相続問題でよくあるトラブル5選|親が高齢になったら考えたい対策
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- 【 相続の基礎知識 】
相続問題は、遺産の大小に関係なく起こります。他の相続人とのトラブルを避けるために、今からできることはなんでしょうか。
今回のコラムは「相続問題で起こりがちなトラブル5選」をテーマに、将来の相続に備えておきたい対策をご紹介します。「親も高齢になったので、そろそろ相続について具体的な行動を起こしたい」と考えている方にぴったりの内容です。どうぞ最後までお読みください。
1.相続問題の増加と原因
相続トラブルは、近年増加傾向にあります。相続人同士が対立する背景には、「家族関係の変化」「個人の権利意識の高まり」「高齢化社会の進展」などがあると考えられます。
相続問題が起こる主な原因は以下の通りです。
- ・もともとご家族、ご親族同士の付き合いが希薄だった
- ・遺産が不動産など、簡単に分けられるものではなかった
- ・被相続人(※1)への貢献度と、実際の相続内容が釣り合わなかった
- ・怪我や病気により、財産所有者、もしくは相続人になる予定の人と意思疎通ができなくなった
- ・被相続人に多額の借金があることが発覚した
少しでも気になる点があれば、「我が家は大丈夫」と過信せず、相続が始まる前に対策を打っておくことが大切です。
(※1)亡くなった財産所有者
2.相続問題が起こることによるリスク
相続問題が起こると、どのようなリスクが発生するのでしょうか。
こちらで詳しくご紹介します。
家族関係の悪化
相続は金銭や権利など、繊細な要素を含むため、トラブルに発展すると、相続人同士の関係が悪化することが予想されます。
一般的に「相続人となる人」は以下の通りです。
- ・遺言書がある場合
- 遺言書にて指定された人物。被相続人の血族が大半。
- ・遺言書がない場合
- 民法で定められた相続の権利を持つ「法定相続人」。
(被相続人から見た)配偶者、子、親、祖父母、兄弟姉妹 など - ・遺産に手をつけることができず、必要な支払いができない
- ・問題解決のために専門家に相談したら、想定外に時間と出費がかかった
- ・相続問題が思うように解決せず、精神的に参ってしまった
- ・単純承認:全ての財産を相続すること
- ・限定承認:財産を限定的に相続すること
- ・相続放棄:全ての財産を放棄すること
- ・身近な人や芸能人の相続問題を話題に出す
- ・終活で悩んでいることはないか聞いてみる
- ・相続税を引き合いに、将来的にどのくらい資金を用意しておくべきか尋ねる
- ・兄弟姉妹と相談し、一度ご家族で話し合うことを提案してみる
- ・財産所有者に遺言書とエンディングノートの重要性を伝え、取り組みをサポートする
- ・財産所有者に、マイナスの財産があるかを確認する
- ・相続人の規模を調べる
- ・財産所有者が事業経営者の場合、後継についてご家族と話し合う
- ・法定相続人の範囲と法定相続分
- ・遺留分(※6)や寄与分、特別受益について
- ・遺産分割協議が必要となるケース、進め方
- ・遺言書の種類
- ・遺言書を作成するときの注意点
- ・相続放棄の申告→3カ月以内
- ・相続税の申告・納付→10カ月以内
- ・相続登記→3年以内
- ・成年後見人制度について
- ・家族信託について
- ・相続の法的知識を教えてくれる
- ・過去の事例や経験から将来起こりうるトラブルを予測し、対策を提案してもらえる
- ・財産の評価、相続税対策などについて、総合的なアドバイスを受けられる
- ・家族間の話し合いが難しい場合でも、専門家を介して相続に関する協議を進められる
- ・相続に必要な書類作成を行ってほしい
- ・相続に関する法的なアドバイスや指導がほしい
- ・相続人の中に認知症の人がいる場合の対策を教えてほしい
- ・相続した不動産の査定や、売却のサポートをしてほしい
つまりほとんどのケースにおいて、相続問題はご自身に近しいご家族と争うことになります。「相続問題をきっかけに家族と断絶してしまった」というケースも珍しくありません。
金銭的・時間的・精神的な負担の増大
「誰が」「何を」「どのくらい相続するか」が決まらなければ、相続手続きを次のステップに進めることができません。決定には相続人全員の同意が必要であるため、相続問題が長期化するほど、以下のようなリスクが生じるかもしれません。
また、相続した財産が一定額を超える場合、金額に応じて相続税が課せられます。相続税の申告・納付には期限があるため、「申告が遅れて罰則を受けた」といったことも起こりうるでしょう。相続問題が起こることで、相続人全員に金銭的・時間的・精神的な負担が重くのしかかる可能性があります。
法的手続きの遅延
相続問題は、法的手続きの遅れを引き起こします。相続に関係する法的手続きと内容は以下の通りです。
限定承認と相続放棄
相続方法には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。それぞれの意味は以下の通りです。
財産には預貯金や株式といった「プラスの財産」と、借金などの「マイナスの財産」があります。「マイナスの財産>プラスの財産」だった場合、相続人はプラスの財産の範囲内でマイナス財産も引き継ぐ「限定承認」か、相続放棄の選択を取ることができます。
ただし、限定承認と相続放棄の申請期限は3カ月以内と決まっているため、申請期間に遅れると単純承認が決定してしまいます。
相続登記
「相続登記」とは、死亡した人から相続した不動産の名義変更をする手続きです。法律により、相続を知ったときから3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられています。相続登記が期限内に完了していないと罰則の対象になるだけでなく、相続した不動産の権利を主張することが困難になる可能性があります。
故人の意思の尊重が困難
相続問題が発生することにより、故人様が希望していた通りの相続が行われない可能性が高くなります。何より、自分の財産をめぐってご家族が対立するのは、故人様にとって本意ではないでしょう。
3.相続で起こりがちなトラブル・問題5選
こちらでは、相続で特に多いトラブルを5つご紹介します。
相続財産の取り分について意見が食い違う
遺産の種類や規模に関わらず、相続人が複数いる場合に最も起こりやすい問題です。財産の取り分は、相続人が増えるほど合意が難しくなります。具体例を見てみましょう。
兄が不動産、弟が現金を相続することになった。不動産は、評価方法によって「いくらとして扱うか」が異なることを知り調べたところ、「実勢評価(※2)」のほうが「弟が相続する現金」より高いことがわかった。これに対し弟が不服を申し立て、兄に差額分を請求した。
(※2)不動産が市場で売買された時の価格。不動産の評価方法はこのほかに「相続税評価額」がある。
経済的に余裕のある被相続人の子に対し、困窮している被相続人の弟が、遺産の取り分を多くしてほしいと要求してきた。
これらの例のように、相続財産の評価方法や個々の経済状況の違いが、相続トラブルの原因となることがあります。
寄与分・特別受益で揉めることも
「寄与分(きよぶん)」とは、亡くなる前の財産所有者に対し特別な貢献をした相続人が、法定相続分(※3)を超える財産を相続できる制度です。寄与分による相続トラブル例は以下の通りです。
生前の被相続人は長年寝たきりの状態で、被相続人の長女が同居し世話をしていた。被相続人が死亡し相続が発生すると長女は寄与分を主張し、これに反対する兄弟とトラブルになった。
一方、「特別受益」は、生前の被相続人によって行われた遺贈や贈与を指します。例えば事業や新居への資金援助、婚姻のための持参金などが挙げられます。生前に行われた特別受益により、「本来取得できるはずだった遺産が減少した」として、他の相続人から不満が出ることが考えられるでしょう。
(※3)民法が定めた相続の割合。被相続人との関係によって基準となる割合は異なる。例えば相続人が配偶者と子2人だった場合、配偶者が2分の1、子はそれぞれ4分の1ずつが法定相続分となる。
相続人の間で感情的な対立が起こる
相続人同士の感情的な対立で、相続が難航するケースもあります。例は以下の通りです。
「長男が遺産の全てを相続する」というかつての法律を引き合いに出し、長男が遺産を独占しようとした。他の相続人が話し合いの場を設けようとしたが、長男は主張を引き下げず、感情的な対立が続いた。結果、家庭裁判所にて調停の手続きを行うこととなった。
長男と次男が「配偶者による遺産の使い込み」を疑った。指摘を受けた配偶者は激怒し、絶縁状態となった
遺言書の内容に関して争いが起こる
遺言書を残していても、場合によっては相続トラブルが起きてしまいます。以下に、トラブルの一例を挙げます。
相続人に該当する人が複数いるにも関わらず、遺言書には一人の相続人が遺産を独占する内容が書かれていた。
遺言書によって、被相続人に内縁の妻と隠し子がいることが判明した。
遺言書に記載されていた財産が、全てマイナスの財産だった。
法的手続きが煩雑になる
そもそも相続のための法的手続きは煩雑ですが、以下のようなケースの場合、手続きはさらに難しくなるでしょう。
相続が開始したとき、相続人のうちの一人が認知症になった。意思決定能力に問題があるとして遺産分割協議(※4)に参加できず、成年後見人制度(※5)の申請が別途必要となった。
(※4)相続人全員で遺産の分割について話し合うこと。遺言書が無い場合などに行われる。
(※5)意思決定の難しい人の代わりに、後見人が手続きや話し合いをサポートしてくれる制度。
家族関係が複雑であったため、戸籍を取り寄せて法定相続人を調べることになった。財産は相続放棄するつもりだったので、期限を気にしながら関係者と連絡を取るのに苦労した。
4.相続問題を未然に防ぐための対策・準備
前述したようなトラブルを回避するためには、どのような対策が必要でしょうか。
こちらでは、将来相続人となる方が押さえておくべき「相続問題を未然に防ぐための対策」をご紹介します。
家族間でコミュニケーションを取る
ご家族やご親族との積極的なつながりは、相続に限らずさまざまなトラブルを未然に防ぎます。普段からなるべくコミュニケーションを取るよう心がけましょう。
特に、財産所有者であるご両親とは、資産や遺言について事前に話し合える環境が理想です。「直接聞くのははばかられる」「遺産目当てと思われてしまわないか不安」と思う場合は、以下の方法を参考になさってください。
財産の把握・整理をする
相続する財産の内訳は、相続が始まってから詳細が明らかになることが大半です。相続予定の財産を、相続予定の方が完全に把握することは難しいでしょう。しかし、財産所有者が存命中におおまかな情報だけでも知っておくと、相続に向けて備えることができます。
可能であれば、以下を進めましょう。
相続に関する法的知識を学び準備する
相続に関することは司法書士や弁護士に依頼することもできますが、自分である程度の知識を得ておくことで、リスクに備えやすくなります。
以下に、相続が開始する前に押さえておきたい法的知識をご紹介します。既にご紹介したものも含まれていますが、ぜひ参考になさってください。
項目 | 押さえておくとよいポイント |
---|---|
相続の基本・関連制度 |
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遺言書に関する知識 |
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相続に関する申請期限 |
|
認知症の相続人がいるときの対策 |
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(※6)法定相続人に最低限保証されている、遺産の取り分
相続税の対策を検討する
「基礎控除額」を超えた分の相続財産には、相続税が課せられます。相続税の仕組みを知ることで、必要に応じた相続税対策や納税資金対策ができるようになるでしょう。金銭的にかかる負担を知り、対策を講じることが相続人たちの安心感に繋がり、不必要な争いが防げるかもしれません。
相続財産の総額から基礎控除額を引いた課税遺産総額が正の値になる場合、相続税の支払い対象となる可能性があります。相続税の基礎控除額の算出方法は、以下の通りです。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人数
上記を踏まえ、相続税の支払い対象になるかを判断する方法は、以下の通りです。
8,000万円の現金を2人で相続する場合
8,000万円-[3,000万円+600万円×2人]=3,800万円
※課税遺産総額が正の値となったため、相続税の支払い対象となる可能性があると判断できます。
上記の例では「相続財産>基礎控除額」となりましたが、課税遺産総額の3,800万円がそのまま課税対象になるわけではありません。相続税に設けられている控除や加算による調整を経て、最終的な課税額が決定します。詳しくは、「相続税の計算方法」をご覧ください。
不明な点は専門家に相談する
相続に関する不明点は、早い段階から司法書士や弁護士、税理士などの専門家を積極的に頼ることをおすすめします。
事前に専門家に相談することで、以下のようなメリットがあります。
依頼には費用が発生しますが、相続問題のプロに頼ることで未然に対策を講じることができ、強い安心感が得られるでしょう。
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6.相続問題は事前の対策で予防しよう
相続トラブルは、財産の多寡にかかわらず、誰にでも起こりうる意外と身近な問題です。被相続人と相続人双方が満足のいく結果を迎えるために、必要な準備を進めましょう。
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