花葬儀を選んだ理由
資料がすぐに届き、そこに入っていた折り鶴を見て「決まりだね」と即断しました。
年末に不調を訴えた夫が緊急入院となり、がんが判明して医師から余命宣告を受けました。慌てて葬儀社探しを始める中で、以前、私がパートで働いていたときに親しくしていた方から、息子さんが葬儀社に転職した話を聞いたことを思い出したのです。早速、その友人に電話をして花葬儀さんのことを教えてもらったのですが、友人は「他の葬儀社もいろいろ調べて決めた方がいいんじゃない?」とアドバイスしてくれました。
そこで、花葬儀さんとその他1社に、私と息子の自宅に資料を送ってくれるよう頼んだのですが、すぐに届いたのは花葬儀さんの資料でした。まず、翌日に届くというスピーディーな対応に感心しましたが、中を開くと折り鶴が入っていて…。それにはもっと驚きましたし、その心配りに感動してしまいました。
息子に電話をすると、ちょうど資料を確認していたようで、すぐに「もう、決まりだね」という一言が返ってきました。息子も、花葬儀さんの資料を開いたときに見た折り鶴のインパクトが大きくて、中身を見る前に気持ちが固まったようでした。その決断が揺らぐことはなかったですね。
花葬儀を体験して良かったこと
主人らしい祭壇ができあがるまでの、感動的なストーリーを経験できました。
通夜と葬儀・告別式を行うことは「体力的につらそう」と思っていたところ、プランナーさんから「どちらも合わせて1日でもできるんですよ」と教えていただきました。2日かけて行うものだと思い込んでいたので驚きましたが、家族と近しい人たちだけで行える一日葬をお願いしてよかったです。
また、花葬儀さんの華やかな美しい花祭壇はカタログで見てはいたのですが、実際の葬儀では菊が並んでいる祭壇しか見たことがなかったので、「本当にこんな花祭壇がつくれるのかしら?」と最初は半信半疑でピンとこない状態でした。「お花でいっぱいの祭壇で送るってどういうこと?」「告別式の会場はどんな雰囲気になるの?」と不思議な感覚があったのですが、フラワーデザイナーの方とお話をしていく中で、少しずつイメージできるようになっていきました。
打ち合わせでは、主人の好きなお花、生い立ち、趣味などについて質問されたので、「コスモスが好きだったこと」「戦争を経験したからか芯が強く子どもたちの生き方に厳しかったこと」などをお話ししました。すると、デザイナーの方は、時折り涙ぐみながら話を熱心に聞いてくださり、それらをイメージしてその場で祭壇のデッサンを描いて見せてくださったのです。
まず、驚いたのは、桜の木が描かれていたことです。その際、「強い芯があるご主人を表現するのには、やはり根を張って枝をつける木がいいでしょう。河津桜を使いたいと思います」と説明してくださいました。そして、桜の木の周りに、2月であったにもかかわらず、秋の花のコスモスが描かれていたのには驚きましたね。そのコスモスの清楚な感じに加えて、その他にも白やピンクの花や緑が描かれ、自然あふれる優しい雰囲気が伝わってきて…。愛情の深さから子どもたちのしつけに厳しい面があった主人でしたが、そのデッサンからは、多くの方々に慕われた主人の姿が見えるようでした。
その絵を見た息子は、「デッサンを見たときには、鳥肌が立った」と言っていました。私たちの想いがあまりにも忠実に絵の中に表現されていたので…。実物は、さらに素晴らしく、最初は想像もできなかった花祭壇を目の前で見たときには、私も息子も言葉で言い表せないほど感動しました。
ご主人様はどんな方でしたか?
子どもたちが社会に出たときに困らないよう、愛情を持ってしつけに厳しくしていました。
主人は戦争経験者でしたから、生きることの厳しさを身をもって知っていました。ですから、人間的には温かい人でしたが、子どもたちのしつけには厳しい人でした。「親が子どもに遠慮してどうする。言うべきことは、言わなければならない」が口癖で、子どもたちには怖い父親だったと思います。
でも、子どもたちは、一人前になって社会に出て働くようになった今、「親父の言っていたことがわかるようになった。厳しくしてもらったことが糧になっている」と言っています。主人は、「世の中の荒波にのまれずに生きていってほしい」と精一杯、子どもたちに向き合ってくれていました。
大のお酒好き。ゆっくり吞むために、来客者には「まず、お風呂にどうぞ」と勧めるほどでした。
とにかく、お酒、中でも焼酎が大好きで、自宅に友人を招いて吞むときには、「まず、お風呂に入ってきて」と勧めていました。お風呂にさえ入っておけば、あとは呑むだけ。心行くまでお酒を楽しむための秘策でしたが、よく知らない方は、驚いていましたね(笑)。それだけ、お酒が好きだったのです。
闘病生活に入ってからも、「お酒を呑ませてほしい」と病院の方にお願いしていましたが、残念ながら叶うことはありませんでした。プランナーさんにその話をしたところ、納棺の際にお酒と花びらを用意してくださって…。「お酒に浸した花びらを、皆さまでご主人様の唇にあてて差し上げてください」と促してくださったのです。粋なはからいに、主人の喜ぶ顔が見えるようでした。
几帳面で真面目な性格。必要な書類を整理しておいてくれたので、困ることもありませんでした。
とても几帳面で真面目な主人は、常日頃から私を助けてくれて、毎日、お米を炊き、朝にはお味噌汁を作ってくれていました。掃除もマメに手伝ってくれましたね。
自分に何かあったとき、私が困らないよう、さまざまな書類の整理もしておいてくれたので、今回、主人が亡くなったときに、私が困るようなことは一切ありませんでした。
また、80歳を過ぎた頃から「歳も歳だから自分はいつどうなるかわからない。平均寿命よりもたくさん生きているんだから、何があっても、悲しんだりしなくていいんだよ」というのが口癖になっていました。
最後まで、私と子どもたちのことを心配し、尽くしてくれた主人に、ただただ感謝するばかりです。だから、家族全員できちんと見送ることができて、本当に良かったと思っています。
こんなご葬儀でした
お式への要望
形だけではなく、本人や家族の想いのこもった内容で見送りたい。
〇主人のために、そして家族にとって一番いいと思えるような「想いのこもった納得できる葬儀」を相談したい。
〇主人らしさを表現した葬儀で見送りたい。
〇できるだけ体力的に負担がない葬儀形式にしたい。
〇自然に包まれるようにグリーンを多く使い、お花は優しい色を中心にしつつアクセントになる色の花もほしい。
〇息子に、葬儀で流す動画や音楽の編集をさせてほしい。
〇長女には、司会進行を務めさせたい。また、高齢者のお世話について勉強中の次女には、死化粧の様子を横で見させてほしい。
実際のご葬儀
〇芯の強いご主人様の象徴として桜の木を大きく飾り、自然を表現するためにグリーンのほかに、ダリア、バラ、トルコ桔梗、スイートピー、ストック、コスモス、コデマリなどの花も配置しました。
〇お風呂が大好きなご主人様のために、ご家族に手元湯かんをしていただき、ふろ上がりの一杯(焼酎)と好物だったお寿司をご用意しました。
〇桜の木を事前に温かい部屋で保管をしながら、葬儀当日に満開となるようにしました。
〇幼少期に鳥取県に疎開をし、川の温泉に浸かってから登校していたお話をうかがって、メモリアルコーナーに三朝温泉のミストをご用意しました。
葬儀を終えての感想はいかがですか?
葬儀というより、88歳までがんばって生きてくれた主人のお披露目式のようでした。もっと多くの人に見てほしかったと思います。
今回の葬儀を行うにあたって、いろいろなことを花葬儀さんにご相談しましたが、「できません」と言われたことは一つもありませんでした。
息子が葬儀で流す動画や音楽を編集してつくりたいと申し出たときも、司会進行を長女にやらせたいとお願いしたときも、しっかりバックアップしますとおっしゃってくださいました。また、次女は手のマッサージや爪のケアの勉強をしていたので、死化粧の様子を見せてほしいと図々しいお願いをしたのですが、嫌な顔もせずに段取りをつけてくれました。普通では、ありえないことが、主人の葬儀には、たくさん詰め込まれていたので、本当に感謝しています。
今、正直に言うと、主人の葬儀をもっといっぱい、いろいろな人に見てほしかったなと思っています。葬儀会場に入ったときに、「本当に桜の木がある!?」と、しばらくは目を見張るばかりで言葉が出ないほど素敵な花祭壇だったので…。
全体的にも、いわゆる葬儀というよりは、88年間、家族を支えてくれた主人を皆さんにお披露目する式といってもよい内容でしたから、親族、友人などに、「私の主人は、こんなふうに素敵に送っていただけたのよ」と自慢したかったですね。今も、経験した感動を、より多くの方に感じてほしいと思っているところです。
エピソードとお写真、映像は、ご家族様のご許可をいただいて掲載しております。