寝台車と霊柩車の違いとは?役割や特徴、手配方法まで解説
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
「寝台車と霊柩車は何が違うの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。寝台車と霊柩車は、どちらも故人様を搬送するために使われる車両ですが、まったく異なるものです。
そこで今回は、寝台車と霊柩車の違い、それぞれの手配の方法やポイントも解説します。この記事を読むことで、大切な場面での思わぬトラブルや無駄を防ぎ、安心して故人様を見送る準備ができるでしょう。
1.寝台車・霊柩車の役割と特徴
最初に寝台車と霊柩車、それぞれの役割と特徴を解説します。
寝台車の役割と特徴
寝台車は、亡くなった方のお身体や、病人・けが人を搬送するための専用車両の総称です。亡くなった方を搬送する寝台車は、主に病院から自宅や安置する場所への移送に使われます。車内にはストレッチャーや担架を固定する設備があり、棺に納められていない故人様も安全に運ぶことができます。
霊柩車の役割と特徴
故人様を運ぶという点では、霊柩車と寝台車に違いはありません。霊柩車は故人様を納めた棺を運ぶ専用車両で、主に斎場(葬儀会場)から火葬場までの搬送に使用されます。
日本では、かつて棺を「輿(こし)」にのせて人々が担ぎ、火葬場や埋葬地まで運んでいました。輿には屋根や豪華な彫刻が施されており、宮型霊柩車に、そのなごりを見ることができます。しかし現在では宮型霊柩車は目を引きやすいなどの理由で、減少傾向にあります。
2.寝台車と霊柩車の違いとは?
寝台車と霊柩車は、どのような点が異なるのでしょうか。「利用する場面」「車両の見た目」「車内の構造」の3つの視点から詳しくご説明します。
利用する場面の違い
故人様をお運びする点で共通している寝台車と霊柩車ですが、利用する場面は次のように異なります。
寝台車
主に病院や施設など、故人様が亡くなられた場所から、安置できる場所までの搬送に使用されます。
霊柩車
葬儀や告別式の後、棺に入った故人様を火葬場までお連れする際に使用されます。
このように、寝台車は、葬儀前の初期搬送に、霊柩車は、葬儀後の搬送に用いられるといった、利用する場面に違いがあります。
車両の見た目の違い
寝台車と霊柩車は、それぞれの利用場面に応じて異なるデザインを採用しています。
寝台車
一般的なバンやワゴン車を改造したものが多く、目立たない外観であるため、一見しただけでは一般車両と区別がつきません。大げさな演出を避けたいというご遺族の思いに配慮し、シンプルなデザインを採用しています。このため、病院や自宅周辺に停車していても自然に周囲に溶け込み、故人様とご家族のプライバシーを守ることが可能です。
霊柩車
戦後からバブル期にかけては、寺院風の屋根や豪華な彫刻が施された宮型霊柩車が主流でした。近年は、葬儀の簡素化の流れに伴い、黒やシルバーの高級車をベースにしたシンプルなデザインの車両が増えています。
霊柩車は営業用車両のため、ナンバープレートは緑色のベースに白色の文字(いわゆる緑ナンバー)で、分類番号は「特種用途自動車」を表す800番台です。現代の霊柩車は一般の車両と見分けがつきにくい外観のものが多いですが、前方ドアの下部に「霊柩」などと表記されているのが一般的です。
車内の構造の違い
寝台車と霊柩車は、車両の外観だけでなく、車内の構造も大きく異なります。
寝台車
寝台車の内部には、ストレッチャーや担架を固定する設備があり、故人様を安定して搬送できるよう設計されています。また多くの場合、付き添いの方が同乗できる座席が設けられています。
霊柩車
棺を安置するための専用スペースが確保されており、棺の出し入れをスムーズに行うためのレールや、棺を固定する装置(ストッパー)が備わっているのが特徴です。基本的に故人様が納められた棺のみを運ぶため、同乗者用の座席が限られており、火葬場へ向かう方々は、通常、マイクロバスなどで別途移動することになります。
3.【寝台車】手配する方法とポイント
こちらでは、病院で臨終を告げられた場合の寝台車の手配方法について、注意すべきポイントとともに解説します。
葬儀社決定後は時間を置かず連絡する
事前に葬儀を依頼する葬儀社が決まっているときは、速やかに葬儀社へ連絡を入れ、寝台車の手配を依頼します。
病院で亡くなられた場合、お身体の保管に必要な設備が備えられていない病室や霊安室にいられる時間は、数時間から長くても半日程度です。最近では365日24時間対応している葬儀社が多いため、深夜や早朝であっても時間を問わず連絡しましょう。状況にもよりますが、早ければ約1~2時間で迎えにきてもらえます。
病院提携の葬儀社に搬送依頼することも可能
多くの病院には提携している葬儀社がありますので、提携の葬儀社に搬送を依頼することもできます。しかし、必ずしも提携している葬儀社に寝台車を頼む必要はありません。
また、病院から紹介された葬儀社に搬送を依頼したからといって、その後の葬儀までお願いしなくてもかまいません。葬儀に関しては、複数の葬儀社から見積もりを取り、サービス内容や費用を比較検討してから慎重に選ぶことが大切です。
搬送は自家用車も可能だが葬儀社に任せたほうが無難
法律上、故人様の搬送を自家用車で行うことは可能ですが、適切な設備がある車両と経験を持っている葬儀社に任せるほうが安心です。
自家用車を使う場合、車内に適切な設備が整っていないため、運搬中の故人様のお身体の安全性を確保することが困難です。また、長距離の搬送や悪天候、交通渋滞などの状況に対応できず、トラブルが発生する可能性もあります。
4.【霊柩車】手配する方法とポイント
つづいて、葬儀後に故人様を火葬場まで搬送する霊柩車の手配の方法を、ポイントとともに解説します。
霊柩車は葬儀社経由で手配するのが一般的
霊柩車はほとんどの場合、葬儀社を通じて手配します。葬儀社が霊柩車を直接所有していることは少ないのですが、専門の運行業者と提携しており、必要に応じて適切な車両を手配してもらえます。
ご遺族が霊柩車運行業者に直接依頼することも可能ではありますが、通常、葬儀社のプランには霊柩車の費用が含まれています。葬儀の準備や打ち合わせの中で霊柩車の種類等を決めるケースがほとんどであるため、葬儀社経由で手配する形が主流となっているのです。
車種の希望があれば早めに相談
車種やデザインの希望がある場合は、早めに葬儀社に相談しましょう。一般的なリムジン型やバン型の霊柩車は多くの葬儀社で手配可能ですが、宮型など特殊な車種は手配が困難な場合もあるため、事前に確認することが必要です。
また、車種によって費用が変わることもあります。ご不安な点があれば、葬儀社とよく相談のうえ車種を選択するとよいでしょう。
霊柩車の車種について、詳しくはこの後の「霊柩車の種類」で、ご説明しております。そちらもあわせてご覧ください。
5.寝台車・霊柩車の利用料金
故人様を運ぶ寝台車と霊柩車の料金は、国土交通大臣への届け出が義務付けられており、不当に高額または低額な料金設定は違法とされています。
利用料金について以下より解説しますので、安心して依頼できるよう事前に押さえておきましょう。
走行距離による変動
寝台車や霊柩車の料金は、主に搬送距離によって決まります。距離が長くなるほど料金が高くなるため、搬送先までの経路や距離を事前に確認しておくと、概算費用を把握することが可能です。
車両の種類による料金差
車両のグレードによっても、料金が異なります。高級車がベースであるものほど、高額になりがちです。
時間帯の追加料金
深夜や早朝の搬送は、通常料金より高くなる場合があります。寝台車や霊柩車の料金が葬儀社の葬儀プランに含まれている場合でも、時間外の追加料金が別途請求されることがあるため、事前に確認を行いましょう。
有料道路の利用料金
有料道路を使用する際、多くの場合は通行料金が加算されます。事前に道路の利用予定を確認しておくと、料金を調整することが可能です。
車両待機料金
依頼者側の都合で車両に待機してもらう場合、別途料金が加算されるケースもあります。待機料金や留置料金などの名目で、1時間や30分単位で料金がかかることも珍しくありません。
6.霊柩車の種類
霊柩車には、主に以下の4種類があります。葬儀の規模やご遺族の希望に応じて、適切なタイプを選ぶようにしましょう。
洋型(リムジン型)霊柩車
高級車をベースにしたリムジンタイプの車両です。外装はシンプルながら高級感があり、一般的な霊柩車として広く使用され、以下の車種がよく見られます。
トヨタ クラウン
高級感があり、広めの車内が特徴です。日本国内では非常によく使用されている車種です。
メルセデス・ベンツ Sクラス
海外製の高級車としても有名で、リムジン仕様の霊柩車としてよく利用されます。
ボルボ V70
高級感と安全性を兼ね備えた車両で、エレガントなデザインが特徴です。
日産 セドリック
クラシックな外観としっかりした作りが特徴の日本車です。
バン型霊柩車
ワゴンやバンの車両で、外観が一般的な車両と変わらないため、目立たないことが求められる場面で利用されます。装飾が少ないシンプルなデザインが特徴で、以下のような車種が使用されています。
- ・トヨタ ハイエース
- ・日産 キャラバン
- ・三菱 デリカ
バス型霊柩車
大型バスを改造した車両で、多人数のご親族や参列者が同乗できるスペースを備えており、特に大規模な葬儀や遠距離の搬送時に利用されることが多いです。内部は広々としており、故人様を安置するスペースと同乗者のための座席が設けられています。以下のような車種が改造して使われています。
- ・日産 シビリアン
- ・三菱 ローザ
- ・日野 リエッセ
宮型霊柩車
車体の上に輿(こし)と呼ばれる祭壇が設置された伝統的なデザインの車両です。豪華な彫刻が施され、華やかな外観が特徴です。しかし、近年では、家族葬などのシンプルな葬儀スタイルの増加にともない、使用される機会は減少しています。
7.寝台車・霊柩車に関するQ&A
A.寝台車や霊柩車の運転は、基本的に普通自動車免許があれば可能です。
亡くなった方のお身体は法律上「貨物」として扱われるため、特別な免許は必要ありません。ただし、搬送を事業目的で行う場合は、貨物自動車運送事業法にもとづく「一般貨物自動車運送事業」の許可を取得し、「緑ナンバー」と呼ばれる緑色のナンバープレートを車両につける必要があります。
A.棺を運ぶ装置の付いていない寝台車に乗せて運ぶことは、構造上難しいと考えられます。
寝台車は、主にストレッチャーを固定して故人様を運ぶ車両であり、棺を安全かつ安定して運搬するスペースや固定装置が備わっていないものも多いため、適していません。
霊柩車には、棺を出し入れするためのローラーや、走行時に棺がずれないためのストッパーが付いており、火葬場の台車への移動もスムーズに行うことが可能です。葬儀後に棺を運搬する場合は、専用の霊柩車を利用するのが最も適しています。
A.参列者に出棺のタイミングを知らせ、故人様との最期の別れをするための合図としてホーン(クラクション)を鳴らすとされます。
昔は、鐘や楽器、一番鶏の鳴き声などが出棺の合図でした。現在では、ホーンがその代わりを担っているともいわれています。航海中に亡くなった方を葬る際の汽笛や空砲が由来だとする説などもあります。
近年は葬儀の形態が変化し、人数を絞って静かな葬儀を希望するご家族が増加していることから、ホーンを鳴らす時間の短縮や、完全に鳴らさないケースの増加が見られます。
8.寝台車と霊柩車の違いを理解し、安心して故人様を見送りましょう
寝台車と霊柩車の違いを理解することは、故人様を丁寧にお見送りするための第一歩になります。
寝台車と霊柩車の役割や特徴を正しく把握しておくことで、搬送の手配をスムーズに進められ、故人様との最期の大切な時間を心穏やかに過ごせるでしょう。
寝台車や霊柩車について疑問や不安がある方、手配について知りたい方は、花葬儀の事前相談まで、お気軽にお問い合わせください。経験豊富なスタッフが、葬儀全般に関して、どのようなご質問にもしっかりお答えいたします。