花葬儀を選んだ理由
ホームページで見た花祭壇に見入り、すぐに「お気に入り」に登録しました。
実は、主人は、亡くなる12年ぐらい前にガンを発症し、主治医の先生から、「余命が短いかもしれない」と告げられていたのです。当時、突然のことで、なにも考えられなくなり、泣き暮らす日々が続きました。そんな中にあって、葬儀について考えておかなければならないと本能的に思ったのでしょうね。葬儀会社のホームページを見るようになって――。そこで、花葬儀さんの驚くほどきれいな花祭壇に出合ったのです。すぐに「お気に入り」に登録しました。
その後、主人は在宅介護で闘病生活を送り、何回か命の危険にさらされることもあったのですが、10年以上をがんばって生きてくれ、最終的には特別養護老人ホームで亡くなりました。亡くなる2、3日前に、施設のスタッフの方から、「覚悟をしておいてほしい」と言われて思い出したのが花葬儀さんです。
ほかの葬儀社も検討したのですが、やはり脳裏に焼き付いていた花葬儀さんの花祭壇は群を抜いて美しく、とりあえず電話で事前相談をしました。電話に出たプランナーの方が、夫の死を受け入れるのに必死で要領を得なかった私の話にも丁寧に耳を傾けてくださったこともあって、「夫の葬儀は、ここにお願いしよう」と決めました。
花葬儀を体験して良かったこと
主人に手向けるために買った季節の花束のイメージが、そのまま祭壇になりました。
葬儀の場所や時間が決まってから、プランナーさんとフラワーデザイナーの方が一緒にいらっしゃって、どのような祭壇にするかについて打ち合わせをしました。主人が子供のころにお父さんと山を歩いた話を何度か聞いたことがある、観葉植物を部屋で育てていたといった話をしたので、「樹に囲まれているような空間にしましょうか」とご提案をいただいたときには、「そんなことが、できるのかしら」と思った記憶があります。
また、たまたま、打ち合わせをする前に、主人に手向けようと、お気に入りの花屋さんにつくってもらった季節の草花にあふれた花束がとても素敵で――。その写真をフラワーデザイナーの方に見せ、「こんなイメージで」と具体的なリクエストもしました。
ひと通り私の話を聞いたあとに、フラワーデザイナーの方が、その場で画用紙に花祭壇のデッサン画を描いてくださいました。見たときには、あまりにもイメージどおりの立派な花祭壇が描かれていたのでびっくりしたものです。でも、実物は、もっとすばらしい祭壇でした。主人の遺影や棺を後ろから少し囲むように天井までに届く樹が配置され、主人も見上げて「いい枝ぶりだね」と言ってくれていたと思います。コロナ禍で参列者も少ない葬儀でしたが、人数など関係ありません。懸命に生きた主人を華やかな祭壇で見送ることができ、悔いのない葬儀となりました。
ご主人様はどんな方でしたか?
とにかく「人」が好きな人でした。
病気をする前は、医療用機器の営業兼コンサルタントの仕事をしていました。とにかく「人」が好き、人と話すのが好きな人だったので、毎晩、仕事関係の方と一杯飲んで帰宅すると、「今日は、あの先生と会った」「この先生とも会った」と話してくれました。それが、病気になり、その障害で言葉がまったく話せなくなってしまったんですね。あんなに人と話すのが好きな人がしゃべれなくなってしまい、この人は、これからどうやって生きていくんだろうと目の前が真っ暗になりました。けれど、主人の人を好きな気持ちは、話せなくても伝わるものだったのです。
家で介護をしていた期間は、デイサービスを使っており、男性の利用者さんたちは、たとえば麻雀をやったり、カラオケをしたり、おしゃべりをしたり、いろいろなことをしていました。ある日、主人の様子が心配で見に行くと、いろいろなレクリエーションを楽しむ方々を、主人がニコニコしながらじっと見ているんですね。すると、見られている相手も悪い気はしないらしく、「中谷さん(仮名)どうしたの」「中谷さん(仮名)、こっちにおいでよ」なんて言って仲間に入れてくれていたのです。周囲の人たちに恵まれたのはもちろんなのですが、主人の「人が好きだ」という気持ちは、話せなくても伝わるのだと感心しました。
デイサービスに行くと、主人は60代でも若いほうでしたから女性の利用者の方から人気があって(笑)。
1週間に5回、デイサービスを利用していたのですが、毎回、「早く行きたい」と楽しみにしていました。
帽子が似合う、おしゃれでダンディー。
メモリアルコーナーでは、たくさん主人の写真を飾っていただいたのですが、生前は写真が嫌いなシャイな人だったので、ほとんどが病気になってからの写真です。帽子をかぶった写真が多いのは、抗がん剤治療の副作用で毛が抜けてしまったときに、それまでは縁のなかった帽子を買ってかぶるようになったからです。
主人には帽子がとても似合うと私も思いましたし、まわりの人もみんな「似合う、似合う」と口をそろえて言ってくださいました。本人もまんざらではないようで(笑)、少しずつ帽子のコレクションが増えていきました。妻の私が言うのも照れますが、おしゃれでダンディーな主人でした。
こんなご葬儀でした
お式への要望
グリーンが好きだったので、季節の草花で見送りたい。
〇気楽な旅行に出かけるような服で旅立たせてあげたい。
〇観葉植物などが好きだったので花よりもグリーンが多い祭壇に。
〇旬の草花がいちばん美しいため、市場の中でも特に季節の草花を使ってほしい。
〇主人のダンディーなイメージを大切にしたお葬式にしたい。
実際のご葬儀
〇故人様がお気に入りだったシャツ、ジャケット、そして奥様手縫いのズボンで旅支度を整えました。
〇お気に入りの帽子、愛用されていたひざ掛け、ご夫婦で育てたハーブひと枝などを棺にお入れしました。
〇棺や遺影の後方には天井にも届くほどのグリーンの美しい樹を配置し、下からのライトで木漏れ日があふれるような空間をおつくりしました。
〇木もお好きだったとお聞きし、たくさんのお写真を飾ったメモリアルコーナーに流木も入れました。
〇ボルドー色の花をアクセントにして、ご主人様のおしゃれでダンディーな雰囲気に。
葬儀を終えての感想はいかがですか?
悔いのない見送りができた。だから、主人の葬儀の写真を自信を持って周囲に見せています。
最近、私の年齢も上がって、周囲の方々の口から葬儀の話が出てくることも多くなりました。「中谷さん(仮名)のときは、どうだった?」といった質問が投げかけられる機会も増えましたが、自信を持って主人のときの葬儀の写真を見せています。そして、祭壇の写真を見た方は、皆さん総じて驚きの声をあげられます。先日も趣味の集まりの場で葬儀の話題になり、「私は、よくある菊の祭壇は嫌いだな」と言う人がいたので、「こんなお葬式もできるんですよ」と写真を見せたところ「これ、いいわね!」と感激していました。事前に相談ができることを知らない人も多いので、花葬儀さんの事前相談を利用した話もしばしばします。
主人とは、ずっと一緒に時間をともにし、心身ともに密接な関係の人でしたから、亡くなったときには、本当に心にぽっかり穴が空いたみたいな感じで――。これから私はどうやって生きていったらいいんだろうと途方に暮れてしまっていましたね。ただ、悔いのない見送りができたおかげもあって、今は「人生のリハビリ」と名づけ、介護をしていた間にはできなかった趣味をがんばってみようかなと思っているところです。
エピソードとお写真、映像は、ご家族様のご許可をいただいて掲載しております。