葬儀費用における控除の対象はどこまで?相続税申告が必要な場合や確定申告について解説
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- 【 相続に関わるお金 】
「葬儀費用を控除できれば……」と思う方は少なくありません。葬儀費用は決して安い金額ではありませんが、税に関することは複雑で、理解するのはとても難しいものです。
そこで今回は、葬儀費用の控除について、概要や注意点をわかりやすく解説します。控除の対象になる葬儀費用の範囲や、葬儀費用と関わりのある「相続税」の計算方法など、葬儀費用の控除について知りたい方に必要なポイントを厳選してご紹介します。どうぞ最後までご覧ください。
1.葬儀費用は税控除の対象になる?
そもそも、葬儀にかかった費用は、控除対象になるのでしょうか?
こちらで詳しく解説します。
葬儀費用は「相続税」の控除対象になる
葬儀費用が控除の対象になるのは、「相続税」です。相続税は、課税対象となる財産の価格(課税価格)が、基礎控除額を超えた場合に支払います。そのため、「課税価格<基礎控除額」であれば、葬儀費用も控除の対象にはなりません。課税価格の出し方については、後ほど解説します。
「基礎控除」とは、全ての納税義務者が、無条件で課税額から一定の金額を引くことのできる、納税の負担を軽くするためのシステムです。基礎控除額の計算方法は以下の通りです。
(※1)故人の配偶者や子など、民法で定められた相続権利を持つ人のこと
例えば、課税価格1億円相当の遺産を、2人の法定相続人が相続するとした場合、計算式は下記となります。
この場合、「課税価格>基礎控除額」となり、相続税の支払い義務が生じます。
「所得税」の確定申告の対象にはならない
葬儀費用は相続税における控除の対象となりますが、「所得税の確定申告」の対象にはなりません。
「所得税の確定申告」とは、1年間の収入から必要経費を控除した「所得」の金額を計算し、その金額に対する税金を計算し、国に申告する手続きのことです。確定申告ではさまざまな控除の項目がありますが、その中に葬儀費用は含まれません。
「葬儀で受け取るお香典は、所得になるのか?」と思う方もいるかもしれませんが、お香典は非課税扱い、つまり、所得税の申告の必要がないものです。社葬の際に法人がお香典を受け取る場合を除き、葬儀費用を所得税の確定申告で控除することはできないため、注意しましょう。
「準確定申告」で所得控除が受けられることがある
葬儀費用は控除対象にはなりませんが、「もう少しお金を節約したい」という方は、「準確定申告」に目を向けてみましょう。
「準確定申告」とは、故人様が本来行うはずだった確定申告のことです。故人様に代わって相続人が代理で行うもので、場合によっては還付金を得られることもあります。
準確定申告は、相続人が必ず行わなくてはならないものではありません。故人様が生前に確定申告を行っていた場合など、特定の条件下にのみ必要になると理解しておきましょう。
2.葬儀費用のうち相続税控除の対象になるもの
葬儀費用としてかかったもの全てが控除の対象となるわけではありません。国税庁による相続税法基本通達によると、控除できる項目は以下のように定められています。
・火葬、埋葬、納骨にかかる費用(火葬場までの交通費も含む)
・葬儀の前後に生じた費用のうち、通常葬儀に欠かせない費用
(棺、斎場使用料、安置、通夜、精進落としなどの飲食、会葬御礼、お布施、葬儀を手伝ってくれた人への心づけなど)
・死亡診断書作成費用
・ご遺体の捜索、ご遺体やご遺骨の運搬にかかった費用
3.葬儀費用のうち控除対象にならないもの
「葬儀に直接的に関係しない費用」は、葬儀費用の控除対象にはなりません。
こちらでは、相続税控除の対象にならない主な項目をご紹介します。
香典返し
お香典の本来の意味は、家族を亡くした人への金銭的援助です。そのためお香典は相続財産ではありません。そのため、お香典に対する返礼である香典返しも、相続税の控除対象には含まれません。
参列者の交通費、宿泊費
葬儀場から火葬場までの移動に伴う交通費は、控除の対象となります。ただし、遠方からの参列者の交通費、宿泊費などは、葬儀に伴うものとして認められないため、例えお車代を渡したとしても控除できません。
お墓などの祭祀(さいし)財産購入費用
お墓や墓地などの祭祀財産(※2)の購入費用は、非課税です。そのため、祭祀財産を購入したからといって、相続税の控除の対象になることはありません。
(※2)亡くなった人が遺した、先祖を祀(まつ)るための財産。本位牌、仏壇なども含む。
法事にかかった費用
初七日や四十九日など、葬儀のあとに続く法事は、葬儀とは直接関係ないものです。したがって、法事にかかった費用も相続税の控除の対象から外れます。
ただし最近は、葬儀と初七日を同時に執り行う「繰り上げ初七日」が増えています。その場合、繰り上げ初七日の費用は葬儀費用とまとめて請求されることが多いため、控除の対象となる場合もあります。
4.【注意】相続税申告のために「領収書」やメモは必ず保管
相続税で葬儀費用を控除するためには、何に、いくらかかったかがわかるものが必要です。具体的には、領収書、請求書などが該当します。
しかし、お布施やお心づけなど、現金払いで領収書のないものもあります。その場合は、「いつ、誰に、どのような目的で、いくら渡したか」をノートやメモなどに記録し保管しておくことが大切です。
実際にかかった費用よりも水増しで申告することは、もちろん犯罪です。水増しが発覚した場合、税務署から重いペナルティが課されるため、葬儀費用は正確に記録し、保管しておきましょう。
5.相続税の計算方法
相続税の支払い義務が生じるかどうかは、「課税価格>基礎控除額」の場合であるとご紹介しました。
こちらでは、課税価格はどのように算出できるのか、また、そのあとの相続税はどのように計算したらよいのかを、わかりやすく解説します。
相続税がかかるかどうかをまず計算
まずは、相続した財産が、相続税の課税対象になるのかを調べるところから始めましょう。
1.相続税の計算の対象となる金額(課税価格)を計算
自分が相続した財産の課税価格の計算方法と、それぞれの意味は以下の通りです。
財産の種類 | 概要 |
---|---|
①本来の相続財産 |
現金、預貯金、株式、不動産など、被相続人(※3)が保有していた、相続人に相続される財産
|
②生前の贈与財産 |
生前に贈与、または寄贈された財産のうち、「贈与」扱いではなく、「相続」扱いになった分
|
③みなし相続財産 |
故人が保有していた財産ではないが、故人の死後に得る所得であり、税法上では遺産として扱われるもの(被相続人の死亡退職金や、死亡保険金など)
|
(※3)財産をのこし亡くなった方のこと
課税価格は、上記3つの財産の総合から、祭祀財産などの非課税となる対象や、葬式費用、被相続人が抱えていた債務などを差し引いた金額です。
2.各相続人における課税価格を計算
前述の計算で出た課税価格は、トータルの金額です。相続人は複数いるケースがほとんどであるため、次に、相続人ごとの課税価格を計算します。計算方法は、以下の通りです。
相続人ごとの課税価格は、前項で出した課税価格に「生前贈与加算」を合わせた価格です。
(※4)相続開始(被相続人の死亡)前から7年以内に贈与された財産は、相続税の対象となる「暦年課税制度」を選択していた場合の金額。
3.課税遺産総額から基礎控除額を引く
次に、相続人ごとの課税価格の総額を出します。総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた額が、課税される遺産の総額(課税遺産総額)です。課税遺産総額が0以下の場合は、相続税を申告する必要はありません。
基礎控除を引いた課税遺産総額がプラスだった場合
課税遺産総額が基礎控除額を上回った場合は、相続税が発生します。支払うべき相続税は以下の方法で計算します。
1.各相続人の相続税額を計算
まずは、各相続人の相続税額を計算します。計算方法は、以下の通りです。
実際に遺産をどのように分けるかに関係なく、最初に法定相続分で計算します。法定相続人の法定相続分は、以下の表を参考になさってください。
相続人構成 | 法定相続割合 | |||
---|---|---|---|---|
配偶者
|
子
|
父母
|
兄弟姉妹
|
|
配偶者・子 |
1/2
|
1/2
|
||
配偶者・父母 |
2/3
|
1/3
|
||
配偶者・兄弟姉妹 |
3/4
|
1/4
|
例えば、基礎控除額を差し引いた課税遺産総額が1億5,000万円だとして、配偶者と父の2人が相続するとします。上の法定相続割合から、配偶者の持ち分は1億円、父が5,000万円です。
次に、相続税率をかけます。金額別の相続税率と控除額は以下の通りです。
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下
|
10%
|
なし
|
3,000万円以下
|
15%
|
50万円
|
5,000万円以下
|
20%
|
200万円
|
1億円以下
|
30%
|
700万円
|
2億円以下
|
40%
|
1,700万円
|
3億円以下
|
45%
|
2,700万円
|
6億円以下
|
50%
|
4,200万円
|
6億円超
|
55%
|
7,200万円
|
表により、配偶者と父それぞれの税額は以下のようになります。
父:5,000万円×20%-200万円=800万円
これにより、課税遺産総額3億円を2人で相続する場合、相続税の総額は3,100万円です。
2.各相続人の控除・加算を踏まえて実際の納税額を計算
相続税の総額に、各相続人が実際に相続した遺産の割合を掛けます。
例えば、配偶者が遺産の70%、父が遺産の30%を実際に相続した場合は、以下となります。
父:3,100万円×30%=930万円
最後に、相続税に設けられている控除や加算による調整を行い、それぞれの最終的な納付税額を求めます。上記の例の場合、配偶者は控除の対象となるため、実際に相続税を支払うことはありません。
今回ご紹介した例は、現金を中心とした相続における相続税の計算方法です。実際の相続は、不動産や株式など多岐にわたり、それぞれの資産に対する課税価格の計算方法も異なります。「間違えて申告してしまった」「申告で損をしてしまった」とならないよう、相続税に関しては、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
6.葬儀費用は控除を利用して賢く節税しましょう
葬儀費用でかかった負担は、相続税で控除することができます。しかし、控除を受けるための相続税の計算方法は、複雑でとても難しいものです。
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