準確定申告とは?葬儀費用は控除対象になる?手続き期限や必要書類など

準確定申告とは?葬儀費用は控除対象になる?手続き期限や必要書類など

「準確定申告で葬儀費用を控除できるのだろうか?」大切なご家族の葬儀を終えた時に、このような疑問を抱く方がいらっしゃるかもしれません。

準確定申告は、ご家族が亡くなった後に手続きを求められる場合があります。しかし、申告を行う人や申告期限、申告基準が通常の確定申告と異なるため、注意が必要です。今回は、準確定申告について申告方法などをわかりやすく説明し、準確定申告で葬儀費用が控除できるかについても解説します。ぜひ最後までご一読ください。

1.準確定申告は「故人様の確定申告」

準確定申告は「故人様の確定申告」

そもそも「確定申告」とは、自分の1年間の所得(収入から経費などを差し引いたもの)から納めるべき税金を計算して、国に申告する手続きのことです。「準確定申告」は、税金を申告することができない故人様に代わり、相続人等が申告を行います。

準確定申告の申告対象期間は、「1月1日から亡くなる当日まで」です。したがって、故人様が8月1日に亡くなった場合、同年1月1日から8月1日までの間に得た所得に応じて申告を行います。

ただし、必ずしも全ての故人様に準確定申告であるわけではありません。詳細は「準確定申告が必要なケース」でご紹介します。

なお、自身が1年以上海外に移住する際に準確定申告が必要になることもありますが、このコラムでは、亡くなった人に関する準確定申告を中心にご紹介します。

2.準確定申告で葬儀費用は控除できるのか?

「控除」とは、納める税金を計算にあたり一定の金額を差し引くことのできる制度です。例えば確定申告で所得税を計算する場合、申告対象期間内にかかった医療費や生命保険料などを一部控除することができます。

では、準確定申告において、故人様の葬儀にかかった費用を控除することはできるのでしょうか?こちらで解説していきます。

準確定申告では葬儀費用は控除できない

結論から先に述べると、準確定申告では葬儀費用を控除することはできません。確定申告(準確定申告)で認められる所得控除には、医療費控除や社会保険料控除などがありますが、これらの中に葬儀費用に該当するような項目はないからです。そのため、たとえ故人様が生前すでに自分の葬儀費用を支払っていたとしても、葬儀費用は控除の対象にはなりません。

相続税控除の対象になる葬儀費用

では、葬儀費用はまったく控除されないのかというと、そうではありません。故人様の葬儀にかかった費用は、相続人が行う確定申告のうちの「相続税」において控除されます。

相続税の控除対象となる葬儀費用は以下の通りです。

1.火葬、埋葬、納骨にかかった費用
2.葬儀の前後に生じた費用のうち、葬儀に欠かせない費用
3.死亡診断書作成費用
4.故人様のお体の捜索や、お体・ご遺骨の運搬にかかった費用

2は、具体的には棺、斎場使用料、安置、通夜、会葬御礼、お布施などを指しています。香典返しや参列者の交通費、お墓の購入代などは含まれないため、注意が必要です。相続税における葬儀費用の控除は「葬儀費用のうち相続税控除の対象になるもの」にてわかりやすく解説しておりますので、併せてご一読ください。

「故人は生前大きな所得はなかったようだし、葬儀費用が控除できないのであれば、準確定申告はしなくてもよいのではないか?」と考える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、ご家族が把握している収入が全てとは限りませんし、申告をすることで還付金が戻ってくるケースもあります。

次の項では準確定申告が必要なケースや、しなくてもよいケースについてご紹介いたします。申告を行うかどうかの判断材料としてお役立てください。

3.準確定申告が必要なケース、必要が無いケース

「実は準確定申告が必要だった」「申告していたら還付金が得られたのに」という失敗がないよう、相続が判明した時点で準確定申告が必要かどうか確認することが大切です。以下を参考に、故人様のケースがいずれにあたるのかを確認してみてください。

準確定申告が必ず必要となるケース

準確定申告が必要となるのは、「被相続人(※1)が生前に確定申告を行っていた場合」と「被相続人が死亡した年に収入がある場合」です。

【準確定申告を必ず行わなければならないケース】
ケース 具体例
被相続人が生前に
確定申告を行っていた
・一定額を超える収入(※2)があった
・個人事業主であった
・不動産収入があった
・同族会社の役員で、かつ、会社から利子や賃料を受け取っていた
・2箇所以上から給料を得ていた
被相続人が死亡した年に
収入がある
・不動産を売却した
・株式を売却した
・保険金を得た

(※1)財産を遺して亡くなった人
(※2)「2,000万円を超える給与」「400万円を超える年金」「必要経費を除いた副収入が20万円以上」のいずれの場合に該当

準確定申告によって納税の義務が生じた場合、申告を行った相続人が遺産分割の割合に応じて支払うのが原則です。

準確定申告をしたほうがよいケース

準確定申告が必要ではなくても、申告することによって還付金が返ってくる可能性がある場合は、準確定申告をしたほうがよいでしょう。

【準確定申告をしたほうがよいケース】
ケース 概要・補足
被相続人の年末調整が
行われていない
年末調整を行わないことで、被相続人が税金を多く納めすぎている可能性がある
医療費控除が適用される
可能性がある
10万円を超える医療費を被相続人が支払っていた場合は、医療費控除の対象となる
その他の控除が適用される
可能性がある
・配偶者控除
・扶養控除
・寄附金控除 など
※詳しくは「準確定申告で控除を受けられるもの」参照

返ってきた還付金は故人様のプラスの財産となり、相続税の課税対象となります。準確定申告を行った相続人は相続財産の計上漏れに注意しましょう。

準確定申告をする必要が無いケース

準確定申告が不要なケースは、これまでご説明したケースに当てはまらないような、以下のような場合です。

・被相続人が会社勤めをしており、かつ、会社が年末調整を行ってくれる場合
・被相続人の副収入が20万円以下の場合
・被相続人が受給していた年金が400万円以下の場合

4.準確定申告が必要かどうか確認する方法

準確定申告が必要かどうかの基準はわかったものの、「実際の確認方法がわからない」と不安を感じる方がいらっしゃるかもしれません。

まず、故人様が生前に確定申告を行っていたのであれば、「過去の申告書の控え」「税務署からの郵便物」が自宅に保管されていないかを確認しましょう。そこから、故人様のおおよその収入状況などを知ることができます。

その他の手段として、「故人様の預金通帳」「保険会社や銀行からの郵便物」「故人様の勤め先から送られてくる源泉徴収票(※3)」「遺言書」などを見る方法があります。

それでも全容を把握できない場合は、税の専門家である税理士を頼ることも検討しましょう。

(※3)「給与収入」「所得税額」「控除額」などが1年間分記載された書類

5.準確定申告で控除を受けられるもの

準確定申告では葬儀費用を控除することはできませんが、以下のような所得控除を受けることができます。

1. 医療費控除(※4)
2. 社会保険料控除
3. 生命保険料控除
4. 地震保険料控除
5. 寄附金控除
6. 雑損控除(※5)
7. 配偶者控除
8. 扶養控除

なお1~4までの控除は、あくまでも故人様が生前に支払ったものに対してのみとなります。

(※4)医師または歯科医師による診療または治療、入院費用、治療に必要な医薬品の購入代金、介護施設や介護ヘルパーなどに支払う対価など
(※5)災害や盗難、横領などで資産に損害を受けた場合に適用される控除

6.準確定申告は相続人全員で行う

準確定申告は相続人全員で行う

準確定申告は、包括受遺者(※6)を含めた相続人全員で手続きを行うのが原則です。相続人等が複数いる場合は、各相続人が連署により準確定申告書を提出します。相続人が個別で申告することも可能ですが、手続きが煩雑になり、情報が混乱するおそれがあるため、一括で申告することをおすすめします。

(※6)不動産収入などのプラスの財産から、債務などのマイナスの財産まで包括的に承継する人

7.準確定申告の期限は「相続後4か月以内」

準確定申告の期限は、「相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内」です。納税の期限も同じ期間に設定されているため、準確定申告の期限内に納税も行わなければなりません。

【例】
・被相続人が2024年5月15日に死亡
・同日に、相続人が相続の開始を知る

2024年1月1日~5月15日の準確定申告を、2024年5月16日~9月15日までの間に行う

通常の確定申告は、毎年2月16日~3月15日までの間に行う決まりがありますが、準確定申告の期限は、相続の開始を知った日によって変わることになります。

8.準確定申告の手続きの流れ

準確定申告の手続きの流れをご紹介します。

相続人全員で申告方法を話し合う

まずは、相続人全員に準確定申告の必要がある旨を通達し、申告の方法を話し合います。相続人全員での申告が原則ですが、それぞれが個別で申告することもできます。

相続人でまとめて申告を行う場合は、まず代表者を決定します。個々で申告する場合は、申告内容が同一になるように調整しながら進める必要があります。

準確定申告に必要な書類を準備する

準確定申告に必要な以下の書類を準備します。

【準確定申告に必要な書類】
必要書類 補足
確定申告書
・準確定申告専用の書式がないため、通常の確定申告書に「準確定」と書き足して使用
確定申告書付表
・確定申告書に添付する書類
・相続人が2名以上の場合に必要
・納税額や還付金額などのほか、相続人全員分の住所、氏名、相続分などを記入
故人様の源泉徴収票
故人様の控除証明書
故人が生前に支払った社会保険料や生命保険料などの控除証明書

申告書類を作成する

必要書類が揃ったら、申告書類を作成します。準確定申告の申告書類は、申告書に直接記入する方法と、国税庁が運営している電子ツール(e-Tax)を使って作成する方法があります。e-Taxを利用する場合、以下の点に注意が必要です。

・個々での申告は不可であるため、代表者が申告を行う
・相続人が一人しかいなくても付表の提出が必要
・相続人が複数いるときは、「準確定申告の確認書」が別途必要

e-Taxによる準確定申告ならびに準確定申告の確認書に関する詳細は、国税庁のホームページより確認することができます。

申告書類を提出する

申告書類一式を、故人様の住所を管轄する税務署に提出します。申告書は郵送でも提出が可能ですが、申告漏れをその場で指摘してもらえないため、書類の記載内容に不安があるようでしたら直接持っていくことをおすすめします。

上記は、準確定申告を全て相続人で行う場合の方法です。申告期限が4ヶ月と短いため、「申告を行う時間がない」「準備の進め方がよくわからない」という方は、税理士に手続きを依頼する方法もあります。

9.準確定申告や葬儀費用に関するQ&A

A.相続人に納税の義務が発生したり、還付金を受け取ったりすることがあります。

故人様に代わって確定申告を行うことで、故人様が本来納めるはずだった税金を代わりに納税したり、逆に払いすぎていた税金が返ってきたりすることがあります。
準確定申告で葬儀費用の控除はできませんが、医療費や保険料など準確定申告で控除できる項目は複数ありますので、準確定申告を行わなくてもよいケースでも、一度調べてみることをおすすめします。確定申告をしたほうがよいケースにて詳しく解説しております。

A.ペナルティ(附帯税)が課されます。

準確定申告の提出期限は、相続が発生したことを知った日の翌日から4カ月以内です。その期間内に申告や納税を行わないと、国税庁よりペナルティが課されます。

ペナルティは「附帯税」と呼ばれ、延滞税や無申告加算税など、過失の重さや納税額に応じて本来納税すべき額に加算された税金を支払わなくてはなりません。申告期限を過ぎると法律に違反したことになってしまいますから、必ず期限内に申告と納税を行うようにしましょう。

A.多くのケースでは準確定申告は不要ですが、中には必要な場合もあります。

故人様がサラリーマンなどの給与所得者で、他に所得がない場合は、勤務先が年末調整を行っているため、相続人が準確定申告を行う必要は通常ありません。

しかし、被相続人が生前に確定申告を行っていたり、給与所得の他に20万円超の副収入があったりする場合には、準確定申告が必要です。「準確定申告が必ず必要となるケース」でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。

年末調整は基本的に10月~翌年の1月にかけて行われますが、死亡により退職者が出た場合は、期間に関係なくなるべく迅速に年末調整を行う会社がほとんどです。ただし、必ずというわけではありませんので、年末調整を行った後の源泉徴収票が届かない場合は会社側に問い合わせましょう。

10.準確定申告では葬儀費用の控除は不可|申告が必要かはよく確認を

準確定申告では葬儀費用の控除は不可|申告が必要かどうかはよく確認を

準確定申告とは、亡くなった人の代わりに相続人が確定申告を行うことを指します。医療費や保険料など、生前故人様が支払った費用は控除することができますが、故人様の葬儀費用は所得税控除の対象ではありません。相続税の計算時に相続財産から控除することができます。

準確定申告が必須かどうかは、故人様の所得や収入の条件によって異なるため、しっかりと確認することが大切です。

準確定申告は、相続人が多いほど用意する書類が多く、手続きが煩雑になりがちです。また、申告の方法がわかりづらいと感じる方も多くいらっしゃいます。

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