花葬儀を選んだ理由
母のお葬式のときに持った葬儀社への不信感が、きれいに払拭されました。
本当のことを言えば、私は葬儀社さんに対してネガティブな思いを抱いていました。
25年ほど前に母が亡くなったときに仏式でお葬式を行ったのですが、父と葬儀社の担当の方とのやり取りが、「形だけの式の取り決め」のように感じられたからです。父は深い悲しみの中にいたので自分の意見を口にすることもできず…。葬儀社さんの主導でマニュアルに沿って話が進められ、お葬式の内容が決められていきました。ただただカタログを見て、「どうしますか?こっちにしますか?」というように事務的な感じで…。その他にも細かいことですが、私は一人っ子なのに、飾られた花輪には「子供一同」と書かれていたことに強い違和感を覚えたことも忘れられません。
ですから、主人が休暇を取って帰省中に急逝した際、母のお葬式をした浦和斎場で式をすることはすぐに決められたのですが、同じ葬儀社には依頼しませんでした。お葬式というのは淡々と決めていくものなのだと思う一方で、そういう見送り方はしたくないと思ったからです。
そこで、無宗教ならば少しは心のこもったお葬式ができるのではないかと思い立ち、斎場の方に相談したところ、紹介されたのが花葬儀さんでした。すぐにプランナーさんがやってきて、それはもう驚きました。とにかく、よく話を聞いてくれたんです。葬儀社への不信感を伝えても「大丈夫です。そんなことには致しませんので安心してください」と…。言葉ではうまく表現できませんが、声のトーンにまで心配りがあることがわかり、「ここしかない」と即断しました。
花葬儀を体験して良かったこと
いくつもいくつもの対話を重ね、主人らしい表現を一緒に考えてもらえました。
何かをしてやれる最後のチャンスなのだから、形式的な式ではなく主人らしいお葬式をプレゼントしたい…。
でも、この思いをどうすれば実現できるのかがわかりませんでした。そんな私たち家族を上手にリードしてくださったのが、花葬儀のプランナーさんです。想像以上のお葬式が実現したのは、プランナーさんが私たちに要望を尋ね、1つ1つそれに応えてくださったおかげだと思っています。
たとえば、「主人は、シンプルなデザインとグリーンが好きだったので、花の色は緑と白、赤だけにしたい」と伝えると「グリーンを多く取り入れ、バラやダリアを使ってご主人様の愛情深さや力強さを表現しましょう。バラはご主人様の故郷に咲く品種を取り寄せて使ったらどうでしょうか」と提案してくださいました。
また「写真をフォトフレームに入れて飾りたい」という相談には「グリーンがお好きだったので、大きな木をご用意します。そこにお写真を吊るせば、ご主人様に、自然の中にいるような気持ちでお過ごしいただけるでしょう」と心のこもった演出をしてくださったのです。
その他にも「しめっぽくならないように、パーティー会場のような雰囲気で」と伝えると「入り口や受付に大きなスタンドフラワーを置きましょう」と…。こうした対話をいくつもいくつも重ねていき、家族の念願がかなえられたのです。
良かったと感じたのは、理想のお葬式をつくり上げてくれたことだけではありません。式の前日、遠方から上京した主人の兄弟や親戚が式場に来るときに迷ってしまい、予定の時間よりも遅くなってしまったんです。でも、プランナーさんがいち早く斎場に掛け合ってくれたおかげで会場の使用時間が延長され、ゆっくりと最期のお別れのひとときを過ごすことができました。皆、主人との久々の再会だったこともあり、とてもありがたかったですね。その兄弟たちにも「すばらしい式だったよ」と褒めてもらえました。
ご主人様はどんな方でしたか?
趣味はウォーキング。自然の風を感じて歩くことが好きでした。
ウォーキングが趣味で、木々が豊かな家の近くの土手を何時間もかけて歩いていました。出かけてしばらくしてから上野動物園の看板の写メが送られてきたときには、本当に驚いてしまって…。浦和から歩いて行ったなんて信じられませんでした。
こんな風に自然の風を感じて帰宅すると上機嫌で、いつもスマホの万歩計のアプリを見せて「今日は、何キロ歩いた」と自慢げに話していた顔をよく覚えています。
花よりもグリーンの多い祭壇にしてもらったので、最後に自然を感じながら気持ち良くウォーキングしてくれたと思います。
ウソ偽りが大嫌いな、正義感の強い人。
間違っていることや、ウソ偽りが大嫌いな正義感の強い人でした。悪いことは、悪いとはっきり言える勇気を持っていましたね。
そう指摘するのは、悪いことをしている相手のためにもなると――。
もちろん、自分自身も厳しく律していました。
以前、私は面倒を恐れて、理不尽な出来事を目の前にしても誤魔化していましたが、いつの間にか感化され、正しいと思ったことはハッキリと口にできるようになっていました。
主人には、多くの学びをもらい、感謝しています。
我が身より家族を大切にした、偉大な父親。
「もし、家が火事になって家族が家の中に残されていたら、自分が飛び込んでいって助ける」。いつも、口癖のように話していました。
愛情の深さから、子どもたちのしつけは厳しく、たとえば、「ただいま」の言葉をしっかり言えないと何度も言い直させて…。
お説教も長く、軽く1時間程度は叱りつづけていましたね。
2人の子どもたちは、小さいころは反発した時期もありました。でも、現在は結婚して子どもも生まれ、同じ親の立場に立ったからでしょう、今では「厳しく育ててくれたことに感謝している」と言っています。お葬式では、子どもたちが率先して主人の写真を集め、スライドショーを作ってくれて…。主人の思いは、確かに子どもたちに伝わっていました。
こんなご葬儀でした
お式への要望
自然の中を歩くのが好きだった主人らしい花祭壇を。
〇木々のある自然の中でのウォーキングが好きだったので、花よりも木を多く使ってほしい。
〇ゴチャゴチャせず、緑、白、赤の3色のみを使った、シンプルでいてインパクトのある花祭壇。
お葬式ではなく、パーティー会場のような演出に。
実際のご葬儀
〇ご主人の故郷に咲く珍しい品種のバラを取り寄せて、花祭壇に使いました。
〇奥様から「アーチを飾りたい」とのご相談があったので、花ではなくグリーンをまとわせたアーチを配置しました。
〇アシンメトリー(左右非対称)に花木を置き、花の種類も厳選してデザイン性の高い空間をつくりました。
〇フォトツリーを用意して、ご家族に思い出の写真を飾っていただきました。
〇参列者の皆さまにご主人へのメッセージを書いていただき、棺の中にお入れしました。
葬儀を終えての感想はいかがですか?
お葬式も結婚式のように自由につくることができる。皆さんにも知ってもらいたい。
お葬式は形が決まっている自由度のないもの。ほとんどの方が、なかば諦めてこのように思っているのではないでしょうか。
私は母の葬儀でそのように感じたので…。主人の葬儀を行った斎場ではいくつかの葬儀が同時に行われていましたが、実際、我が家以外は、どちらも同じような祭壇でした。色は白と黄色が主で、花も菊が大部分を占めるありきたりのデザインばかり。
主人の祭壇が華やかで個性的だったせいか、他家の葬儀の参列者が見に来ていました。
幸運にも、私は主人の葬儀をするにあたって花葬儀さんと出合い、宗教に関係なく自由に花祭壇をつくっていいのだと知りましたが、一般的にはまだ、お葬式の固定観念から思い通りのお葬式ができない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回、私が理想の式で主人を見送れたように、できるだけ多くの方に自分たちの思いが込められたお葬式を、自分たちの手でつくってほしいと思います。お葬式は葬儀社に任せるものではなく、「葬儀社と一緒につくっていけるもの」ということが常識になることを願いたいですね。
エピソードとお写真、映像は、ご家族様のご許可をいただいて掲載しております。