花葬儀を選んだ理由
葬儀社のポータルサイトに登録しましたが、訪問してくれたのは花葬儀さんだけでした。
ずっと自宅療養をしていた妻の母は、体調が悪化して入院を余儀なくされたときに、余命宣告を受けてしまいました。バタバタと急いで葬儀社を決めて、気がついたら葬儀が終わっていた――そんな思いをするのが嫌だったので、事前に葬儀社のポータルサイトから、花葬儀さんも含めて4~5社に資料請求したのです。電話や見積もりなど資料を送ってきたところもありましたが、実際にプランナーの方が駆けつけてくれたのは、花葬儀さん1社だけでした。
その時にいろいろ説明してくださったのですが、印象深かったのは、やはり花祭壇でした。義母は花が大好きで、玄関の飾り棚にはいつも季節の花を飾っていましたし、小さな庭ですが、自分でも木や草花を育てていたので、きれいな花祭壇で見送れたらと思ったのです。
また、義母はとても几帳面な人で、自分の死期を悟ると、葬儀についての希望を大量のメモにまとめていていました。そんな母の希望のひとつに、葬儀をあまり大げさにしてほしくない、家族葬にしてほしいというものもあったのです。そこで、親身になって話を聞いてくださる花葬儀さんなら、小規模な家族葬でありながらも、花の好きだった母らしい、母が自分でプランしたものに近い葬儀ができるのではないかと、親族で話し合って決めました。
花葬儀を体験して良かったこと
義母が見ていたリビングからの庭の景色が、花祭壇で再現されました。
フラワーデザイナーの方との打ち合わせでは、母がよくリビングから、いろんな植物のある庭を眺めていたことをお話しました。結果的に病院で亡くなりましたが、「やっぱり家に帰りたい」と口癖のように言っていたことを思い出し、「最後に、いつも見ていた庭を見せてやりたい」と思いついたのです。たぶん、本人もすごく嬉しがってくれるのではないか…と。フラワーデザイナーの方も賛同してくださり、「リビングからの景色をテーマにしましょう」と庭を見ながらデッサン画を描き、写真も撮って帰られました。
葬儀の当日は、とにかく驚きましたね。リビングから見た庭の景色が、目の前に再現されていたからです。祭壇の両脇に背の高い樹があり、いたるところにさまざまな花が飾られていて、本当に庭のイメージそのもので…。つい、「すごい」と声が出てしまいました。義母は華やかなもの、特に紫色が好きだったのですが、紫の花など明るい花や夏の季節が感じられるひまわりの花も入れてくださったので、義母も喜んでいると思います。
実は、義母は、棺に入れるために、自分で季節ごとにお気に入りの洋服を準備していました。そのことをプランナーさんに話すと、「せっかくですから」とおっしゃって、用意されていた洋服をすべて飾ってくださいました。ほかにも、母の趣味だった手品のアイテムが置かれたメモリアルコーナーを用意してくださるなど、さまざまな配慮や工夫が施された葬儀でした。
自分の葬儀についてたくさんのリクエストを書き残していた母でしたが、本人の意向どおりの葬儀にできたのではないかと思います。安心して、心残りなく旅立ってくれたことでしょう。
お母様はどんな方でしたか?
料理好きで、研究熱心。夕食には、1品新作メニューを披露してくれました。

2世帯住宅でキッチンが別で更に朝と昼は食べる時間帯が異なったため、個々に食事をしていましたが、夕飯は、私たち家族と一緒にリビングに集まって食事を楽しみました。母は料理をつくるのが得意で、必ずといっていいほど、1品、おかずをつくって持ってきてくれたのです。特におからが美味しくて…。お豆腐屋さんからおからを買ってきて、材料を細かく切って一から作ってくれました。昼間テレビで見た料理番組のレシピをメモしてつくってくれることも多かったので、同じメニューはあまりなく、新作発表会のようでした。
食に対するこだわりが強く美味しいものを追求するのが好きで、各地方の名産品などを通販で取り寄せては家族で食べましたね。和菓子、洋菓子も大好きで…。特に目黒にある御門屋(みかどや)の揚げ饅頭が好物で、人にもお土産としてよくあげていました。
「いよいよ危ない」と医師から言われて、子どもや孫たちが集まったときには、母が好きな四谷の「わかば」のたい焼きを買ってきて、みんなで食べたんです。おそらく、それが最後に家族で食べたものですが、食欲は衰えておらず、「食べなきゃ元気になれない」と言って食べていたのが母らしかったですね。(お嬢様より)
段取り上手で、しっかり者。家族のことをいつも考えていた母でした。
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母は、人から頼まれると断ることなく、しっかりと段取りする人でしたね。遺品の整理をしていたら、たくさんの手書きメモが出てきて驚きました。きっと、いろんなことの段取りをするために、書き残していたのだと思います。
入院中も「冷蔵庫の2番目の棚に入っている〇〇は賞味期限が〇〇までだから食べてね」とか「〇〇はどこのタンスに入っている」など、いつも家族のことを心配していました。
自分のこともしっかり考えていましたね。棺に入れる洋服から、戒名、お坊さんの手配など、自分が亡くなってからのことまで決めていたのですから、たいした人だと思います。棺に入れる洋服は、春夏だったらこの服を、秋冬だったらこの服をとラベルをつけて整理していたほどです。葬儀の段取りを決めていたのも、家族があとあと大変な思いをしないように、と思ってのことだったのかもしれません。
母は10月に結婚する孫のこともとても気にかけていました。6月に緊急入院したのですが、結婚式までは頑張るから、と家に帰る気満々で頑張っていたんです。でも、7月に亡くなってしまい…。結婚式では、母の遺影に花を飾って、母と一緒に参列しました。(お嬢様より)
誰からも頼られる存在でサービス精神旺盛。手品でたくさんの人を喜ばせていました。

90歳近くになるまで、シルバーセンターの世話役的なことをやっていて、健康体操やお楽しみ会などの催し物があると、いろいろと手伝っていました。世話好きだったので、周囲の方々から頼りにされる存在でしたね。
ご近所の方々からも慕われていました。仲良しグループができていて、おしゃべりをし出したら、とまらないのがたまにきずでしたが(笑)。
その根っこには、人を楽しませるサービス精神のようなものがあったのかもしれません。どこで探してきたのかわかりませんが、突然、奇術会に入って手品を習い始めたのには、ビックリさせられました。そこから10年以上は続けていたと思います。
花や帽子などの小道具は全部自分の手づくりで、仕掛けの紐やハンカチも自分で用意して…。その他にも折り紙で飾り物を作るなど、とにかく器用でした。孫たちを実験台に、マジックショーの練習をしていましたね。地元のシルバーセンターまつりや保育園などの施設に呼ばれて披露する機会もあり、とても嬉しそうでした。(お嬢様より)
こんなご葬儀でした
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
お式への要望
最後にリビングから見ていた大切な庭を見せてあげたい。
〇母がリビングからいつも見ていた大切な庭の景色を花祭壇で再現してほしい。
〇好きだった紫色をベースにカラフルな花で、華やかな空間にしたい。
〇自身の葬儀に関して書かれた希望を、全てかなえてあげたい。
実際のご葬儀
〇リビングから見える庭の写真をもとに、花祭壇でその景色を再現しました。
〇ご本人が、「自分がいつ亡くなっても対応できるように」と季節ごとに棺に入れるために用意した洋服を飾らせていただきました。
〇手品が趣味だとお聞きしたので、実際にお使いになっていた小道具をメモリアルコーナーに置きました。
〇食に強い関心をお持ちでしたので、好物の「目黒にあるお店の揚げ饅頭」をご用意しました。
葬儀を終えての感想はいかがですか?
記憶に残る葬儀で200枚近くも写真を撮り、今、それらを見るとき、私たちは明るい気持ちで母を思い出すことができます。

もし、義母が天国から葬儀を見ていたとしたら、どんな一言を言われるのか、ちょっとドキドキしますが、本人が納得してくれる葬儀にできたんじゃないかなという自信はあります。こんなことを申し上げると不謹慎かもしれませんが、当日、4つぐらいの葬儀が行われていたのですが、横を通り過ぎながら、やっぱり花葬儀さんにしてよかったと実感しました。
いちばん感動したのは、よく、葬儀会場で控え室に人が集まっている風景が見られますが、それがなかったことです。普通なら、祭壇があってお坊さんがいて、参列者がそこを通り過ぎて終わりでしょう。しかし、義母の葬儀では、参列してくださった方々が、庭をイメージした花祭壇を見たり、手品のメモリアルコーナーの品物を見たり、飾ってある洋服を見たりしながら、グルグルと会場を歩き回っていました。しかも、皆さんが、さまざまなものを見つつ義母について会話をしてくれているのです。なんとも表現できないあたたかな雰囲気がただよい、義母を供養してくださる皆さんの心がひとつになっているようでした。
今、私たちの手元には、200枚近い義母の葬儀のときの写真があります。あまりにすばらしく記憶に残る葬儀だったので、気づいたら、それほど多くの写真を撮っていました。葬儀には暗いイメージがつきまといがちですが、これらの写真を見るとき、私たちは明るい気持ちで母を思い出すことができると思っています。
エピソードとお写真、映像は、ご家族様のご許可をいただいて掲載しております。