火葬式の服装マナーとは?男性・女性・子ども別に近年の傾向とあわせて解説
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- 【 葬儀・葬式のマナー 】
火葬式は比較的新しい葬儀形式であるため、参列する際の服装に関して迷っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、火葬式の服装について、ご遺族・参列者、男性・女性それぞれの立場に分けて、詳しく解説します。ご家族のみが参列する場合や、夏場・冬場の火葬式における注意点についてもご紹介しています。火葬式に参列予定の方は、ぜひ、この記事を参考にしてください。
1.火葬式とは?他の葬儀との違いや近年の傾向
そもそも火葬式とは、どのような葬儀なのかについて、近年の傾向もあわせて解説します。
火葬式(直葬)とは
火葬式は、通夜や葬儀・告別式などの儀式を省略し、火葬のみを行う葬儀形式です。故人様のお体を安置所から直接火葬場へと運び、火葬を行うことから「直葬」とも呼びます。故人様とのお別れは、火葬炉の前で簡単な形式で行うことが一般的です。
これまで日本で主に行われてきた伝統的な葬儀形式は「一般葬」ですが、近年では火葬式の他、家族葬や一日葬といった多様な葬儀形式があります。
一般葬 | ご親族やご友人だけでなく、会社関係者、ご近所の方などにも参列いただき、通夜と葬儀・告別式を執り行う |
家族葬 | ・ご家族や故人様と親しかったご友人が参列して、通夜、葬儀・告別式を行う葬儀形式 ・ご要望に応じて自由な形式で行いやすい |
一日葬 | 通夜を省略し、葬儀・告別式と火葬を1日で行う |
火葬式は時間や労力、費用を節約できるメリットがあり、シンプルな葬儀を望む故人様やご家族に選ばれるケースが多いようです。
火葬式の近年の傾向
株式会社鎌倉新書が喪主(または喪主に準ずる立場)を経験された日本全国の40歳以上の方に行った調査があります。それによると、直葬・火葬式の割合は2020年には4.9%でしたが、コロナ禍を経て、2024年発表では9.6%という結果でした。ここ数年で火葬式を選ぶ方が急増しているのがわかります。
出典:第6回お葬式に関する全国調査(2024年)
URL:https://www.e-sogi.com/guide/55135/
火葬式が増えている理由としては、下記のようなことが背景にあるようです。
・高齢化が進む中で、交友関係が狭まっている
・核家族化が進んで、ご親戚とのつながりが希薄な家庭が増えた
・近所づきあいが減少している
・感染症対策のため など
火葬式を選択する方が増えるにつれて、参列者の顔ぶれも変わりつつあります。かつてはご家族やご親戚だけが参列されるケースがほとんどでしたが、最近ではご友人やお知り合いが火葬式に参列するケースも増えています。
2.押さえておきたい喪服の格式、それぞれの服装の違い
火葬式における服装のマナーを理解する際には、喪服の「格式」について押さえておくことが大切です。ここからは、葬儀などで着る喪服の格式について、ご紹介します。
喪服の3つの格式
喪服の格式は、大きく分けて3つあります。もっとも格式の高いのが「正喪服」、次に「準喪服」「略喪服」と続きます。
それぞれが着用される場面は、主に以下のとおりです。
正喪服 | 主に喪主様や喪主様の妻、故人様に近しいご親族(三親等以内)が、葬儀や一周忌までの法要で着用する。 |
準喪服 | ・ご親族や一般の参列者が、葬儀、法事など幅広い弔事で着用する。 ・近年は喪主様が着ることも多い。 |
略喪服(平服) | ・三回忌以降の法事で着用されることが多い、もっともカジュアルな喪服。 ・急な訃報に接し準備が間に合わない場合、通夜に着ていくこともある。 |
次項から男性・女性別に、それぞれの格式ごとの服装をご紹介します。
男性の喪服の格式による違い
男性の格式ごとの服装の違いを以下にまとめました。
正喪服 | 和装:紋付羽織袴 洋装:黒のモーニングコート |
準喪服 | 漆黒色で光沢のない生地を使ったブラックスーツが基本。 |
略喪服(平服) | 黒やグレー、濃紺などの地味な色で無地のダークスーツ。 |
洋装の正喪服や準喪服は通常のスーツとは異なり、光沢の無い黒の布地が用いられている特徴があります。
女性の喪服の格式による違い
女性の格式ごとの服装の違いは、以下のとおりです。
正喪服 | 和装:黒無地の五つ紋付きの着物 洋装:光沢のない黒無地のスーツ、アンサンブルスーツ |
準喪服 | 黒のスーツやワンピース、アンサンブルスーツ。 |
略喪服 | 黒や濃紺、ダークグレーなどのスーツやワンピース、パンツスーツ。 |
弔事においては、服装のマナーとして、なるべく素肌を露出しないことが求められます。スカートの場合は黒色のストッキングを着用し、スカート丈は膝下までの長さが望ましいとされています。
3.火葬式の服装は「喪服」
火葬式はシンプルな葬儀ですが、故人様と最後のお別れとなる厳粛な場であることは、他の葬儀形式と同じです。そのため、服装も他の葬儀形式と同様に、喪服がよいとされます。
ここからは、火葬式ではどの格式の喪服にしたらよいのか、最近の傾向も交えて解説します。
火葬式で多い服装は準喪服
火葬式での服装は、準喪服が選ばれる傾向にあります。
本来、葬儀では、喪主様やその配偶者は、もっとも格式の高い正喪服を着用することが一般的でした。そのため、中には火葬式で正喪服を着る方もいらっしゃいます。しかし多くの火葬式では、喪主様やご遺族、参列者ともに、火葬式では準喪服を選ぶことが多くなっています。
家族のみの火葬式の場合は?
ご家族だけで火葬式を行う場合には、無理に格式張らず、略喪服でも構いません。しかし、ご家族の間で服装に関する意見が異なる場合は、話し合ってあらかじめ服装を決めておくと、参列者間で服装が違うことを心配する必要がなくなるため、おすすめです。
なお一般葬や家族葬では、ご遺族は正喪服や準喪服、参列者は通常、準喪服を着用します。
4.火葬式の服装
ここからは、ご遺族や参列者、子どもの場合などに分け、火葬式の服装について詳しく解説します。
火葬式におけるご遺族の服装
火葬式におけるご遺族の服装を、男性と女性の場合に分けてご説明します。
男性の場合
前述のとおり、火葬式では、ご遺族は準喪服を着ることが多くなっています。準喪服の場合は、光沢のない黒色の生地で仕立てられたブラックスーツを着用します。
ワイシャツは白無地のものを選び、ネクタイは黒無地で光沢のないものを選びます。靴下も忘れずに黒色にしましょう。
正喪服にする場合は、洋装の場合はモーニングコートを着用し、黒色のベスト、ストライプ柄のズボン、白色の無地シャツ、黒無地のネクタイを着用します。
女性の場合
女性の場合も、火葬式では準喪服を着るのが一般的です。服装は黒無地のスーツやアンサンブルなどで、トップスは長袖または七分袖、スカート丈は膝下が基本です。ストッキングは黒無地を選び、柄物は避けます。
正喪服を選ぶ場合は、和装であれば黒無地の五つ紋付き、洋装であれば黒無地のアフタヌーンドレスなどを着用します。
別の記事でも正喪服について詳しく解説しておりますので、こちらもあわせてご覧ください。
火葬式における参列者の服装
葬儀の案内状に特に服装について案内がない限りは、準喪服で参列することをおすすめします。迷った場合は、事前に問い合わせてもよいでしょう。
次項より、火葬式における参列者の服装を、男性と女性それぞれについて解説します。
男性の場合
火葬式では、参列者は準喪服にあたるブラックスーツを着用するのが一般的です。参列者が正喪服を着用することはありません。正喪服は喪主様やご遺族の方が着られる最も格式高い装いとされるためです。
略喪服を着る場合は、黒色や濃紺、ダークグレーなどの落ち着いた色合いのビジネススーツを着用します。シャツは白を選び、ネクタイやベルト、靴と靴下も黒とします。派手な柄が入っていたり、光沢が目立っていたりするものは避けましょう。
女性の場合
女性の場合も、準喪服を着用するケースがほとんどです。服装としては、光沢のない黒無地のワンピースやアンサンブル、スーツ、パンツスーツなどが該当します。
略喪服の場合、必ずしも服は黒である必要はなく、紺やダークグレーなどの地味な色のワンピースやスーツを着用します。ブラウスは白や暗めの色とし、ストッキングは黒としましょう。最近では、パンツスーツを着る方も多くなっています。
火葬式における子どもの服装
学校に制服がある場合は、ご遺族、参列者いずれの立場の場合も、制服を着用します。制服は「学生の正式な礼装」と位置づけられているため、葬儀にふさわしい服装とされます。就学前の子どもや制服がない場合は、黒や紺、グレーなどのモノトーンでまとめるようにしましょう。
葬儀における子どもの服装に関して詳しく知りたい方は、「お通夜・ご葬儀のお子様の靴や服装」をご覧ください。
「平服」を指定された場合の服装
弔事における平服とは、正式な喪服ほど格式を重んじない、やや自由度の高い服装を意味するもので、「普段着」を指すわけではありません。平服を指定された場合でも、あまりにもカジュアルすぎる出で立ちは避けるべきです。
男性の場合、黒や紺、グレーなどのダークスーツが一般的です。喪服と異なり、無地である必要はありませんが、派手な柄や色は避けましょう。ネクタイは、地味な濃い色であれば黒でなくてもかまいません。
女性の場合、黒や紺、グレーなどのダークカラーのワンピース、スーツ、アンサンブルが適しています。ストッキングも黒色を選びましょう。
5.夏場・冬場における火葬式の服装
ここからは、夏場や冬場など、気温調節が必要な季節における火葬式の服装について解説します。喪服の場合と平服の場合、両方に共通するマナーをご説明していますので、参考になさってください。
夏場に注意すること
夏場の暑い季節に火葬式に参列する際の服装の注意点は、以下のとおりです。
男性:ワイシャツは基本的に長袖
男性のワイシャツは、準喪服・平服の場合ともに長袖が基本とされています。暑い時期には半袖のワイシャツを選びたくなりますが、葬儀においては半袖のワイシャツはカジュアルすぎると取られることがあります。ジャケットも、式の最中は脱がないようにしましょう。
女性:肌の露出に注意
女性は、暑い夏場であっても、肌が露出しないよう注意が必要です。半袖のワンピースを着用することは許容されますが、肘が隠れる程度の袖丈とします。半袖またはノースリーブのトップスの場合は、ジャケットなどの上着を重ねて着るようにしましょう。
カジュアルにならないよう薄すぎる素材は避け、シンプルで落ち着いたデザインを心がけます。
夏の喪服の選び方について、男女別に解説した記事もございますので、そちらもあわせてご覧ください。
冬場に注意すること
冬場の火葬式においては、寒さ対策として着るコートなどにも気を遣う必要があります。カジュアルな印象を避けるため、以下のようなアウターは基本的に避けるようにしましょう。
・ナイロン素材のもの・・・・・・・・・着ているとき、たたむときなどに音が出てしまう
・ファーの付いたもの・・・カジュアルな印象がある。
・毛皮素材のもの・・・・・・毛皮が殺生を連想させるため、葬儀にはふさわしくないとの意見がある
シンプルで落ち着いた色合いのウールコーなど、厳粛な場にふさわしい服装を心がけましょう。
6.火葬式における服装以外の身だしなみマナー
火葬式における服装以外の身だしなみのマナーは、通常の葬儀と変わりありません。特に気をつけるポイントについて、次項より解説いたします。
メイク:「薄く」「フォーマル」が基本
葬儀に参列する際のメイクは、「薄く」「フォーマル」が基本です。
アイライナーやマスカラなどのアイメイクは最小限にして、自然な目元にしましょう。チークなども同様に控えめにし、必要な場合は肌色に近い色を薄く塗る程度にします。
髪型:「黒色」「清潔感」を意識
髪色は男女ともに自然な黒色が好ましく、派手な色は避けます。
男性は、清潔感のある短髪が基本です。前髪が顔にかかる場合は、ワックスで整えてください。
女性は、髪が長い場合は低い位置でまとめます。髪の毛が顔にかからないようにし、整った印象を心がけましょう。
アクセサリー:例外を除きつけない
アクセサリー類は、つけないのが基本です。どうしてもつけたい場合は、「真珠(白色・黒色)」のネックレスを選びます。中粒の真珠を用いた一連のものとし、長さは鎖骨あたりまでの標準的なものにしましょう。
靴・バッグ:黒色が基本
葬儀にふさわしい靴の色は、男女共に黒色が基本です。靴は光沢や装飾のないものが望ましいとされます。女性はヒールの高いものは避け、黒のパンプスがふさわしいでしょう。
バッグも靴と同様に黒色とします。ツヤがなく、ロゴや装飾が少ないシンプルなデザインのものが適しています。
7.火葬式における持ち物
火葬式に参列する際の持ち物は、通常の葬儀と同様です。基本的な持ち物は、以下のとおりです。
・数珠
・ハンカチ
・お香典
・袱紗(ふくさ)
数珠は、自分の宗派のものでかまいませんので、手元にあれば持っていくようにします。ハンカチは、白や黒の無地のものを持参しましょう。
お香典は香典袋に入れ、袱紗で包みます。袱紗は文房具店や大型のドラッグストア、100円ショップなどで購入することができますが、買いに行くことが難しい場合は、ハンカチで代用することも可能です。
8.火葬式の服装に関するQ&A
火葬式は故人様への最後の敬意を表す場であるため、過度にカジュアルな服装は避けた方が良いとされます。
喪服は、元々はご遺族が「喪に服す」ための衣服であり、喪服を着ることで故人様をしのび、感謝を表せると考えられてきました。喪服が準備できない場合にも、火葬式の場に限っては、比較的フォーマルな服装にされると、故人様への敬意を表せるのではないでしょうか。
火葬式の規模や場所、参加者の人数や顔ぶれによっても、ふさわしい形は変わります。最も重要なのは、故人様への敬意を忘れないことですので、どちらの服装を選ぶにしても心を込めて準備を行い、故人様をしのぶ気持ちを大切にしましょう。
故人様が着られる服装は、火葬式の場合も、一般葬などの他の葬儀形式と傾向は大きく変わりません。
宗教ごとの伝統的なものとしては、仏式であれば白装束、神式であれば神衣などです。最近では、生前好んでいた服をそのまま着られる方も増えています。スーツなどを着られる方も多くいらっしゃいます。
服装について疑問がありましたら、どうぞお気軽に花葬儀までご相談ください。
9.火葬式でも故人様に失礼のない服装を心がけましょう
火葬式は、宗教的な儀式を省略した葬儀ではありますが、故人様やご遺族への敬意を表すためにも、失礼のない服装を心がけることが大切です。
火葬式を執り行う際には、ぜひ服装やその在り方について話し合い、故人様の供養へとつながるような形を検討されてはいかがでしょうか。
もし火葬式の服装やマナーに迷われた場合は、花葬儀までご相談ください。花葬儀では複数の火葬式のプランを用意しており、デザイナーによるオリジナルの花祭壇をご用意するプランや、読経・戒名の手配も行っております。詳しい内容については、「花祭壇を組み込める花葬儀の火葬式」をご覧ください。故人様への想いを大切にしながら、心温まる火葬式をお手伝いいたします。