「えっ、うなぎの白焼きなんて、出るんだ…」
会葬者の方々から、そんな言葉が何度も聞こえてきました。
故人様の大好物。
それはわかるが、仕出しのものが用意されるのが一般的である葬儀のお食事で出てくるとは…。
そのような驚きが、冒頭の言葉となって表れたのだと思います。
ちなみに、そのうなぎの白焼きは、故人様の行きつけだったうなぎ屋さんにご用意いただいたものでした。
そして…。
ここから、私たちも想定していなかった感動のシーンが生まれました。
「シャンパンと白焼き、あいつのところに持って行きたいんだけど、いい?」
故人様のご友人たちが、私たちにそう尋ねて来られたのです。
私たちは、皆さんが何をなさりたいか、すぐに理解できました。
「はい、どうぞ」
そうご返事すると、ご友人たちは「ありがとう」とおっしゃってくださり、すぐに棺に向かいました。
そして、棺の手前に置かれた台の前に一列に並び、白焼きの乗ったお皿とコップを置き、そのコップにシャンパンを注ぎます。
「乾杯」
それからは、皆さんで故人様との思い出話に花を咲かせていました。
まるで、まだ生きていて、 一緒にうなぎ屋さんで楽しんでいるかのように…。
その風景を、私たちは今でも忘れることができません。
なぜなら、ご遺族だけでなく、会葬者の方々にも「こんなことがしたかった」という想い があるのだと気付かされたからです。
この時、ご友人の方々は、故人様の近くにいたかったのです。
その想いを、故人様の大好物をご用意させていただいたことがきっかけで叶えていただけ た。これには私たちも、心から感動いたしました。
そして、同時に「葬儀を行なう本当の意味はここにある」という想いを新たにいたしまし た。
「本当はこんなことがしたい…」
そんな想いが、今までどれほど、「決まった形式でやるしかない」という固定観念の前に、 叶えられずにきたことでしょうか。
「想いを叶える、本当の意味での葬儀」をこれからもご一緒に作り上げていく。
そんな決意を新たにした葬儀でした。