後飾り祭壇とは?飾り方、お供え物、設置場所、処分方法を宗教・宗派ごとに解説
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
「後飾り祭壇(あとかざりさいだん)」という言葉を、葬儀の準備の中で耳にすることがあります。普段聞きなれない言葉であるため、「どういうものなのなんだろう」「どんな風に準備したらいいんだろう?」と疑問に思う方も多いでしょう。
そこで今回は、後飾り祭壇について、意味や役割、飾り方、そして処分方法まで、詳しく解説します。宗教・宗派ごとの違いもご紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
1.後飾り祭壇とは?
そもそも後飾り祭壇には、どのような意味や役割があるのでしょうか。
各宗教における位置づけも含め、詳しく解説します。
後飾り祭壇の意味や役割
後飾り祭壇とは、故人様の遺骨を火葬後、ご自宅において一時的に安置する祭壇のことです。葬儀時に用意される葬儀祭壇とは別に、ご自宅に設けられ、お通夜や葬儀に参列できなかった方が後日弔問で訪れた際、お参りをしていただく場所にもなります。
このような祭壇を一般的に「後飾り祭壇」と呼びますが、「後飾り祭壇」という用語は、主に仏式において使われるものです。宗教によっては、別の呼び方をする場合もあります。
なお、後飾り祭壇と他の祭壇(枕飾り・本祭壇)との違いについては、「枕飾りとは?準備の方法や宗教ごとの飾り方、マナーを解説!」の記事が参考になります。
各宗教における後飾り祭壇の位置づけ
こちらでは、宗教・宗派ごとの後飾り祭壇の位置づけや意義に焦点を当て、詳しく解説します。
仏式における後飾り祭壇
浄土真宗を除く他の仏教宗派では、亡くなってから四十九日の間に、魂が浄土へ行くための裁判を受けるとされています。この間、故人様の魂を安置する場所として、後飾り祭壇は重要な役割を担うのです。
一方、浄土真宗では、亡くなった方は死後すぐに成仏し仏様になるとされています。そのため、仏壇のご本尊が特に重視されますが、ご遺族の「故人様をしのびたい」という思いから、後飾り祭壇のお骨に手を合わせる習慣も根付いているといえるでしょう。
なお、後飾り祭壇は「後飾り」「自宅飾り」「後壇(あとだん)」などと呼ばれることもあります。
神式における後飾り祭壇
神式の葬儀における後飾り祭壇は、「仮霊舎(かりれいしゃ・かりみたまや)」という祭壇です。仮霊舎には、霊璽(れいじ:仏式の位牌に相当するもの)を安置します。
霊璽には、故人様の御霊(みたま)が宿っているとされており、仮霊舎は忌明けまでの間、故人様の霊を祀る(まつる)場所として重要な役割を果たします。
キリスト教式における後飾り祭壇
キリスト教が普及している欧米では土葬が一般的であるため、遺骨を安置する後飾り祭壇の習慣はありません。しかし、日本においては多くの自治体で土葬が禁止されているため、葬儀後に遺骨を祭壇に安置する方もいらっしゃいます。
キリスト教式においては、後飾り祭壇は宗教的な役割はないものの、遺骨を安置し、故人をしのぶ場となっています。
2.後飾り祭壇はいつ用意する?
故人様がご遺骨となって自宅に戻ってくるまでの間に、後飾り祭壇を用意することが多いようです。
斎場で葬儀を行った場合は、葬儀社のスタッフ、もしくは火葬に付き添わないご遺族が、故人様の出棺後に自宅に戻って用意します。一方、自宅で葬儀を行った場合は、故人様が出棺した後、葬儀用の祭壇を片付けてから用意をします。
3. 後飾り祭壇の設置期間は?
後飾り祭壇をいつまで飾るかは、宗教・宗派によって異なります。
こちらでは、後飾り祭壇の設置期間について宗教・宗派別に解説します。
仏式の場合
仏式では、浄土真宗を含め、基本的に遺骨が自宅に戻ってきてから四十九日を迎え、忌明けするまで後飾り祭壇を設置します。しかし、仏壇や新しく建てる予定のお墓が間に合っていないなどの理由で、四十九日以降も後飾り祭壇を使用するケースがあります。
神式の場合
神式の場合は、遺骨が自宅に戻ってきてから五十日祭や合祀(ごうし)祭を迎えるまでの間、後飾り祭壇である仮霊舎を設置することが一般的です。
合祀祭は、仮霊舎に祀ってあった故人の霊を祖先の霊と共に祀るための儀式です。この際、故人の霊を仮霊舎から祖霊舎に移します。
五十日祭と合祀祭は一緒に行われることが多いため、設置期間は五十日祭までとなることが多いようです。
キリスト教式の場合
キリスト教式の葬儀には後飾り祭壇に相当する概念がないため、後飾りをいつまで設置するかの一般的な規定はありません。一般的には納骨のタイミングまで、またはカトリックの追悼ミサ、プロテスタントの召天記念日を迎えるまでとするところが多いようです。
4.後飾り祭壇はどこに設置する?
後飾り祭壇を設置する方角には、厳格な決まりはありません。
仏教においては「十方浄土(じっぽうじょうど)」という考え方があり、「あらゆる方角に無数の神様が存在する」とされるためです。神式やキリスト教式においても、後飾り祭壇の位置や向きに特定のルールはありません。
仏式の場合で仏壇がある場合は、仏壇の前か横に設置するのが一般的です。仏壇がない場合は、仏教において「仏壇の向きで一般的に最適とされる方角」に基づき、部屋の西側(東向き)や北側(南向き)に一般的に配置されるようです。
後飾り祭壇は長く自宅に飾るものですので、迷ったら「お参りがしやすい」「直射日光が当たらない」「湿気がたまりにくい」ことも考慮しましょう。
5.後飾り祭壇を準備する方法
ここからは、後飾り祭壇が必要になったらどのように準備すればよいのかについて、ご紹介します。後飾り祭壇を準備する方法には、以下の二通りの方法があります。
葬儀社に依頼する
後飾り祭壇を準備したい場合は、葬儀社に後飾り祭壇の用意を含めた葬儀プランを組んでもらうことが可能です。葬儀社によっては、後飾り祭壇に必要な道具の用意や飾り付けまですべて行ってくれるところもあります。
花葬儀では、後飾り壇の設置や飾り付けを含めたプランをご用意しております。一般葬、家族葬、一日葬などのプランでは、葬儀後のアフターサポートとして後飾り一式をご準備いたしますので、ご安心ください。
自分で購入やレンタルの手配をする
後飾り祭壇は、ご自身で購入することもできます。また、数は限られていますが、専門店からのレンタルも可能です。
ただし、後飾り祭壇に必要なものは宗教宗派によって異なり、すべてを揃えるのには時間がかかります。葬儀は悲しみの中、タイトなスケジュールで進行していきますので、時間的・精神的余裕を持つためには、葬儀社へ依頼する方が便利なこともあるでしょう。
6.【宗教別】後飾り祭壇に必要なものと飾り方は?お供え物は?
ここからは、後飾り祭壇に必要なものと飾り方の例を、宗教・宗派別にご紹介します。
なお、後飾り祭壇の飾り方は地域や宗派等によって違いますので、ご不安な場合は菩提(ぼだい)寺などに確認してください。
浄土真宗以外の仏式の場合
浄土真宗以外の仏式の後飾り祭壇について、必要なものと飾り方、お供え物は以下の通りです。
必要なもの・飾り方
浄土真宗以外の仏式の後飾り祭壇に必要なものを、下記に記しました。香炉、ロウソク台、花立ては「三具足(みつぐそく)」と呼ばれ、祭壇には欠かせない仏具です。
ただし、それぞれを祭壇のどこに置くかについては、厳密な決まりはありません。下記は、弊社における後飾り祭壇の配置例ですので、配置の参考になさってください。
なお、最近はマンションにお住まいの方が増えており、場所の関係から、祭壇を設けないことも少なくありません。その場合は、代わりにタンスや机の上に配置することが多いようです。
【棚の設置】
白い棚を準備します。
白色以外の場合は、棚に白布をかけます。
【飾り付け】
二段の棚に、下記を設置します。
<上段>
・遺影
・白木位牌(仮位牌)
・遺骨
<下段>
・防炎性の飾り布シート(焼香台とロウソク台の下に引きます)
・香炉、香炉灰
・ロウソク台、ロウソク
・花立て
・線香入れ(未使用の線香を入れます)
・鈴(りん)、鈴棒
・ライター
こちらに加え、お供え物をしたり、必要に応じてお香典をお供えする名刺盆を置いたりします。必要な物や飾り方は、地域や宗派・寺院によって違うことがありますので、ご不安な場合は菩提寺に確認することをおすすめします。
お供え物
仏式のお供え物では、「五供(ごくう)」を基本とします。五供とは、「香」「花」「灯明(とうみょう)」「浄水(じょうすい)」「飲食(おんじき)」の5つを指します。
それぞれの説明を以下にまとめましたので、参考にご覧ください。
お供えの種類 | 概要 |
---|---|
香 |
・線香のこと。
・自分やその場を清めたり、仏様に香りを納めたりする意味がある。 ・四十九日が過ぎるまでたき続けるとよいという説もあるが、最近はお参りするときだけたくことが多い。 |
花 |
・生花。
・トゲや毒があるものは、血を流すことを連想させるためNG。 |
灯明 |
・ロウソクの火。
・線香と同じように、四十九日が過ぎるまでともし続けるとよいという説があるが、最近はお参りのときだけともすのが一般的。 |
浄水 |
・水道水やミネラルウォーター、故人様のお気に入りのお茶でもOK。
・1日に1回は取り換えるようにしましょう。 |
飲食 |
・ご飯を仏飯器に盛りつけます。他にも、故人様のお好きだった料理やお菓子、果物などを用意してもよいでしょう。
・傷みやすいもの、匂いの強いものは避けます。 |
浄土真宗の場合
浄土真宗での後飾り祭壇は、棚や台に遺骨、遺影、位牌を置くのみとします。浄土真宗には、仏壇にいるご本尊を大切にするという考え方があるからです。その際、棚を白い布で覆ってもよいでしょう。
線香、お花、ロウソク、仏飯、水、その他のお供え物は後飾り祭壇ではなく、仏壇に飾ります。
神式の場合
神式における後飾り祭壇にあたる仮霊舎に必要なものと飾り方、お供え物は、以下の通りです。
必要なもの・飾り方
基本的には、次のものを用意します。
【棚の設置】
「八足机(はっそくのつくえ)」と呼ばれる白木台を用意します。八足机は神前に物を供えるときに使う机で、名前の通りS字型の足が片方に4本ずつ、合計8本ついています。
棚が白木素材以外の時には、白い布で覆うのが一般的です。
【飾り付け】
仮霊舎に必要なものと配置例は、以下の通りです。
<上段>
・遺骨
・遺影
<下段>
・霊璽
・榊(さかき)
・火立(ほだち/神式におけるロウソク台)、ロウソク
・お供え物
榊・火立は、対で2セット準備し、左右対称にして配置することが一般的です。ご遺骨を埋葬する前であれば、仮霊舎の脇に故人様のご遺骨を置くこともあります。
また、上記に加え、お供え物を載せるために三方(さんぽう/鏡餅を載せる台としてよく知られる)などを準備することもあるようです。
お供え物
神式においては、お供え物として基本、下記を用意します。
・御神酒(おみき):徳利(とっくり)などに入れ、対で2つ用意します。
・水:水玉(みずたま)と呼ばれる器に入れます。
・洗米:皿に盛ります。
・塩:洗米と同様に、皿に盛ります。
上に挙げたもの以外をお供え物として用意することはほぼありませんが、それ以外を禁止しているわけではありません。故人様の好きだったものをお供えしたい場合は、ご家族で話し合って決めるようにしましょう。
必要な物や飾り方は、地域や各神社によっても異なりますので、ご不安な場合はお住まいの地域の神社に確認することをおすすめします。
キリスト教式の場合
上にのべたように、キリスト教にはそもそも後飾り祭壇という概念がないため、特定の物品を飾るしきたりもありません。
棚や机に、遺骨・遺影のみを飾る方が多いようです。加えて、十字架やロウソク、生花、聖書、お供え物を飾る方法も見られます。
お供え物に関する決まりも特にありませんが、パンやお菓子、故人様の好きだったものを中心に用意することが一般的です。
疑問がある場合は、所属されている教会に確認することをおすすめします。
7.後飾り祭壇の処分の方法は?
後飾り祭壇は、遺骨を一時的に安置するためのものですので、遺骨の埋葬が終わると役目を終えます。
ここからは、役目を終えた後飾り祭壇の処分方法をご紹介します。
白木位牌はお焚き上げをするのが通例
浄土真宗を除く仏教宗派の後飾り祭壇には白木位牌を飾りますが、この白木位牌は四十九日の法要後、本位牌へと交換されます。その際、故人様の魂も住職によって本位牌へと移されることとなります。その後、白木位牌は菩提寺に頼んでお焚き上げ(おたきあげ)してもらうことが通例です。
お役目を終えた白木位牌は、法的にはゴミとして処分しても問題ありません。しかし、故人様の名前が刻まれた位牌をゴミとして捨てることに心苦しさを感じる方も多いため、お焚き上げをするのが慣例となっています。
寺院や住職とお付き合いのない方は、専門の整理業者に頼んだり、ご自分で焼却処分をしたりするケースもあるようです。
使わなくなった棚などはゴミに出す
後飾り祭壇に飾っていた遺影や三具足(花立て、香炉、ロウソク台)、鈴などは、そのまま仏壇に置いて使うことができます。
必要の無くなった棚などは、自治体のルールに従ってゴミとして出します。
棚を捨てる手間が心配な場合は、ご自宅にある机や家具で代用する、もしくは段ボール製の祭壇を用意するのもひとつの方法です。
8.故人様・ご遺族様双方にとって心地よいと思える後飾り祭壇にしましょう
後飾り祭壇は、宗教によって細かな違いや、聞きなじみのない道具があります。そのため、準備に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、後飾り祭壇は、宗教儀式上における役割だけでなく、故人様を悼み、ご遺族の心を癒やす重要な役割も果たします。
故人様の魂が安らかに旅立てるよう、故人様・ご遺族様にとって心地よいと思える後飾り祭壇を考えてみてはいかがでしょうか。
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