であり、日本でも古くから行われてきました。
自然に還す方法は様々ありますが、それらの総称として自然葬といわれており、墓石や人工物を立てたり、墓地を作るために木々を伐採したりする必要がないことが特徴です。自然に優しい葬送方法であるともいえるでしょう。
散骨と埋葬の違いは?
自然葬には散骨する方法と埋葬する方法があります。どちらも自然に回帰することを目的とする点は同じですが、散骨はご遺灰を「まく」行為であり、埋葬は「埋める」行為であるため、供養の方法に違いがあります。
また、関わる法律も異なります。散骨については、現在の日本において禁止、または制限するような法律はありません。しかし、一般社団法人日本海洋散骨協会は、環境保全、トラブル防止の観点からガイドラインを制定しており、「散骨は節度をもって行われる限り自由に行うことができる」と記載しています。
一方、埋葬については、日本にも法律の定めがあり、埋葬ができるのは許可を受けた場所(墓地)のみと決められています。墓地以外の場所に埋葬した場合、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」に違反することになります。
2.自然葬が注目されるようになった背景は?
自然葬が注目されるようになった背景には、社会の変化に伴って葬送についての意識が変わったことが挙げられます。
現代の日本では少子化が進んでいます。さらに都心部へ移住する若い世代が増え、先祖代々の墓を受け継ぎ守り続けることが難しい環境になりました。その結果、代々承継されてきたお墓を存続することができず、「墓じまい」をせざるを得ない世帯も増えているようです。
また、首都圏を中心に墓地を作れる場所が減ってきているため、新しい墓地を購入しようとしても1世帯で一つの区画を購入できないという状況が多く、購入できても高額で大きな負担となってしまうことも懸念されます。
それらに加えて、時代の流れでナチュラル志向が支持されてきている点も、自然葬が注目されるようになった理由の一つといえるでしょう。
3.自然葬の種類は?
ここでは、自然葬の2つの種類(散骨する方法と埋葬する方法)についてご紹介します。
散骨する方法
散骨には複数種類の方法があります。それぞれ散骨をする場所や散骨方法が異なるため、種類ごとに具体的な方法をご説明します。
海洋葬
海洋葬とは、ご遺骨を海に散骨し故人様を供養する葬送方法のことで、海洋散骨ともいわれます。生前、海が好きだった方や、死後は海に還りたいなどの自然思考の考えを持った方が海洋葬を選ぶことが多いようです。
散骨して問題ない領域を選ぶ、ご遺骨は必ず粉砕したものを散骨するなど、守るべきマナーがあるため、海洋散骨を希望する場合には必ず葬儀社に相談することをおすすめします。
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山葬
山葬とは、ご遺骨を山に散骨するという葬送の方法です。登山が好きだった方や、山景色が好きだった方が山葬を選ぶことが多いといえます。
山葬を行う場合、ご自身やご家族が所有している山に散骨するのは自由ですが、所有していない山に散骨する場合には、山の所有者に許可を取る必要があるので気をつけましょう。また、その山地の条例で散骨を禁止していることもあるため、事前に確認しておく必要があります。
宇宙葬
宇宙葬は、1997年にアメリカで始まった葬送の方法で、故人様の遺骨や遺灰を専用カプセルに納めてロケットや人工衛星で打ち上げ、宇宙空間で散骨を行います。月面にカプセルを安置する方法や、人工衛星に乗せて打ち上げ、その後大気圏に突入して流れ星となるような方法などがあります。
バルーン葬
バルーン葬は、バルーンまたは、気球を使った葬送の方法のことをいいます。バルーンを使う場合には、大きなバルーンの中に遺灰の一部を入れて、成層圏まで飛ばします。成層圏まで達すると、気圧によりバルーンは膨張し、中に入れた遺灰が宇宙に散骨されます。
気球を使う場合にも、成層圏まで上昇させ、その空中でご遺骨を散布します。
バルーンや気球を飛ばすことになるため、電線や電波塔にぶつかることがないように、実施する場所は慎重に決める必要があります。必ず専門業者に相談しましょう。
埋葬する方法
埋葬する方法としては、樹木葬があります。樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花を墓標として遺骨を埋葬します。緑豊かな場所に樹木を植えて、その周りに遺骨を埋葬することを基本とした葬送方法であるため、「死後は自然に還りたい」「自然の中で眠りたい」という自然思考の方の意向に沿う葬送の方法といえます。
ただし、植樹して埋葬する場所はどこでもよいというわけではなく、お墓の墓埋法に従い、遺骨の埋葬が許可された場所(霊園内)であることが必要です。持ち家であっても、遺骨を埋葬することは法律で許されていないので気をつけましょう。
樹木葬には、一般的に次の3種類があります。
- ・合祀(ごうし)型
- ・共同埋葬型(集合型)
- ・個別埋葬型(家族型)
シンボルとなる木の下に他の人の遺骨と一緒に埋葬する方法
シンボルツリーの下に設けられたカロートの中に袋や骨壷に入れた状態で分けて埋葬する方法
墓石と同じように個別の墓標があり、その範囲の中に樹木を植え、その周りに埋葬する方法
人によっては樹木葬のイメージと異なる種類もあるため、どのタイプの樹木葬で葬送するかの選定は大切なポイントといえます。
4.自然葬に関する法律はあるの?
墓石を墓標とすることが一般的である日本で自然葬を行う際には、法律やマナーに違反することのないよう、正しい情報の元で葬送する必要があります。
自然葬に関する法律はない
自然葬に関しての法律は、今の日本にはありません。しかし、埋葬についての法律(墓地、埋葬等に関する法律)は存在します。また、守るべきマナーがあり、それらに違反しないように葬送することが必要です。
自治体の条例で規制されていることがある
自治体の条例により、散骨について規制されていることがあります。自治体によっても禁止内容や条件は異なるため、散骨をお考えの際は、その地域の条例に違反していないか、管理者、所有者の許可を得る必要があるかどうか等を確認する必要があります。
また、周囲の環境や人々の心情にも十分配慮した上で、散骨準備をしましょう。
5.自然葬の注意点は?
まだ馴染みの少ない自然葬には注意が必要な点もあります。ここでは自然葬で葬送する際の注意点についてご紹介します。
粉骨する必要がある
自然葬のように遺骨を自然に還す場合には、基本的に粉骨してから散骨しなくてはなりません。遺骨をそのまま撒く行為は死体遺棄罪に該当すると判断される可能性があるため、必ず、遺骨とわからないくらいパウダー状になるまで砕いた状態のものを散骨することが必要です。
樹木葬の場合には、霊園により粉骨が必須ではないこともあるので、埋葬する霊園のルールを守って葬送しましょう。
粉骨については、火葬した遺骨はもろくなっているため、ご遺族がご自身の手で粉骨することも不可能ではありません。しかし、ご遺骨は1〜2mm程度にまで細かく粉砕しなくてはならず、精神的な負担が大きいこともあり、粉骨業者に依頼するのが一般的といえます。
親族などから反対されることがある
故人様が生前、自然葬を望んでいたとしても、親族など周りから反対されることがあります。たとえば、自然葬の場合、後から遺骨を戻すことができないことも、その理由の1つとなりえます。
また、散骨する場合、墓石などの墓標がないため、従来、先祖のお墓参りを定例としていた方にとって、散骨は手を合わせる場所がなく、寂しさや物足りなさを感じる、という声も多いようです。
それらの理由を懸念して親族から反対される可能性もあるため、自然葬を希望する場合には、できれば生前からご遺族の同意を得ておくことをおすすめします。
土葬は禁止されている
現代の日本では、法律上は土葬することが可能ではあるものの、多くの自治体では土葬を禁止してします。たとえば、東京都、大阪府、名古屋市などの都市部の自治体では、条例により土葬を行うことは禁止されています。
また、土葬が可能な地域でも、どこでも埋葬できるわけではなく、市区町村で発行する「土葬許可証」と、墓地管理者の許可が必要となります。さらに土葬を許可している墓地を確保しておく必要があるため、難易度は高くなるでしょう。
これらの理由から、土葬を希望する場合には、事前に情報収集をするなど、生前からの準備が必要です。
6.自然葬の流れは?
自然葬を行う際の流れについて、散骨するケースと、樹木葬で埋葬するケースに分けてご紹介します。
散骨のおもな流れ
ご自身の終活、またはご家族の葬送で散骨を検討する際のおもな流れについて、ご紹介します。
1. 葬儀社に相談する
2. 葬儀社から散骨プランの紹介、段取りの説明を受ける
3. 契約をする
4. 逝去後、死亡届、死亡診断書を役所に提出し、火葬許可証を受け取る
5. 火葬し、埋葬許可証を受け取る
6. 火葬したご遺骨を葬儀社に預け粉末状にする
7. 散骨日程を決める
8. 散骨場所までの移動手段・宿泊先の手配をする
9. 葬儀社・散骨専門業者へ埋葬許可証を提出し、散骨場所まで行き散骨をする
*散骨専門業者によっては、埋葬許可証の提出を求めないこともあります。しかし、遺骨の一部を散骨し、残りは納骨、または手元に残す場合には、埋葬許可証が故人様のご遺骨であることの証明になるため、必ず保管しておきましょう。
樹木葬のおもな流れ
樹木葬を行う際のおもな流れについてご紹介します。
1. 樹木葬を行っている葬儀社に相談する
2. 葬儀社から樹木葬のプランや規定などの説明を受ける
3. 可能であれば実際に現地へ見学する
4. 契約する
5. 樹木葬をする墓地の使用許可証を受け取る
6. 逝去後、死亡届、死亡診断書を役所に提出し、火葬許可証を受け取る
7. 火葬し、埋葬許可証を受け取る
8. 納骨する日程を決める
9. 墓地管理者へ埋葬許可証を提出し、所定の場所へ遺骨を埋葬する
7.自然葬の費用相場は?
自然葬と聞くとお墓を購入する必要がないため、葬送の費用を抑えることができると思われる方もいらっしゃることでしょう。そこで、実際の費用相場はいくらくらいになるのか、葬送の種類別にご紹介します。
海洋葬の費用相場
海洋葬の費用は、海へ出る時の船のサイズや乗船条件などにより、幅広い価格設定があります。ご遺族が乗船して自分達の手で散骨をする場合には、10〜50万円が相場とされていますが、ご遺族にかわり、散骨業者が散骨を代行する場合(委託散骨)は、5〜10万円が相場となり、少し費用が抑えられることが多いようです。
業者により散骨する際の粉骨加工が料金に含まれている場合と、別途費用が必要となる場合があるため、総額として費用はどのくらいかかるのかを確認してから依頼しましょう。
※海洋葬の流れや費用について詳しく知りたい場合は、こちらの記事が参考になります。
https://www.hana-sougi.com/plan/kaiyosankotsu/flowandcost
山葬の費用相場
山葬の場合、ご自身で散骨をする際に必要となる費用は、粉骨する際にかかる費用や渡航費用です。粉骨にかかる費用は1〜3万円程が相場です。
山葬を専門業者に委託した場合には、その業者の山葬プランの内容にもよりますが、5〜30万円程度が費用相場といえるでしょう。
宇宙葬の費用相場
宇宙葬の費用については、内容により大きな差があります。例えば、ロケットを飛ばして月面に安置する方法の場合、費用相場は120万円程からと高額です。人工衛星に乗せて打ち上げるのみのプランの場合は、30万円程が費用相場とされています。
バルーン葬については、25万円程度から可能となるようです。
樹木葬の費用相場
樹木葬の場合には、お墓の墓石を購入する必要がないため、お墓を購入するよりは費用が抑えられると考えられます。株式会社鎌倉新書が2022年に行った「お墓の消費者全国実態調査」によると、一般的な墓石を建てるお墓の平均価格は158.7万円であり、樹木葬の平均価格はその半分以下の69.6万円という結果が発表されています。
出典:第13回 お墓の消費者全国実態調査(2022年)
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_2022/
調査主体:株式会社鎌倉新書 いいお墓
調査期間:2022年1月14日(金)~1月26日(水)
調査対象:2021年1月~同年12月にお墓探しの総合情報サイト「いいお墓」経由でお墓を購入した方
調査方法:インターネット調査
有効回答数:947件
8.自然葬のメリット・デメリットとは?
近年では、自然葬を選択する人が増えてきていますが、どのようなメリットを感じて自然葬を選択しているのでしょうか。ここでは、自然葬のメリットに加えてデメリットについてもご紹介します。
散骨のメリット・デメリット
散骨のメリット・デメリットは、下記のようなことが考えられます。
【メリット】
・故人様が自然回帰を望んでいた場合、その希望を叶えられる
・お墓の管理が必要ないため、後世への負担を懸念しなくて済む
・お墓に埋葬するよりも費用の負担が少ない
【デメリット】
・墓標がないため、ご遺族がお墓参り等で故人様に会いに行ける場所がなく、寂しさを感じることがある
・認知度の低い葬送の形であるため、親族全員の同意が得られないことがある
・墓標がないため、故人様の生きた証を後世に残しづらい。
樹木葬のメリット・デメリット
樹木葬で埋葬する場合のメリット・デメリットは、下記のようなことが考えられます。
【メリット】
・故人様が自然回帰を望んでいた場合、その希望を叶えられる
・樹木葬ができる場所は永代供養であることが多いため、お墓の承継者は必要ない
・一般のお墓よりも費用負担が軽減できることが多い
【デメリット】
・カロート(納骨室)に納めるのではなく、遺骨を土に直接埋葬する形式の場合、後で遺骨を取り出すことができない
・樹木葬ができる霊園は限られており、景観や立地などにおいて、故人様の理想通りの樹木葬ができるとは限らない
・樹木葬のプランによっては総額が高くなり、一般のお墓の費用を上回るケースもある
9.自然葬を選択した場合のお参りの方法は?
自然葬を選択した場合、お参りはどのようにすべきかなど、供養の方法についてご紹介いたします。
散骨の場合
全ての遺骨を散骨した場合、手元に遺骨は残りませんが、仏壇を設ける方が多くいらっしゃいます。
日頃の供養は、故人様のお写真や、故人様が使用していた物などを飾る祭壇に手を合わせて行います。また、法事や法要も行うことが可能です。
海洋散骨をおこなった場合には、散骨をした海が見える場所から、散骨した方向に向かって手を合わせるケースや、一周忌や三回忌などの大切な節目の時に、クルーザーをチャーターして、その上で法要を行うケースも見られます。
山葬の場合は、立ち入りができる場所でしたら、自由にお参りすることができます。山に入ることができない場合は、山の麓で手を合わせてお参りし、供養をする方法もあります。
宇宙葬やバルーン葬の場合には、空を見上げて手を合わせることが供養となるでしょう。
また、いずれの散骨方法の場合も、全ての遺骨を散骨することもあれば、遺骨の一部を手元に残すこともあります。
故人様の意向で散骨をする場合でも、遺族としては離れがたい気持ちもあるでしょう。そのような場合に、どちらの意向も叶える方法があります。遺骨の全てを散骨するのではなく、遺骨の一部を小さな骨壷やペンダント等に入れて、ご遺族の手元に残し供養する「手元供養」という方法です。手元供養もまた、自然葬とあわせて需要が増えてきている供養の方法といえます。
※手元供養の方法や相場、さまざまな供養品については、こちらの記事が参考になります。
https://www.hana-sougi.com/blog/hand/
樹木葬の場合
樹木葬の場合、お墓参りと同じように、その樹木の前で手を合わせることができるでしょう。ただし、里山型の樹木葬の場合には、郊外の山の中であることもあり、一般的なお墓参りの服装や荷物ではなく、歩きやすい靴や服装をするなどの支度が必要になるかもしれません。
また、樹木葬の場合、火事を防ぐためにお線香を禁止していることも多く、環境保護のために食べ物のお供物を禁止していることもあります。埋葬した場所のルールに従い、マナーのあるお参りをして、供養しましょう。
10.花葬儀の自然葬
花葬儀では、生前、ご本人からご自身の弔い方についてご相談をお受けしております。その中で、自然葬に関するご相談も増えており、海洋葬や樹木葬などのアドバイス・サポートもさせていただいております。
「自分の死後は自然葬で弔ってほしい」このように漠然とでも自然葬をお考えの場合には、ぜひお元気なときに花葬儀にご相談ください。
自然葬を希望される場合には、その意向を生前に家族に伝えておくことが大切であり、事前に自然葬の種類や細かい内容、諸注意事項を知っておくことも必要です。そのため、花葬儀では自然葬に必要なご案内をさせていただき、事前準備もお手伝いさせていただきます。ご自身やご家族のために、どのような弔い方がベストなのかを一緒に考えていきましょう。
花葬儀の海洋散骨については、こちらのページをご覧になってください。
11.自然葬を選択する?家族と一緒に弔い方について話し合いましょう
時代の流れと共に弔い方についての人々の考え方は変わってきています。自然に還ることを望み自然葬を選択するケースもあれば、ご自身やご家族が先祖代々守ってきたお墓に入ること、または管理することを希望しない(管理する人がいない)ため、計画的に墓じまいをして自然葬を選択するケースもあるでしょう。
ご家族の意向を確認するためにも、今のうちにお墓の管理や、それぞれの弔い方について話し合いの場を設けてみてはいかがでしょうか?
自然葬を候補にお考えの際には、ぜひ花葬儀にご相談ください。