「寝ずの番」の意味~過ごし方や近年の傾向・準備や服装を解説

「寝ずの番」の意味~過ごし方や近年の傾向・準備や服装を解説

「寝ずの番」という言葉について聞いたことはあっても、その具体的な意味や方法について、疑問を持っている方は少なくありません。寝ずの番とは一体何か、そしてどのように行うのか、がわからない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、寝ずの番の意味とその歴史的背景、最近の傾向について詳しく解説します。伝統的な風習に対する理解を深め、どのように取り入れるかの参考にしていただければ幸いです。

1.「寝ずの番」の意味・行う理由

寝ずの番とは、広い意味では「寝ないで番をすること」をいいますが、葬儀においては、「お通夜の後に故人様のそばに付き添い、翌朝まで見守る風習」を意味します。

寝ずの番は、かつての医療技術が未発達だった時代に起源があります。当時は、故人が本当に亡くなったかを確かめる手段が限られており、息を吹き返すことがないかを確認するために、夜通し見守ることが一般的でした。これが、寝ずの番の由来とされています。

現代においても、特にお通夜の翌日に葬儀・告別式が行われる場合、寝ずの番は故人様との最後のひとときを過ごす大切な時間とされています。

2.近年「寝ずの番」が短縮される傾向にある

近年「寝ずの番」が短縮される傾向にある

かつては明け方まで行われていた寝ずの番ですが、近年では時間が短縮される傾向にあります。ここでは、昨今の寝ずの番の傾向について、詳しく解説します。

お通夜が「半通夜」になることが多い

寝ずの番が短縮されるようになった理由に、お通夜が「半通夜」になるケースが増えていることが挙げられます。医学の進歩により生死を確認する方法が向上したため、一晩中故人様のそばにいる必要性が低減しました。このため近年では、夕方から始まり1時間から2時間程度で終了する「半通夜」が主流になっています。

火による火災の危険がある

伝統的な寝ずの番では、夜通しろうそくや線香を灯す習慣がありますが、夜を徹しての火の管理は困難であり、火災の危険性も伴います。実際、東京都は火災予防条例第23条において、不特定多数の人が集まる場所での裸火の使用に一定の規制を設けています。寝ずの番においても、安全対策が求められることが増えているのです。

斎場の規則により深夜に故人様のそばで過ごせないことも

斎場でお通夜、葬儀・告別式を行う場合には、故人様は通常、斎場の霊安室(安置室)で安置されます。斎場によっては、閉館時間や面会時間に制約が設けられており、深夜に故人様のそばに留まることが許されない場合もあります。そのため、寝ずの番を斎場内で行うことが難しくなっているのです。

以前はお通夜を自宅で行うケースがほとんどであったため、寝ずの番が自由に行えました。しかし現在では斎場でのお通夜が一般的となり、寝ずの番の機会も減少しています。

お通夜の翌日が葬儀ではないこともある

地域によっては、お通夜の翌日に葬儀や告別式を行わないケースも増えています。高齢化に伴い死亡者数が増加していることから、関東、特に東京周辺の大都市圏では、斎場や火葬場の予約が取りにくくなっているからです。

葬儀までに日数がある場合、ご家族は故人様とのお別れの時間をゆっくりと過ごすことができるため、一昔前に比べて寝ずの番を行う必要は少なくなっています。

地域・宗派や僧侶の考えにもよる

地域や宗派によっては、そもそも寝ずの番が行われないところもあります。また同じ宗派であっても、僧侶によって「寝ずの番をぜひしましょう」と推奨される場合もあれば、「無理のない程度でかまいません」と無理強いしない場合もあります。

かつては「故人が息を吹き返すかもしれないから」と、当たり前のように行われてきた寝ずの番ですが、現代では地域や宗派、僧侶の考え方により、必ずしも行う必要がないとされるようになっているようです。

3.寝ずの番は誰が行う?

寝ずの番は、誰が行わなければならないといった決まりはありません。一般的には、故人様と縁の深かったご家族やご親族が行うケースが多いようです。

また、寝ずの番を行う人数に定めはなく、複数人が交代で担当することも可能です。誰がどのように参加するか、ご家族やご親族間で相談して決めるとよいでしょう。

4.寝ずの番を行う方法・過ごし方

寝ずの番を行う方法・過ごし方

寝ずの番は、基本的には故人様との別れを惜しむものであり、特定の行動を必ずしなければならないわけではありません。
こちらでは、基本的な過ごし方の慣習をご紹介します。

1.寝ずの番をする人・順番を決める

まず、ご家族やご親族で話し合い、寝ずの番をする人を決めます。交代制で行う場合はタイムスケジュールを作成し、どのような順番で行うかを決めます。

2.線香・ろうそくをともしつづける

寝ずの番は、仏教においては線香とろうそくを夜通しともすことが一般的です。

線香の香りは、浄土の香りを象徴しているとされます。またろうそくの灯りは、故人様を極楽浄土にいざなう灯火の役割を持ちます。

ともす線香は、基本的には1本だけとされていますが、これは複数の線香を使用すると故人様が道を迷うと考えられているためです。

ただし、一時的に炎が消えてしまったからといって極楽に行けないわけではなく、無理なく途絶えないようにすれば問題ないとされます。現在では安全のために、お参りの時にのみ線香やろうそくを使うケースも増えています。

3.朝まで故人様のそばで過ごす

寝ずの番は、朝まで故人様とともに過ごすのが基本ですが、ひとりで全て担う必要はありません。ご家族やご親族が交代で故人様のそばに付き添ようにすれば、それぞれが適度に休息を取ることが可能です。それぞれの負担が少なくなるように工夫をしながら、寝ずの番を行うとよいでしょう。

5.寝ずの番を行うにあたっての注意

ここからは、寝ずの番をする上での注意点についてご説明します。

心身が消耗しているときは無理は禁物

ご家族は、故人様が亡くなられた悲しみの中、葬儀の準備に追われています。葬儀の準備やお通夜での弔問客対応により、心身ともに大きな負担を感じているかもしれません。

お通夜の夜に寝ずの番を行って体調を崩しては、しっかりとしたお見送りができなくなる可能性もあります。心身が消耗しているときは、無理をせず、適度に休憩を取ることをおすすめします。

火災・けがに要注意

夜通し線香やろうそくを燃やすことは、火災のリスクを伴います。特に、疲れているときに火を使うと、火災やけがの原因ともなり得ます。最近では安全性を考慮したろうそく型のライトなどもありますので、安全に配慮しながら故人様をしのびましょう。

お通夜の会場・宗派のルールを事前に確認

お通夜が行われる斎場によっては、夜間のろうそくや線香の使用に関する制限や、深夜の宿泊・出入りのルールが設けられていることがあります。事前に、斎場のルールを確認することも忘れないようにしましょう。

また、寝ずの番に使用する線香やろうそくの数、寝ずの番を行う方法についても、宗派の教えや地域の慣習により異なる場合がありますので、事前に菩提(ぼだい)寺などに確認することをおすすめします。

お通夜の会場における宿泊ルールやその傾向に関する詳しい情報は、「葬儀場における現代の宿泊事情や費用」の記事をご覧ください。

火を消すときは息を吹きかけない

仏教においては、口は不浄とされており、口から出る息も同様に不浄と考えられています。人の口から悪言などが発せられるため、そのように考えられているのです。そのため、ろうそくや線香の火を息を吹きかけて消すことは控えます。故人様への敬意を表して、線香やろうそくの火は、手であおいで消すようにしましょう。

6.お通夜・寝ずの番で準備するもの・服装

お通夜・寝ずの番で準備するもの・服装

自宅以外の場所で寝ずの番をする場合は、お通夜や寝ずの番で必要になるものを持参します。
こちらでは、お通夜や寝ずの番で準備するものをご紹介します。

お通夜の持ち物・服装

お通夜の持ち物として必要なものには、以下が挙げられます。

●お香典・ふくさ
お香典は表書きを書き、汚れないようふくさに包んでおきます。

●ハンカチ
白の無地か黒のフォーマル用のハンカチを用意します。色物や柄のあるハンカチは避けましょう。

●数珠
仏教葬の場合に持参します。必ずしも必須ではありませんが、持っている場合は持参するとよいでしょう。故人様の宗派の数珠でなくても、ご持参の手元にある数珠でかまいません。

服装については、急な通夜であれば地味な平服でも問題ありませんが、通夜のみの参列や時間的余裕がある場合は、喪服を着用することが一般的です。平服といっても普段着ではなく、男性であれば黒のスーツ、女性であれば黒のアンサンブルかワンピースなどとなります。

お通夜の服装について詳しく知りたい方は、葬儀参列者のマナーガイド「葬儀・葬式の服装・靴・髪型」をご覧ください。

寝ずの番をするにあたり追加で必要になるもの

次に、寝ずの番を行うために、追加で必要になるものをご紹介します。

寝るとき着る服・着替え

寝ずの番の服装に特別な決まりはないので、リラックスできる服を選びます。自宅でご家族のみで行う場合はジャージやパジャマでも許容されますが、自宅以外でご親族などもいる場合は、過度にカジュアルな服装は避け、シンプルで控えめなデザインの服を選ぶことが望ましいです。

また、翌日に葬儀や告別式に直接参加する場合は、喪服を事前に用意しておくとスムーズです。

アイマスク

寝ずの番では、部屋の電気を夜通し点けておくこともあるため、明るい中での仮眠が必要になることがあります。アイマスクを着用すると光を遮断できるため、より休息を取りやすくなります。

歯ブラシなどのアメニティーグッズ

仮宿泊する場所には、必要なアメニティーグッズが備えられていないことがほとんどです。そのため、歯ブラシや歯磨き粉、洗顔料、タオルなどの必要最低限のアメニティーグッズを準備する必要があります。髭剃りやメイク道具なども、必要に応じて用意しましょう。

7.寝ずの番は意味や注意点を理解し、状況に応じて行いましょう

お通夜の夜に寝ずの番を行う習慣は、かつては医学が発達していない時代から始まりました。今日でも寝ずの番の時間は、故人様との最後の貴重な時間として、大切にされています。

地域や寺院によって、寝ずの番に対する考え方は異なります。寝ずの番を行うかどうか、またどのように行うか、今回ご紹介した点を心に留めつつ、ご親族やお寺とよく話し合って決めるとよいでしょう。

何か不明点や気になることがあれば、葬儀社のスタッフに遠慮なく相談してください。ご家族の思いに共感し、温かく支えてくれるはずです。

花葬儀では事前相談を設けており、プランナーがお客様からのご相談や疑問に対応しています。寝ずの番を始めとした葬儀に関するご質問、ご不安がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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