社葬を決めた理由
偉業を成し遂げた森谷副社長に、会社として形を残してあげたい
チエルは、川居社長と、森谷副社長が、まさに二人三脚で創業した会社だった。
森谷副社長は、開発のトップとして今のチエルのビジネスに欠かせない、教材システムの特許を取得するなどの功績を残した。
森谷副社長なくして今の会社は存在しなかった。
会社の設立に携わった大切なメンバーだったからこそ、社葬という形で見送りたいという想いは強かった。
当初は、ご親族様には、ご家族だけで行う家族葬に社外の方々の参列を認めていただいていたものの、これだけ若くにして功績を残された方なので、多くの参列者が葬儀に足を運ぶことは容易に想定された。
ご家族への負担が大きくなってしまうのは事務局としても避けたかった。
このような状況から、対外的にお別れの場が必要であることと、ご家族への配慮を考えると、 「偉業を成し遂げた方に、会社として形を残してあげたい」という気持ちが強まったという。
そして、お別れ会に参列することで、森谷副社長と繋がった全ての人々が、それぞれ「区切り」をつけられる場になれば・・・。
そんな意味も込めて、社葬の開催を決めた。
花葬儀を選んだ理由
チエルの社風と、やわらかい和やかな感じのお花が合っていた。
今回の社葬は、花葬儀を含め4社のプレゼンによる入札で決められた。
その決め手のポイントになったのは、花葬儀の新しさだった。
葬儀と言えば、暗く、固い、男性的。
そんなイメージが強いが、花葬儀の提案は新しいところが感じられる提案だった。
例えば、プレゼンの場に現れたのは女性プランナー。
提案されたやわらかい感じのお花の祭壇は、まるで結婚式の生花のよう。
一般的な葬儀のイメージとは違う、新しい感じや和やかな感じが、チエルの社風と合っていたような気がする、と 社葬全体を取り仕切っていた若松執行役員はその時のプレゼンの様子を思い出しながら話された。
「社風と合っていた、というのもそうだけど、やっぱり、特徴のあるお花の祭壇が一番でした。」
副社長はどんな方でしたか?
とにかく豪快。それと笑顔。どんなときもずっと笑顔だった。
「熱く、逃げなく、頭も天才。」
「お酒が大好きで、とにかく豪快。夜は特に(笑)」
そう語るのは、お別れの会で森谷副社長の遺影をまっすぐ見つめながら弔辞を読まれた前田取締役。
前田取締役にとって、森谷副社長は同じ開発畑の直属の上司だった。
年数で言えば川居社長が一番付き合いが長いとのことだが、時間で言えば、前田取締役が一番長いそうだ。
ふたりが共にしたその年数、17年。
前田取締役にとっても社葬は初めての経験。
どのような雰囲気の中で上司だった森谷副社長へ弔辞を読むことになるのか、全く想像がつかない中最初に書いた弔辞の内容は、どうしてもよそよそしく、固い内容になってしまったと言う。
その弔辞を読んだ川居社長のコメントは「もっと本音でいいんじゃないの。」
そのひとことで、「社葬だからある程度固い弔辞にしなくては」という一般的な考えを改め、
自分の言葉で綴ったものにしようと何度も文章を書き直し、土日も、ひとり開発部屋にこもっては練習をしたそうだ。
森谷副社長と前田取締役の、最期の会話となった弔辞。
17年間という時間、共に歩み、苦楽を分かち合った同志へ、熱い想いを込めた弔辞を披露されたのであった。
「森谷さんは、社内でグレーのフリースをいつも着ていた。
それを着ている森谷さんを見ると、あぁ、冬が来たんだな、と社員みんなが季節感を感じていた。」
マーケティング部門でリーダーを務める安田さんは、笑いながら森谷さんのエピソードを話してくださった。
どんな時でも、昼でも夜でもずっと笑顔だったという森谷副社長。
人当たりのよく気さくな人柄で、メンバーや部下からも慕われ、好かれていたという。
葬儀後のお食事の席では、森谷副社長の軌跡をまとめたメモリアルビデオを流した。
これは川居社長の発案だったが、全員が快く賛同した。
外部の会社でもビデオを作成する会社は多数あるが、チエルは展示会などで上映する映像を社内のマーケティング部門が作成していたことから、今回のメモリアルビデオも、その流れで自然と社内で制作することになったという。
メモリアルビデオの素材になるのは、写真。
マーケティング部門にも森谷副社長の写真はあったが、それだけでは各年代を埋めるには足りず、
親交の深かった前田取締役にも依頼し、前田取締役から昔のメンバーにも声をかけ、
古い写真なども集めることができた。
一言声をかければ、みんながすぐに写真を送ってくれる。
誰もが、森谷副社長のためならという想いもあったかもしれないが、とても協力的だったという。
その数多くの写真と、写真の中でメンバーと一緒に映る笑顔が、森谷副社長の人徳を感じさせた。
花葬儀はいかがでしたか?
本当に葬儀の「プロ」なんだと実感しました。社葬の不安を解消してくれました。
「まるで結婚式を作っているようでした」と前田取締役。
招待する人を選んだり、スタッフをどういう配置にするかを考えたり、どのようにセッティングするかなど、結婚式の準備をしているような感覚があったそうだ。
祭壇には、チエルのコーポレートカラーであるオレンジの花を使用した。その花に丸みを帯びさせ、オレンジの理由である太陽をイメージし、成長の象徴である樹木と組み合わせた。ひとまわり小さな祭壇の提案もあったそうだが、盛大に送り出したいということもあり、大きな祭壇にしようと決めた。
祭壇を飾るオレンジの花は、白い花にカラースプレーで対応する予定だった。
しかし、当日になって全員が目にしたのは、コーポレートカラーのオレンジのカーネーション。
担当プランナーの山田が、チエルのコーポレートカラーの特色番号まで気にかけて、正確に色を再現しようと、カラー見本を見ながら準備したカーネーションだった。
社葬当日、生花に変わっている祭壇を見て驚いた、と若松執行役員。山田の細やかな配慮と対応力に感心したそうだ。
森谷副社長が会社のデスクで使っていた辞書やノートをはじめ、様々なものを集めてはみたものの、メモリアルコーナーにどう飾ってよいかわからなかったそうだ。 それを、花葬儀のスタッフが綺麗に飾っているのを見て、さすがプロだなと思ったという。
また、社葬はマナーや服装、それに映像やご案内状に使う文言など、普段何気なく振舞っていることや、使っている言葉でも、葬儀ではふさわしいものなのか、わからなくなることが多い。
「とにかく電話をすればすぐに回答が得られたり、会社に来てもらえたり、山田さんをはじめ、花葬儀さんのスタッフはフットワークが軽い。すぐに不安を解消してもらえたのは、一番心強かった。」
期日までに準備できないものも、「ここまで揃えられれば十分」「まだ時間があるから大丈夫ですよ」など、ひとつひとつの言葉に安心感があったという。
準備を進めていく様々な場面で、「葬儀のプロ」を実感されていたようだ。
社葬後、何か変化はありましたか?
自分たちで考えて動くようになった
今回の社葬は、チエルの社員がほぼ全員、スタッフとして関わった社葬となった。
森谷副社長に直接お別れを伝えられなかったことで、森谷副社長が居なくなったという実感が沸かず落ち込んでいる社員もいたそうだが、社葬を通して全員で送れたことで、ひとつの区切りをつけることができたという。
「またみんなで森谷さんの分まで頑張っていこう」と。
「森谷さんがいない状況は、いずれ普通に感じる日がくる。それが社葬という形で、社員みんなで一致団結して青山葬儀所で残せたことで、森谷さんが亡くなったという事実は絶対に忘れないと思う。そういう意味で、社葬をやってよかったと思っている。」
若松執行役員と共に葬儀の現場を取り仕切った目黒リーダーは、丁寧に言葉を選びながら、語ってくださった。
社葬を終えられた後、社内の雰囲気が少し変わったそうだ。
以前は、わからないことがあれば、すぐに人に聞いてしまう社風があったそうだが、
葬儀後は、まずは一度、自分で考えて動こうという意識が高まったという。
森谷副社長に聞けばすぐに答えが出る。でも、すぐ側にもう森谷副社長はいない。
誰もが心のよりどころにし、頼ってばかりいた自分たちの気持ちを見直すきっかけを
森谷副社長から頂いたのかもしれない。
1年の間で、会社の上場と創業者メンバーの社葬という、普通でもなかなか立ち会えないイベントを経験されたチエルとその社員の皆様。
2016年は、まさに「激動の1年」だった。
創業メンバーという会社の「柱」を失うことは、想像以上の大きなダメージを受けたはず。しかし、一方で、社葬というイベントを社員全員が体験できたことにより、間違いなく会社としても一回り大きくなり、社員同士の絆もよりいっそう強くなったに違いない。
「森谷さん、天国で先に飲んで待っていてくださいね。」
弔辞の終わりに、前田取締役が森谷副社長に普段と変わらない感じでそう声をかけたのが印象的だった。
ひとりひとりの社員の心には、いつまでも森谷副社長が存在し続けるのだと思うし、森谷副社長はこれからも、チエルの大切なメンバーには変わりはない。
天国にいる森谷副社長に見守られながら、これからもチエルは前進していくのだろう。
こちらの方々にお話しを伺いました
チエル株式会社
取締役 製品開発部 部長 前田 喜和 様
執行役員 マネジメントサービス部 若松 洋雄 様
マネジメントサービス部 人事・総務課 リーダー 目黒 徹 様
マーケティング部 リーダー 安田 美穂 様
こんなご葬儀でした
コーポレートカラーと企業理念をイメージした祭壇
祭壇の中心はチエルのコーポレートカラーであるオレンジの花を使用し、丸みを帯びさせオレンジの理由である太陽を模した。
遺影写真の右横には伸び行く象徴をイメージした木を配置。
チエルの社風に合う、柔らかさがありながらも、洗練された祭壇となった。
会場入り口横に、株式上場した際の写真と特許証、森谷副社長が会社で使っていた備品など、ゆかりのある品々を集めてメモリアルコーナーを設置した。
かわいいペコちゃんの置物も。昔のものを色々取っておくのが好きだったようだ。
森谷副社長が長年書き留めた開発ノートは、若い社員の方も手に取って読まれていた。
食事会場には森谷副社長がお酒好きの為に、皆さんからいただいていたワインや焼酎、ビールを用意し参列者の皆さんに振舞った。
社員の方々が作成されたメモリアルビデオも上映。遠方から来たお取引先様にも、昔の思い出を振り返っていただいた。
エピソードとお写真は、ご家族様のご許可をいただいて掲載しております。